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とりあたまGO―モンスター襲来!編―

西原理恵子/著 、佐藤優/著

1,540円(税込)

発売日:2016/12/16

  • 書籍
  • 電子書籍あり

怪物級のニュースvs.最強コンビ!

街にはポケモンがあふれ、シン・ゴジラが上陸して大ヒット、トランプの勝利で混乱するアメリカとEU離脱のイギリス、迷走する都政、続出する不倫騒動、さらにSMAP解散、天皇陛下「生前退位」……。次々と世界を襲ったモンスター級のニュースを、異色のコンビが迎え撃つ! 「週刊新潮」人気連載、第五弾!

目次
空き家問題
戦艦「武蔵」発見
ネムツォフ殺害
追悼・桂米朝
「大塚家具」骨肉の争い
佳子さまフィーバー
高野山千二百年
上西小百合議員騒動
追悼・愛川欽也
ドローン
モラルハラスメント
橋下徹「政界引退」
「枕営業」判決
教科書デジタル化
元少年Aの手記出版
18歳選挙権
韓国人気女性作家『憂国』盗作問題
国公立大「文系学部廃止」通知
ゆう活
ビース又吉直樹・芥川賞受賞
新国立競技場騒動
不倫SNS「アシュレイ・マディソン」
戦後70年談話
「深夜徘徊」する少年少女
ドナルド・トランプ
東京五輪エンブレム白紙撤回
欧州難民問題
国会デモ
春画ブーム
福山雅治結婚
一億総活躍大臣
ラグビー「五郎丸」人気
マンション「杭打ち偽装」問題
「マイナンバー制度」開始
電力自由化
「民泊」問題
チャーリー・シーン「HIV感染」告白
「永遠の処女」原節子死去
2015年私的重大ニュース
2016年の大予言
フリーメイソン「名簿公開」
男性生涯未婚率2割
私と『スター・ウォーズ』
SMAP解散騒動
金持ち国ドバイ
琴奨菊「初優勝」
子供の貧困問題
「重力波」初観測
マイナス金利
イクメン
人工知能
ディカプリオ、オスカー受賞
アドラー・ブーム
新入社員諸君!
頻発する不倫騒動
シェイクスピア没後400年
パナマ文書
熊本地震
舛添都知事と血税
追悼・蜷川幸雄
田中角栄ブーム
オバマ広島訪問
北海道・小2男児「置き去り」事件
追悼モハメド・アリ
高額薬価問題
英国EU離脱
高知東生逮捕
ダッカ襲撃
天皇陛下「生前退位」
ポケモンGO
小池百合子新都知事
リオ五輪
『シン・ゴジラ』大ヒット
「高畑淳子」謝罪会見
「築地市場移転」延期
「こち亀」200巻完結
民進党・蓮舫新代表
卓球♥愛ちゃん結婚
フィリピン・ドゥテルテ大統領

書誌情報

読み仮名 トリアタマゴーモンスターシュウライヘン
雑誌から生まれた本 週刊新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 B5判変形
頁数 168ページ
ISBN 978-4-10-301938-1
C-CODE 0079
ジャンル ノンフィクション
定価 1,540円
電子書籍 価格 1,232円
電子書籍 配信開始日 2017/06/02

