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原田マハの印象派物語

原田マハ/著

2,420円(税込)

発売日:2019/06/06

  • 書籍

モネ、マネ、ドガ、ルノワール、カイユボット、セザンヌ、そしてゴッホ。愛すべき愚かものたちのセブン・ストーリーズ。

光満ちあふれ、幸福な色をたたえる名画誕生の陰には、画家たちの壮絶な闘いのドラマがあった。貧しくても、どん底に落ちても、志高く新しい道を切り拓いていったそのあしあとをたどって、アート小説の名手が紡ぐ、7つの物語。モネの愛したノルマンディーへの旅も。

目次
グラフ
印象派に出会える場所
美しき愚かものたち――物語の序にかえて 文/原田マハ
愚かものたちのセブン・ストーリーズ 文/原田マハ
Episode-1 Claude Monet モネの物語
何もなかったように モネがまだモネではなかった時代
Biographie de Claude Monet
Episode-2 Berthe Morisot et Edouard Manet ベルト・モリゾとマネの物語
このバルコニーから 女流画家の愛と闘い
Biographie d’Edouard Manet et Berthe Morisot
Episode-3 Mary Cassatt et Edgar Degas メアリー・カサットとドガの物語
永遠の一瞬 波乱の時代を超えて
Biographie d’Edgar Degas et Mary Cassatt
Episode-4 Pierre-Auguste Renoir ルノワールの物語
まぶしい季節 手と絵筆の絆
Biographie de Pierre-Auguste Renoir
Episode-5 Gustave Caillebotte カイユボットの物語
通り雨、天気雨 友へのまなざし
Biographie de Gustave Caillebotte
Episode-6 Paul Cezanne セザンヌの物語
無言のふたり 絵描きとその妻 愛すべき不美人画
Biographie de Paul Cezanne
Episode-7 Vincent van Gogh ゴッホの物語
アイリスの花束を フィンセントとテオ 絵で結ばれた兄弟
Biographie de Vincent van Gogh
ノルマンディー紀行――セーヌを下り、モネ・アトラスを旅する 文/編集部
公開対談 高橋明也×原田マハ
人生でただ一度しかない展覧会

書誌情報

読み仮名 ハラダマハノインショウハモノガタリ
シリーズ名 とんぼの本
装幀 ルーアン美術館で、クロード・モネ《ルーアン大聖堂、扉口とアルバーヌ塔、悪天候》(1894年)を鑑賞中の著者/カバー表、小野祐次/カバー表(撮影)、中村香織/ブックデザイン、新潮社装幀室/カバーデザイン、nakaban/シンボルマーク
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 B5判変型
頁数 128ページ
ISBN 978-4-10-602288-3
C-CODE 0371
定価 2,420円

インタビュー/対談/エッセイ

愛すべき愚かものたちのメッセージ

とんぼの本編集室

 今月の新刊は、いつものとんぼの本とはちょっと毛色が異なります。この本は、アート通の作家原田マハさんが印象派絵画を紹介・案内する美術書ではなく、印象派の画家たちについて原田マハさんが紡ぐ7つの物語を収載する「短編集」。『楽園のカンヴァス』に描かれたアンリ・ルソー、『暗幕のゲルニカ』のピカソのように、モネマネルノワールセザンヌゴッホ……印象派の画家たちの秘められたドラマが、マハさんのあの圧倒的な筆力によって、いきいきと綴られているのです。
 印象派といえば、モネの《睡蓮》やドガの踊り子、ルノワールの花の絵に代表されるように、光満ちあふれ、幸福な明るい色をたたえた作品がすぐに思い浮かびます。各地で催される印象派展もひじょうに人気が高い。美しい名画を見て私たちはうっとりするばかりですが、それら名画の誕生の裏には、画家たちのとてつもない闘いが繰り広げられていたのでした。いま見ることのできる印象派の作品の数々は、彼ら画家が生きた証しであり、〈世界でいちばん美しい愚かものたちが、私たちに遺してくれたメッセージ〉(本書より)とマハさんは言います。
 19世紀後半のパリの画壇は、まだまだ保守的なフランス芸術アカデミーに牛耳られていました。アカデミーの気に入る画題や古いルールにのっとって絵を描いて、アカデミーの審査を経た「官展(サロン)」に選ばれなければ、芸術家とさえ呼ばれない。そこに果敢に切り込んでいったのが、のちに「印象派」といわれる彼ら前衛的な画家たちでした。権力にくみせず、誰にも忖度せず、自分たちの好きなように描いた絵を、好きなように展示する。ただそれだけなのに、奇妙きてれつと嗤われ、怒り出され、罵詈雑言を浴びせられました。「自分の印象で描いているだけじゃないか」と批評家から嘲られたことから、「印象派」という言葉が生まれたとは、今となってはなんと皮肉なことでしょう。
 彼らは屈しませんでした。自分の見たまま、感じたまま、好きなように描く。印象を絵にする。それこそが新しい時代を拓く自分たちの使命であると、描いて描いて、前へと突き進んでいったのです。
〈私は、なぜだろう、印象派――と書いただけで、ふいに涙が込み上げてくることがあるんだよ。
 どんなに叩かれても、打ちのめされても、貧しくても、どん底に落ちても、彼らは……そう、彼らは、闘うことをやめなかった。〉(本書、序文より)
「愛すべき愚かものたち」。マハさんは最大の敬意と愛情を込めて彼らをそう呼びます。愚直に、ひたむきに、自分の信じる道を歩いてゆけ――7つの物語を読むと、愛すべき愚かものたちがそっと背中を押してくれるような、そんな気がするのです。

波 2019年7月号より

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著者プロフィール

原田マハ

ハラダ・マハ

1962(昭和37)年、東京都生まれ。作家。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍中の2000(平成12)年、ニューヨーク近代美術館に半年間派遣。その後2005年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞し、翌年デビュー。2012年に発表したアートミステリ『楽園のカンヴァス』は山本周五郎賞、R-40本屋さん大賞、TBS系「王様のブランチ」BOOKアワードなどを受賞、ベストセラーに。2016年『暗幕のゲルニカ』がR-40本屋さん大賞、2017年『リーチ先生』が新田次郎文学賞を受賞。その他の作品に『本日は、お日柄もよく』『ジヴェルニーの食卓』『デトロイト美術館の奇跡』『常設展示室』『風神雷神』『リボルバー』などがある。

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