ホーム > 書籍詳細:幕末バトル・ロワイヤル 天誅と新選組

身分、立場関係なしの闇討ち、暗殺。人心不穏、政府狼狽。テロは国家を疲れさせる。

幕末バトル・ロワイヤル 天誅と新選組

野口武彦/著

792円(税込)

本の仕様

発売日:2009/01/19

読み仮名 バクマツバトルロワイヤルテンチュウトシンセングミ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 254ページ
ISBN 978-4-10-610297-4
C-CODE 0221
整理番号 297
ジャンル 日本史
定価 792円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/12/28

尊王派と佐幕派の対立は、ついに流血の惨を招くに至った――。殺される側は身分も立場も理由もいろいろだが、「文久」の三年間、政治都市京都を中心に《天誅》の名による殺戮が荒れ狂う。過激派浪士と新選組が死力を振って斬り合う剣戟ロマン。それは《銃砲》の時代を迎える直前、道場剣術から実戦に復活した《刀》の最後の花道だった。幕府はテロの恐怖にじわじわと消耗してゆく。急転直下のバトル・ロワイヤル。

著者プロフィール

野口武彦 ノグチ・タケヒコ

1937(昭和12)年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を退官後、著述に専念する。日本文学・日本思想史専攻。著書に『大江戸曲者列伝』『幕末バトル・ロワイヤル』『幕末気分』『幕府歩兵隊』など。

目次

第一部 文久天誅録
その一 公武合体論
その二 東禅寺事件
その三 別手組創設
その四 品川御殿山
その五 和宮降嫁
その六 坂下門外の変
その七 ロシア軍艦対馬占拠事件
その八 一服盛る
その九 幕末の外国語ブーム
その十 久光東上
その十一 寺田屋騒動
その十二 将軍後見職
その十三 生麦事件
その十四 君子豹変
その十五 京都守護職
その十六 耳と腕
その十七 足利三代木像梟首
その十八 国事御用掛
その十九 英国公使館焼討
その二十 将軍上洛
その二十一 石清水行幸
その二十二 江戸浪士組の誕生
その二十三 清河八郎暗殺
第二部 文久殺陣録
その一 新選組の発祥
その二 海峡の砲声
その三 姉小路遭難
その四 奇兵隊出現
その五 だんぶくろ
その六 生麦償金顛末
その七 将軍連れ戻し作戦
その八 薩英戦争
その九 天誅組突出
その十 八月十八日の政変
その十一 黒幕法親王
その十二 御用金強盗
その十三 天狗党挙兵
その十四 池田屋騒動
その十五 禁門の変
その十六 下関戦争
その十七 第一次長州戦争
その十八 彦島はやれない
その十九 横須賀製鉄所
その二十 鰊倉に死す
あとがき
年表

インタビュー/対談/エッセイ

波 2009年2月号より 天誅と幕末心理

野口武彦

二〇〇八年の十一月に元厚生次官宅の連続襲撃事件が起きた直後、動機はけっきょく筋違いの報復だったとされたが、「すわ天誅か」といちばん先に狼狽したのは政府部内だったという話だ。
かつて首相秘書官を務めた人物までがテレビのインタビューで「今の世相ではこんなことが起きても不思議はない」と語るくらいなのだから、たんなる笑い話ではない。政治家たちには、それぞれいろいろ思い当たるフシがあるに違いない。そういう反応が起こる事実こそが、まさしく《幕末心理》の現れなのである。
後世の歴史ロマンでは、幕末の天誅はやたらに美化されるが、そのすべてが純粋無垢な思想信条に発したものかどうかは相当疑わしい。中には明らかに、「天誅」を口実にして積もる私怨を晴らすか、社会に対するリゼントメントを発散するかしているとしか思えない暗殺もある。幕末と現代がマジに落ち重なってくる昨今では、何か物騒なことを使嗾しているみたいで「天誅」という言葉までが何となく使いにくくなっている。
文久二年(一八六二)十二月二十一日、国学者の塙次郎が斬られた。盲目の大学者として有名な塙保己一の息子である。かつて老中安藤信正の頼みで外国人待遇の先例を調べたことがある。それが孝明天皇の退位を研究していると誤解され、長州藩の志士に襲われたのである。犯人は伊藤俊輔、つまり後に日本最初の総理大臣に就任した伊藤博文である。
噂は事実無根だったが、伊藤はまず国学入門者と偽って相手宅を訪問。顔を覚えておいて二十一日の夜、帰宅する次郎を路上で待ち受け、「国賊!」と罵声を浴びせてバッサリ斬ってしまった。世間には寝所に押し入って斬り殺したという話になって伝わり、後年の伊藤はさすがに事実だけは否定できず、「いや、やったのは路上だった」と変な弁解をしている。
日本は、テロをやっていた人物でも首相になれる結構なお国柄なのである。
国学者の受難はまだ続く。本書の第一部『文久天誅録』その十七「足利三代木像梟首」には後日談がある。『日本書紀』研究家の鈴木重胤は「尊氏以下の人形の首きり候ものは平田党のよし。これはイタイともカイイとも云わぬもの故つまらぬ事にて、今少しいたし方もこれあるべく候」と人に語り、「人間の生首を取るのと違って、木像は刃向かってこない。斬り合いをしなくてもいいから楽だ、アハハハハ」と嘲笑したそうだ。
文久三年(一八六三)八月十五日の夜、自宅で門弟と酒を飲んで談笑中の重胤は、訪ねてきた二人の武士にスッパリ斬られ、手当の甲斐なく絶命した。犯人はその場から逃走し、いまだに誰ともわからない。翌朝張り出された斬奸状には、おなじみの「天誅」の二字が躍っていた。

(のぐち・たけひこ 文芸評論家)

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