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「剣客商売」の活躍を彩る“江戸”の美しさ。

池波正太郎が残したかった「風景」

池波正太郎/著 、重金敦之/著 、土屋郁子/著 、近藤文夫/著 、ほか

1,430円(税込)

本の仕様

発売日:2002/04/25

読み仮名 イケナミショウタロウガノコシタカッタフウケイ
シリーズ名 とんぼの本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 143ページ
ISBN 978-4-10-602088-9
C-CODE 0391
ジャンル 文学賞受賞作家、ノンフィクション
定価 1,430円

人物の動きを常に映像に置きかえて書きすすめられていた池波作品。読めば、江戸=東京の美しさがヴィジュアルによみがえってくる。「剣客親子」が大活躍した場所の現在は? 十三回忌をむかえるにあたり今一度、作家が愛したさまざまな「情景」をふりかえろう!

著者プロフィール

池波正太郎 イケナミ・ショウタロウ

(1923-1990)東京・浅草生れ。下谷・西町小学校を卒業後、茅場町の株式仲買店に勤める。戦後、東京都の職員となり、下谷区役所等に勤務。長谷川伸の門下に入り、新国劇の脚本・演出を担当。1960(昭和35)年、「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の3大シリーズをはじめとする膨大な作品群が絶大な人気を博しているなか、急性白血病で永眠。

重金敦之 シゲカネ・アツユキ

1939年、東京生れ。慶応大学卒業。朝日新聞編集委員、常磐大学人間科学部教授(ジャーナリズム論)を経て、文芸ジャーナリスト。「週刊朝日」在籍中に池波正太郎の『食卓の情景』、『真田太平記』(共に新潮文庫)を担当、著書に『池波正太郎劇場』(新潮新書)、『小説仕事人・池波正太郎』(朝日新聞出版)がある。「食」の世界にも精通し、『食の名文家たち』(文藝春秋)、『すし屋の常識・非常識』(朝日新書)など多数。

近藤文夫 コンドウ・フミオ

1947(昭和22)年、東京生れ。1966年、山の上ホテル入社、1971年、「てんぷらと和食 山の上」の料理長となる。1991(平成3)年独立し、銀座に「てんぷら近藤」を開店、現在にいたる。

書評

波 2002年5月号より 池波正太郎さんの世界  池波正太郎ほか『池波正太郎が残したかった「風景」』

川野黎子

早いもので、この五月は池波正太郎さんの十三回忌にあたる。
昨年三月には、全30巻別巻1の完本池波正太郎大成(講談社刊)が完結。九月には、生まれ故郷であり、生涯愛してやまなかった浅草の地に、池波正太郎記念文庫がオープンした。粋でシャイな江戸っ子の池波さんらしい、小ぢんまりした、あったかい文学館で、開館以来、訪れる人たちを楽しませている。
十三回忌を前に「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の三大ヒーロー小説、直木賞受賞作以来の集大成「真田太平記」をはじめ「青春忘れもの」「食卓の情景」以下の名エッセイで、未だに多くのファンに親しまれている池波さんの世界を、コンパクトにヴィジュアルにまとめた『池波正太郎が残したかった「風景」』-とんぼの本-が出来上った。
週刊朝日で永年池波さんの担当編集者であった重金敦之氏の池波作品の魅力に迫る“「剣客商売」を歩く”を中心に、記念文庫開設に努力された鶴松房治氏の“池波正太郎記念文庫”、上田市に平成十年に開館した池波正太郎真田太平記館の前館長・土屋郁子氏の、作品紹介と文学散歩の“「真田太平記」を行く”、名コンビだった画家・中一弥氏の“「剣客商売」挿絵撰”、池波さんごひいきの料理人で、池波さんの食再現の第一人者である近藤文夫氏の“「剣客商売」お弁当尽し”、そして池波さんのエッセイの抜粋“私の好きな「風景」”“私の愛した「もの」”と、池波ファンにとっても、池波さんをあまり知らない人にとっても、見逃せない内容である。
池波さんの作品が男女を問わず、人々に好んで読まれるのは、歯ぎれのよい文章と共に、人情あり、旨いものあり、映画的情景ありのエンターテインメントとしての充分の面白さにあるのだが、従来の勧善懲悪の規範をぬけきれなかった時代小説の世界に、新しい風を吹き込んだことにもある。
人の生涯は黒白だけではない。中間の色合いというものがある。それが融通(なれあいとは違う)というもので、理論や理屈だけでは解決できない。
人間というものは、善いことを行いつつ知らぬうちに悪事をやってのける。また、悪事を働きつつ善いことを楽しむ。この人間の矛盾している面白さ。
このことが池波さんの確たる人生観のもとに書かれているのが、池波文学を一段と奥の深いものにして読者の共感を呼ぶのだ。
この池波ワールドの魅力と、水の都である江戸の美しさと現在の姿が「剣客商売」の作品に添って、重金氏の懇切丁寧な案内によって語られている。
加えて、現代の名所図会ともいうべき中一弥氏の端然としたたたずまいの「剣客商売」のカット。隅田川、神社仏閣、盛り場、旨いもの屋などの今昔の豊富な写真。ダンディーだった池波さんの遺品類と、自身描いた猫たちの絵。秋山家の花見弁当はじめ色とりどりのお弁当などが、頁をめくるごとに目を楽しませ、池波さんがすぐそばに息づいているような親しみにあふれた一冊となっている。
池波さんは、戦後、荏原の三十坪の土地に家を建て、後年、書庫の必要からコンクリートの三階建てに建てかえたが、最期までそこに住み暮した。応接間の外は前の道で、子供たちの遊ぶ声も近所の人の立話も耳に入る。浅草の昔の家そのままであり、隣家との境は申し訳程度の低い垣根で、家族は庭づたいに行ったりきたりしていた。
池波さんは書いている。
母は貧しい暮しをしていたが、年の暮れともなれば、いかに苦しい工面をしても畳を入れ替え、障子を貼り替え、新しい年を迎えた。浅草の町の人びとは、みな、そうであった――と。
一日は先ず、納豆売りの少年の声に始まる。季節によって、さまざまな物売りの声などが朝から日暮れまで絶えなかった。
夏は祭りのそろいの浴衣から始まる。両国の花火は我が家の屋根からも見えた。四季のない町は日本の町ではない、とまで断言している。情緒をうしなった町は〔廃墟〕にすぎない、とも。
貧しくとも律義に、家族心を合わせて働く――高度成長と共にうしなわれた日本の町と家族制度、池波さんは小説の中にそれらを再現していたのだ。池波さんの残したかった風景はそういったものではないだろうか。

(かわの・れいこ 「小説新潮」元編集長)

▼より美しく、より楽しく――進化した「とんぼの本」、『池波正太郎が残したかった「風景」』池波正太郎ほか、『たけしの大英博物館見聞録』ビートたけし、『こころを癒す自然の宿』シンラ編集部編、三冊同時刊行中!

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