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官邸は今日も間違える

千正康裕/著

946円(税込)

発売日:2021/12/17

書誌情報

読み仮名 カンテイハキョウモマチガエル
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 270ページ
ISBN 978-4-10-610934-8
C-CODE 0231
整理番号 934
ジャンル 政治
定価 946円
電子書籍 価格 946円
電子書籍 配信開始日 2021/12/17

バラマキ給付、アベノマスク、接触アプリ、GoToトラベルetc. 欲しかったのは、これじゃない! コロナ禍の「謎」政策を元官僚が徹底分析。

コロナ禍の日本政治は迷走が続いた。突然発表された全国一斉休校に、閣議決定をやり直した一律給付金、アベノマスクと揶揄された布マスクの配布……。現場に混乱を生み、国民の信頼を損なう政策はなぜ生まれたのか。原因は「官僚主導」から「官邸主導」への変化に、政治の仕組みが対応できていないことにある。元厚労省キャリアが、もつれた糸を解きほぐし、政治と官僚、国民のあるべき姿を提示する。

目次
はじめに
第1章 コロナ禍で見えた日本政治の問題点(1)
1 突然発表された全国一斉休校/首相の決断/事前調整もなく2営業日前に発表/リーダーシップの演出/2 閣議決定をやり直した10万円の一律給付金/困窮世帯への30万円給付のはずが/生活支援策から「国民の一体感醸成」へ/政治家と官僚の行動原理の違い/3 特別定額給付金をもらえない人/DV被害者に届かない!?/世帯主がDV加害者の場合/例外的手続が決まる/仕組みはできても情報が届かない/当事者に必要な情報を届けるには/なぜ国の説明は分かりにくいのか/4 アベノマスクとはなんだったのか?/2枚の布マスクの全世帯配布/布マスクで不安はパッと消える?/三つの読み間違え/政策担当者の本音/政策担当者と国民感情のずれ/もし、伝えるとしたら
第2章 コロナ禍で見えた日本政治の問題点(2)
1 アビガンをめぐる科学vs願望の政治/国民の不安と治療薬への期待/治療薬の承認プロセス/アビガンへの期待と前のめりの安倍首相/科学的な有効性は確認できず/科学vs願望の政治/2 アベノマスクも特別定額給付金もなかなか届かない/宣言解除後に配り終えたアベノマスク/申請後もなかなか届かない特別定額給付金/人海戦術はもう無理だ/実務と意思決定の乖離/3 接触確認アプリCOCOAの不具合はなぜ起こったか/不具合の放置問題/急ごしらえのアプリ開発/体制が整わない厚労省/急げとしか言わない政治家、言われるままの官僚
第3章 官邸主導の限界
意思決定の変化/1 支持率至上主義の秘密/伝統的な官僚主導の政策決定/組織率低下と経済環境の激変/無党派層が増加/政治のワイドショー化/小選挙区制の導入と政権交代/ワイドショー政治からSNS時代へ/2 事前調整の欠如の秘密/事前に情報が洩れると支持率は上がらない/スクープの裏側/スクープをコントロールすることも/3 なぜ政治家は実務を軽視するのか/社長と首相や大臣の違い/政高官低/4 官邸主導は不完全/官邸主導で官僚の人員配置見直しを/本当にできるのかという視点を/5 なぜ菅首相は「伝える力」がなかったのか/恐怖の官房長官/菅首相は「利」の人/官房長官と総理大臣の違い/日本型のコロナ対策と菅首相の相性の悪さ/不都合なことをちゃんと伝える勇気を/国民に信頼してほしいなら
第4章 国の政策はなぜ国民に伝わらないのか
構造的要因が/1 官僚はなぜ伝えるのが下手なのか/わざとではない/受験エリートの官僚たち/難解な文章を読むことに慣れすぎて/日本で最も怒られることが嫌いな人たち/客を選べない辛さ/生活者の経験がほとんどない/2 霞が関には国民に伝える仕事はこれまでなかった/かつてはプロだけでつくれた/周知広報は中間組織と自治体の仕事/官僚が伝える相手もプロ/市区町村と住民の距離も広がる/3 大手メディアの機能低下/新聞とテレビを見なくなった国民/4 広報の仕事と役所の意思決定システムの矛盾/幹部ほど広報は下手/幹部に聞いてどうする
第5章 政策と現場を近づけるための霞が関改革
1 広報機能を強化するには/若手の創意工夫を活かす/外部の広報の専門人材を活かす/官民交流を増やす/兼業のメリット/官僚もみんなSNSを/個人が主語の他流試合を増やす/自らのメディアを活用する/お金をちゃんと使う(プロに任せる、デジタルを使う)/2 申請主義の限界を超える/ナッジという新たな手法/受診率が1・5倍に/3 デジタルの力を活用/迅速に給付金を支給するには/申請なしで振り込みも/納得感も高まる/プッシュ型の周知と簡便な手続/デジタルだけでは解決しない
第6章 充実した議論を効率的に行うための国会の改革
1 行政を止める国会から行政をよくする国会へ/機能が麻痺しかけた厚労省/「ご説明」に追われて/国会議員も本当は知っている/国会改革は必ず進む/国会改革の鍵は世論/2 野党は夢を語れ/野党合同ヒアリングは民主党政権の成功体験の名残り/政治家同士で議論すべき/政権が説明責任を果たさない理由/行政監視強化のために/3 利害対立を乗り越える国会のルールづくりを/与党のせいか野党のせいか/国会改革はあらゆる制度改正より難しい/自党の利益か、社会の利益か/行政監視、政策の議論、効率化をすべて進めるために
第7章 よい政策をつくるために国民にできること
1 今の政治状況はプロの片思い/官僚は課外活動せよ/霞が関の外に出て気づいた情報格差/プロの悲しい片思い/2 政治家を知るために/選挙と選挙の間が大事/好きな政治家をつくる/3 政治家や官僚と国民をつなぐ新しいプラットフォーム/国会議員の政策づくりを応援する(PoliPoli)/くらしの悩みごとを政策で解決する(issues)/みんなでルールをつくる場づくり(Pnika)/ミレニアル世代の新しい「公」のプラットフォーム(Public Meets Innovation)/政策起業家を育成するプラットフォーム(PEP)/4 政策のプロセスの見える化/永田町や霞が関は自律的に変えられない/永田町や霞が関だけでなく/民間や国民のための教科書を
おわりに

