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[『冬芽の人』刊行記念インタビュー]大沢在昌/鎮魂と再生のハードボイルド

波 2013年2月号

(毎月27日発売)

105円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2013/01/28

発売日 2013/01/28
JANコード 4910068230232
定価 105円(税込)

[『冬芽の人』刊行記念インタビュー]
大沢在昌/鎮魂と再生のハードボイルド

安部公房『(霊媒の話より)題未定―安部公房初期短編集―』
三浦雅士/言葉を物として描くこと

田辺聖子『続 田辺聖子の古典まんだら―一葉、晶子、芙美子―』
小川洋子/女性文学者たちに感謝と祈りを

[『ちょうちんそで』刊行記念インタビュー]
江國香織/記憶と愛を巡る物語

阿刀田 高『源氏物語を知っていますか』
俵 万智/名ガイドと読む古典

舞城王太郎『キミトピア』
松永美穂/個であり続ける自由

[乃南アサ『いちばん長い夜に』刊行記念特集]
北上次郎/彼女たちの「それから」
原 幹恵/小さなことでも笑っていたい

垣谷美雨『ニュータウンは黄昏れて』
吉田伸子/持てる者と持たざる者

光本正記『紅葉街駅前自殺センター』(第八回新潮エンターテインメント大賞受賞作)
池上冬樹/書かねばならない衝動の在処

[米澤穂信『リカーシブル』刊行記念特集]
瀧井朝世/健気な中1ヒロインの誕生
いま、米澤穂信さんに聞きたいこと

大平 健『治療するとカワイクなります―生きがいの精神病理―』
酒井順子/「かわいい」と「カワイイ」

伊藤まさこ『家事のニホヘト』『台所のニホヘト』
岡戸絹枝/「もやり」は禁物

ジェイムズ・グリック『インフォメーション―情報技術の人類史―』
西成活裕/我々はなぜ情報に振り回されるのか?

城内康伸『「北朝鮮帰還」を阻止せよ―日本に潜入した韓国秘密工作隊―』
森 達也/「非・劇的」ゆえの重要な史実

傳田光洋『皮膚感覚と人間のこころ』(新潮選書)
梨木香歩/生命をかたちづくる皮膚

笹森建美『武士道とキリスト教』(新潮新書)
笹森建美/武道場に早変わりする教会から

ブルちゃん愛好会『ブルドックソース レシピ帖』
栗原心平/ソースは僕を裏切らない

【都築響一『ヒップホップの詩人たち』刊行記念対談】
都築響一×大根 仁/新しいリリックが生まれる場所

津原泰水『廻旋する夏空―クロニクル・アラウンド・ザ・クロックII―』(新潮文庫)
石井千湖/転がり続けるロック小説

コラム
考える人-最近、どんな夢を見ていますか?
三橋曉の海外エンタ三つ巴
とんぼの本をよむ

連載
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第35回
鹿島田真希/少女のための秘密の聖書 第5回
斎藤明美/高峰秀子の言葉 第19回
吉田篤弘/ソラシド 第7回
桜木紫乃/モノトーン 第12回
梨木香歩/冬虫夏草 続・家守綺譚 第9回
三山 喬/トスキナの唄 流浪のキネマ屋・古海卓二伝 第12回
高橋秀実/とかなんとか言語学 第14回
江 弘毅/有次と庖丁 第3回
津村節子/時のなごり 第17回

編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から

編集長から

◇今月の表紙の筆蹟は大沢在昌さんです。最新刊『冬芽の人』の成り立ちや読みどころに関しては本文のインタビューをご覧いただきたいのですが、大沢さんの小説には「新宿鮫」の刑事・鮫島を筆頭に「魔女」シリーズの裏コンサルタント・水原など、常に鮮烈で魅力的なヒーロー、ヒロインが登場して読者を虜にします。今回の主人公しずりも、過去の自分と対峙する「後ろ向き」ながら深みのあるヒロインとして描かれていますが、こういったヒーロー、ヒロインはどのように造り上げられるのか――その創作の秘訣が昨年上梓した『小説講座 売れる作家の全技術』(角川書店)で明かされています。小説執筆の心構えからテクニックまでを懇切丁寧に語ったこの本は、作家として成功を夢見る方には必読の書です。ちなみに今回、表紙の撮影に使わせていただいたのは東京・六本木にある大沢さん行きつけのバー「ブルー」。多くのミステリー作家に愛されている会員制のバーで、壁面には作家たちの直筆のサインが書かれています。小説を書く作業は「息を詰めて海の底深く潜っていくようなもの」(前掲書)と語る大沢さんの息抜きの場です。
◇先月号の書評欄でご紹介した上田正昭氏『私の日本古代史(上・下)』(新潮選書)が発売以来、大好評で版を重ねています。担当編集者が、古代史の泰斗に通史の執筆をお願いしたのはおよそ三年前。以来、ご自身の膀胱癌の手術と、奥様の急逝というご不幸も乗り越えて書き続けて下さった結果、千枚を超える大著が完成しました。大陸から東アジアまでを射程に入れた独自の史観に基づく本書は、邪馬台国論争や「古事記は偽書か」といった一般の読者にも馴染みやすい項目を盛り込みながら、既存の学説をわかりやすく解説していきます。十九歳の時、信じていた「神国日本」の敗北で虚脱と懐疑に投げ込まれて、古代史研究を始めたと語る上田氏。「日本国家のなりたちをみきわめたい」という碩学の集大成とも言える本書は、老若男女を問わず一読をお薦めしたい名著です。

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。