新版 メディアとテロリズム
924円(税込)
発売日:2023/09/19
- 新書
- 電子書籍あり
マスコミとテロリストは「共犯者」ではないか。話題の論考に、安倍元首相、岸田首相襲撃事件の分析も加えた決定版。
テロリストはネットやTVなどのメディアで存在をアピールし、主義主張を宣伝する。メディアはそれを報じ、PVや視聴率、部数を稼ぐ。これはもはや“共生”どころか“共犯”関係である。あさま山荘事件、アメリカ大使館人質事件、地下鉄サリン事件から直近の安倍晋三元首相、岸田文雄首相襲撃事件までテロの歴史を俯瞰し、“負のスパイラル”を脱する道を探る。大きな話題を呼んだ原著に大幅な加筆をした決定版。
新版のためのあとがき
参考文献
新版のための追加参考文献
書誌情報
読み仮名 | シンパンメディアトテロリズム |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 256ページ |
ISBN | 978-4-10-611013-9 |
C-CODE | 0220 |
整理番号 | 1013 |
ジャンル | 社会学、思想・社会 |
定価 | 924円 |
電子書籍 価格 | 924円 |
電子書籍 配信開始日 | 2023/09/19 |
蘊蓄倉庫
赤穂浪士によるテロ
日本の長い歴史の中で、最も有名なテロリズムは何か。『新版 メディアとテロリズム』で著者は、忠臣蔵で有名な「元禄赤穂事件」を挙げています。赤穂浪士の立場に立てば、正義の行動でしょうが、当時の政府から見れば間違いなく暗殺テロなわけです。しかしこれを当時の民衆、あるいはメディアはコンテンツとして消費しました。その結果、いまなお語り継がれる物語になっています。「日本には、赤穂浪士の行動は義挙であり、テロリズムとはみなされない歴史的文化がある。この文化が日本におけるテロリズム対策を難しくしているという側面もある」と著者は指摘しています。
掲載:2023年9月25日
担当編集者のひとこと
テロリストについてどこまで伝えるべきなのか
安倍晋三元首相の銃殺事件後、容疑者の動機その他についてかなりの情報が報道で伝えられました。SNSによる拡散も多く見られました。
難しいのはどこまで詳しく伝えるべきなのか、という点です。
仮に容疑者による詳細な犯行声明文があったとして、それを全部紹介するのはいいことなのか。その狙いが、主張を広めることだとすれば、結果としてテロリストの思うツボではないか。そんな成功例があれば、次のテロリストも主義主張を広めるために、誰かを殺そうと考えるのではないか。これはリスクを考える側の懸念でしょう。
いや、報道の自由、言論の自由を優先すべきだろう。独裁国家では、仮に反政府運動が行われても、「なかったこと」にされるし、その狙いが報じられることもない。そんな状況を許していいはずがない。起きたことをきちんと伝えるのは大原則のはずだ。これは報じる側の論理です。
ただ、こうした原則や建前とは別に、メディアの側には損得勘定もあります。身も蓋もない言い方をすれば、テロの話題は「数字を稼げる」ネタだという面があるのです。テロリストもそんな事情を承知しているので、メディア受けするテロを実行するわけです。
このような関係を本書の著者は「共生」関係あるいは「共犯」関係だと指摘します。
この負の連鎖をどのように止めるべきか。止めることができるのか。あさま山荘事件、アメリカ大使館人質事件、地下鉄サリン事件から直近の安倍晋三元首相、岸田文雄首相襲撃事件までテロの歴史を俯瞰し、“負のスパイラル”を脱する道を探った論考です。
2023/09/25
著者プロフィール
福田充
フクダ・ミツル
1969(昭和44)年兵庫県西宮市生まれ。日本大学危機管理学部教授、同大学院危機管理学研究科教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(政治学)。著書に『政治と暴力』『テロとインテリジェンス』『リスクコミュニケーション』など。