川端康成文学賞
主催・公益財団法人 川端康成記念会 後援・株式会社 新潮社 発表誌:「新潮」
第44回 川端康成文学賞 受賞作品
こことよそ
「新潮」 平成29年 6月号
保坂和志さんのスピーチ
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受賞のことば
実家は鎌倉で川端邸のすぐ近所だから、母は「川端先生」と言っていた。私は川端先生がノーベル賞を受賞したとき、小六で学校の帰りに友達四人とお祝いを言いに行くと、先生は川端邸に通じる路地は報道陣でごった返していたが、子供を見つけると手招きしてくださった。私たちは「先生、おめでとうございます!」と言った。
私はたまたまこのあいだ「愛する人達」という短篇集を読んでいた。川端作品はたくさんは読んでないが、すらすら書いた感じの書きようにいつも感心する、日本文学を好きではない私の数少ない好きな作家だ。ある意味、尊敬もしている。
「こことよそ」は鎌倉の道を歩く場面がある、その道は川端先生も歩いた、私は川端先生の御利益を受けていたのかもしれない。
私は最近、生きていることと死んでいることはあまり区別して考える必要ないんじゃないかと感じることが多い。これからは死者と過ごす時間が増えると感じている。
〔保坂和志氏略歴〕
一九五六年山梨生まれ、鎌倉育ち。早稲田大学卒業。九〇年『プレ―ンソング』でデビュー。九三年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、九五年『この人の閾』で芥川龍之介賞、九七年『季節の記憶』で谷崎潤一郎賞、平林たい子文学賞、二〇一三年『未明の闘争』で野間文芸賞を受賞。『小説の自由』『試行錯誤に漂う』等、評論作品も多数刊行。
選考委員
過去の受賞作品
- 清心館小伝
- 私の批評
- 反対方向行き
- 旅のない