異能の画家 伊藤若冲
1,540円(税込)
発売日:2008/01/24
- 書籍
江戸中期の京都を舞台に奇々妙々の絵筆をふるった奇才の人生と作品。
商才はなくとも画才はあった! 青物商から絵の道へ転じて大ブレイク、流行や時の権力におもねることなく、ありとあらゆる技法を駆使して描きに描いた。この稀有なる画家の幸福な生涯と類なき作品群を徹底紹介。《動植綵絵》全30幅から、枡目描きの屏風、水墨画やモダンな版画まで、代表作をすべて見せます!
青物問屋の若旦那、
転じて画家となる
これぞ旦那芸の極致
畢生の大作《動植綵絵》
[其の一]
枡目描き――18世紀のデジタル花鳥画
[其の二]
筋目描き――正統派の禁じ手を見事に活用!
[其の三]
石摺ふう――拓本で閃いた!? 独自の質感表現
[其の四]
木版画――浮世絵も目じゃない! 奇跡の出来映え
火事も病気も乗りこえて
斗米庵若冲翁の矍鑠たる晩年
無限の宇宙
【解説】森村泰昌
【文】兒玉晴子
伊藤若冲略年譜
書誌情報
読み仮名 | イノウノガカイトウジャクチュウ |
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シリーズ名 | とんぼの本 |
発行形態 | 書籍 |
判型 | A5判 |
頁数 | 128ページ |
ISBN | 978-4-10-602166-4 |
C-CODE | 0371 |
ジャンル | 芸術一般、画家・写真家・建築家 |
定価 | 1,540円 |
若冲デザインの五百羅漢像
担当編集者のひとこと
2007年5月、間違いなく日本の美術史に残るビッグ・イヴェントがありました。京都・相国寺承天閣美術館にて、江戸中期の京都で活躍した画家・伊藤若冲の《釈迦三尊像》と《動植綵絵》全30幅が、120年ぶりに一堂に会したのです。周知のとおり、《動植綵絵》はもともと若冲が相国寺に寄進した作品でしたが、現在では宮内庁の蔵品となっています。この、またとない展示をわが目で確かめんと、全国、いえ世界各国から若冲ファンが押し寄せて、京都の町はひときわの熱気に包まれたのでした。私自身も会場を訪れる幸運に恵まれ、喧騒のなかでの鑑賞とはいえ、生きているうちには再び望めぬであろう眼福に酔いしれました。 本書では、その貴重な展観も含めて、伊藤若冲の代表作とその人生をわかりやすく、なおかつ詳細に描いています。若冲を敬愛する人にも、そしてこれから知る人にも自信を持ってお勧めできる1冊です。
それにしても、この本に携わって、つくづく、若冲という人のすごさに感心しました。《動植綵絵》に代表される絢爛たる画から、渋い障壁画、墨絵や版画、はては五百羅漢像のデザインまでを手がけてしまう多才さ。独学なのに異常なまでに高度なテクニック。対象物を巧みにデフォルメする独自の目線。そしてそのベースにあった、好きな画業をとことん追求する精神力。もちろん、大きな商家のボンボンだったからこそ、経済的に行き詰ることも、時の権力や流行に媚びることもなく、自らのスタイルを貫くことができたわけなのですが、その貫きかたは半端じゃない。まさに、好きなことを徹底して極めれば道は拓ける!という、人生のお手本ではないでしょうか……?
現代に生きる私たちを魅了してやまない伊藤若冲の、圧倒的な「作品力」と「生き方力」のWパワーを、どうぞ本書でご堪能ください!
2008/01/24
著者プロフィール
狩野博幸
カノ・ヒロユキ
1947年福岡県生まれ、同志社大学文化情報学部教授。九州大学大学院博士課程中退。京都国立博物館を経て、現職。博物館時代には「没後二○○年 若冲展を手掛け、若冲ブームの火付け役に。専門は桃山絵画、江戸絵画。著書に『異能の画家 伊藤若冲』(新潮社、共著)、『江戸絵画の不都合な真実』(筑摩書房)など。
森村泰昌
モリムラ・ヤスマサ
美術家。1951年大阪生まれ。両親は緑茶商。京都市立芸術大学卒。高校、大学の非常勤講師を経て、1985年の『肖像(ファン・ゴッホ)』を皮切りに、写真によるセルフポートレイト作品を次々に発表。「美術史シリーズ」や「女優シリーズ」で知られる。1988年、ベネチア・ビエンナーレのアペルト部門に出品、国際的な注目を集める。京都府文化賞功労賞(2006)、芸術選奨文部科学大臣賞(2007)受賞。主な展覧会に「美に至る病/女優になった私」(横浜美術館 1996)、「空装美術館/絵画になった私」(東京都現代美術館ほか 1998)、「私の中のフリーダ」(原美術館ほか 2001)、「森村泰昌―美の教室、静聴せよ―」(熊本市現代美術館、横浜美術館 2007)、「なにものかへのレクイエム」(東京都写真美術館ほか 2010)など。主な著書に『芸術家Mのできるまで』(筑摩書房)、『卓上のバルコネグロ』(青幻舎)、『「美しい」ってなんだろう?』(理論社)、『フリーダ・カーロのざわめき』(新潮社)、『手の美術史』、『全女優』(ともに二玄社)ほか多数。