インタビュー/対談/エッセイ

コロナ禍の「謎」政策を解き明かす

千正康裕

 社会がコロナ禍に突入してから、約2年が経つが、これほど国の政策に世間の注目が集まったことはなかったのではないだろうか。
 注目を集める一方で、コロナ禍の日本政治は迷走が続いた。突然発表された全国一斉休校に、閣議決定をやり直した一律給付金、アベノマスクと揶揄された布マスクの配布……。現場に混乱を生み、国民の信頼を損なう政策も多かった。さらに、首相や政府の意図の伝わらない説明にも、国民の不満はつのった。
 首相の側近が、「布マスクを配れば、国民の不安はパッと消えますよ」とささやいて決まったと言われるアベノマスク配布。約400億円かけたが、配り終わった時には緊急事態宣言は解除された後、ほとんどの人は使っていない。余ったマスクの保管費用もかさんでいる。なぜ、こんなことがおこるのだろうか。
 僕自身、厚生労働官僚として、多くの政策をつくってきたし、2年前に官僚を辞めていなければ、コロナ対策の前線に投入されていたに違いない。誰も喜ばないことに、税金や官僚や現場の労力を使ってほしくない。
 僕は、官僚を辞めてからすぐに、霞が関の過酷な働き方を明らかにし、改善するために、『ブラック霞が関』(新潮新書)を出版した。
 この問題は様々なメディアに取り上げられ、政府関係者や国会議員からも多くの反響があり、国会も政府も改善に取り組み始めた。2021年の骨太の方針でも、国家公務員の働き方改革の方針が示された。官僚が元気に力を発揮できるようにすることは、この国の政策を本当に国民のためによいものにしていくために、必要なことだ。
 しかし、さらに必要なことがある。それは、政策決定プロセスのアップデートだ。僕が官僚として政策の世界に身を投じてから20年。官僚主導から官邸主導へと大きく変化した。よい面もあるが、ここ数年、本当に日本の政策プロセスは壊れてきたと感じている。それが、コロナ禍という先送りできない課題によって色濃く出た。はっきり言うが、官邸も各省も国会も「よかれ」と思って頑張っているが、正解が分からないのだ。
 官邸の思考回路、永田町の力学、各省官僚の混乱や疲弊、重なるミス。この20年政策をつくってきた経験と知識をフル動員して、その構造を解き明かした。霞が関や永田町への提言も書いた。
 この本は、多くの生活者やビジネスパーソンにこそ読んでほしい。永田町や霞が関は自律的には変わらないが、外圧があれば必ず変わるからだ。最終章に書いた国民の政治との向き合い方や、声をあげる方法をぜひ知ってほしい。
 誰かを悪者にしたり、批判したりするだけでは社会はよくならない。生活者や現場と政策の意思決定の距離を近づけていくために、多くの読者と一緒に考えていきたい。

(せんしょう・やすひろ 株式会社千正組代表取締役)
波 2022年1月号より

著者プロフィール

千正康裕

センショウ・ヤスヒロ

1975(昭和50)年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。2001年厚生労働省入省。社会保障・労働分野で八本の法律改正に携わる。2019年9月に退官。コンサルティング会社(株)千正組を設立。内閣府、環境省の有識者会議委員も務める。著書に『ブラック霞が関』。

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