書評

アイスクリームの冷たさとコーヒーの熱さ

茂木健一郎

 人間の脳を元気にするものは、たくさんあるけれども、「むちゃくちゃ」で「カオス」な読み物がその一つであることは言を俟たない。なぜならば、混沌に向き合う時に、私たちは、考え、感じ、決めなければならないからだ。自分自身の中の「基準」が問われるからだ。
 常識や定型的なことは、人間の脳を安心させる。その分ラクだが、私たちの心はたるんでしまう。そして現代は、そのようなラクなものが実に多い。これは、生命の危機であるとさえ言える。
 週刊新潮の「最後尾」に毎号掲載されている「週刊鳥頭ニュース」は、それを読む者の頭を元気にする。
 なぜならば、徹頭徹尾、むちゃくちゃだからだ(笑)。
 取り上げられるのは、誰でも関心を持つような時事ネタ。その分析、解釈、理解が、メーターが振り切れた、むちゃくちゃでカオスなのだ。
 むちゃくちゃと言っても、内容がない、ということではない。むしろ、内容がありすぎる。
 佐藤優さんの文章と西原理恵子さんのマンガが並んだ、その二頁の間に、何事もおとなしくなってしまった平成ニッポンにおける、唯一無二と言っても良いくらいの、異常なエネルギーに満ちたワンダーランドが広がっているのである。
 佐藤優さんの文章は、極めて理知的である。深い知識、分析力に基づき、戦略的な思考が繰り広げられる。「インテリジェンス」という英語には、日本語で言うところの知性と戦略の両方の意味が含まれているけれども、さすがは元外務省の切れ者、その優れたインテリジェンスに基づく分析には、魂を震撼させる力がある。
 加えて、佐藤さんの文章には、何ともいえない官能性がある。神学の知識か、幅広い教養のなせる技か。ヘルマン・ヘッセの『知と愛』でもテーマとなった、人間の中の「理知」と「愛」という深い傾向が、一人の中に同居しているのだ。これは、稀なことである。
 対する西原理恵子さんのマンガ。同じ題材なのに、なぜここまで、というくらい、毎回佐藤さんと「アプローチ」が違う。
 見る角度が「想定外」なのだけれども、どこかクスリと笑わされて、心を揺り動かされて、そして何よりも、読む前よりも自分が「自由」になっていることに気づく。
 これは、今の時代、本当に貴重なことだと思う。西原さんが繰り出す、いろいろな角度から飛んでくる「発想の飛躍」という刺激剤に、読み手の心が動かされて、いきいきと再生し始めるのだ。
 佐藤さんの文章と西原さんのマンガが並んで読める、この構成を考えた編集者は、「天才」だと思う。絶妙なコントラストが、全体として読む者の脳を根本から再活性化するからだ。
 コントラスト、そして差異こそが、生命をいきいきとさせる「秘蹟」である。アイスクリームの冷たさと、コーヒーの熱さの共存こそが素晴らしいと書いたのは、夏目漱石の弟子で物理学者の寺田寅彦だが、その意味では、「週刊鳥頭ニュース」のコントラストは「神ってる」。
 その連載をまとめた第五弾となる『とりあたまGO―モンスター襲来!編―』は、心を自由にして、活性化するカオスなコントラストのオンパレードだ。
 小池百合子都知事、シン・ゴジラ、天皇陛下の生前退位、英国のEU離脱、SMAP解散、人工知能……世間で話題になったさまざまなニュースについて、佐藤、西原の「最強コンビ」、いや「最凶コンビ」(池上彰さんによる命名)が繰り出す絶妙なコンビネーションが、読む者を元気づける。
 だいたい、おかしいよね。どんな時事ネタでも、「困ったものですね」とか、「お騒がせですね」といった予定調和のコメントを出すテレビのワイドショーとか、逆に「正論」や「常識論」しかない新聞の記事って。ちょっと立場が違うだけで、すぐにダメだと決めつけるネットもおかしい。
 それでは、私たちの中の生命が救われない。人間は、そもそも、生まれた時はこの世のことを何も知らない。幼子にとって、この世はカオスである。だからこそ、元気なのだ。
 時事ネタという、もっとも手垢がつきがちなテーマに対して、あたかも今日生まれたばかりのような新鮮な視点で眺めることを促してくれる『とりあたまGO―モンスター襲来!編―』は、平成日本における、心の栄養ドリンクである。最近なんだか固定観念にとらわれていると感じている人、なんだか脳に元気がないと感じている人に、本書をぜひオススメしたい。

(もぎ・けんいちろう 脳科学者)
波 2017年1月号より

著者プロフィール

西原理恵子

サイバラ・リエコ

1964年高知県生まれ。マンガ家。武蔵野美術大学卒。1988年、週刊ヤングサンデー『ちくろ幼稚園』でデビュー。1997年に『ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、2005年には『上京ものがたり』、『毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。著書に『この世でいちばん大事な「カネ」の話』『パーマネント野ばら』『ダーリンは73歳』『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』『りえさん手帖 ホントにやせた編』など。

西原理恵子公式サイト*鳥頭の城* (外部リンク)

佐藤優

サトウ・マサル

1960年生れ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英大使館、在露大使館などを経て、1995年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年に背任と偽計業務妨害容疑で逮捕・起訴され、東京拘置所に512日間勾留。2005年2月執行猶予付き有罪判決を受ける。2009年6月に最高裁で上告棄却、執行猶予付き有罪確定で外務省を失職。2013年6月に執行猶予期間を満了、刑の言い渡しが効力を失った。2005年、自らの逮捕の経緯と国策捜査の裏側を綴った『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』で毎日出版文化賞特別賞を受賞。以後、作家として外交から政治、歴史、神学、教養、文学に至る多方面で精力的に活動している。主な単著は『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞)、『獄中記』『私のマルクス』『交渉術』『紳士協定―私のイギリス物語』『先生と私』『いま生きる「資本論」』『神学の思考―キリスト教とは何か』『君たちが知っておくべきこと―未来のエリートとの対話』『十五の夏』(梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞)、『それからの帝国』など膨大で、共著も数多い。2020年、その旺盛で広範な執筆活動に対し菊池寛賞を贈られた。

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