第40回 川端康成文学賞
主催・公益財団法人 川端康成記念会 後援・株式会社 新潮社 発表誌:「新潮」
第40回 川端康成文学賞 受賞作品
すっぽん心中
「新潮」 平成25年1月号
受賞のことば
「引越し祝いだ、すっぽん食べにいこう、奢ってやる」と、以前浅草に引越したとき、友達が浅草寺裏にあるすっぽん料理屋に連れていってくれました。そのとき店の主人が「数日前、若いカップルが、霞ヶ浦で捕ってきたすっぽんを売りにきたんですよ、買いませんでしたけど」と話していたのです。
わたしは、すっぽんを買ってもらえず落胆した二人の顔を想像してみました。金に困っていたのだろうか? 買ってもらえなかったすっぽんは食べたのだろうか? そして、いつか小説に書きたいと思っていました。
今回、川端賞の受賞を聞いたとき、正直、あまり実感がわきませんでした。これまでの経験で、賞というものは落ちるもの、といった気持ちだったので、なんだか他人事みたいなのでした。しかしこれまでの受賞作や候補作を眺めていたら、好きな小説がたくさんあって、自分がここに入っていいのだろうかと、ちょっと尻込してきました。一方でやたら嬉しく思えてきました。どうもありがとうございます。
〔戌井昭人氏略歴〕
一九七一年、東京生まれ。玉川大学文学部芸術学科で演劇を専攻し、卒業後、文学座附属演劇研究所に入所。九七年、パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げ。著書に『まずいスープ』『ぴんぞろ』『俳優・亀岡拓次』『松竹梅』『ひっ』『すっぽん心中』。
第40回 川端康成文学賞 候補作品
すっぽん心中 | 戌井昭人 | 「新潮」 平成25年1月号 |
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糸杉 | 中村文則 | |
あなめ | 藤沢周 | |
野焼 | 佐伯一麦 | |
いたちなく | 小山田浩子 | |
アイデンティティ | 藤野可織 |
過去の受賞作品
- 清心館小伝
- 私の批評
- 反対方向行き
- 旅のない