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古事記の正体

関裕二/著

946円(税込)

発売日:2025/09/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

偽書か、告発か、怨念か──。「日本最古の書」の謎を解く!

本居宣長いらい、『古事記』は「大和心(やまとごころ)」、すなわち日本人の精神性の根源を伝える書として神聖視される。だが、その編纂の目的や経緯に関してはいまだ多くの謎がある。なぜ正史である『日本書紀』と別の史書が必要だったのか。なぜ五世紀後半で記述を終え、成立まで二百数十年の歴史を無視したのか──その裏には、天皇家と時の権力者・藤原氏への深い怨念がある。古代史研究の鬼才が「日本最古の書」の正体に迫る。

目次

はじめに

第一章 『古事記』序文に見る虚構
誰が何を目的に書いたのか/『日本書紀』は藤原体制づくりの手段/人気のなかった天智天皇/消された天武の王家/天武を高く評価する『古事記』序文/稗田阿礼に誦習させたというが……/平安初期の『弘仁私記』で初めて登場/文字で歴史を残す危険性/『古語拾遺』の貴重な証言/元明は異色の天皇/藤原氏を恨む人々/「嫌気がさした」「投げ出したい」/不改常典という謎の法/序文はあとから付け足された/なぜ記紀の内容はところどころ違うのか

第二章 『古事記』偽書説の構図
江戸時代からの偽書説の経緯/特殊仮名遣をめぐる論争/無文字時代から文字時代へ/三浦佑之と西郷信綱/固有名詞か普通名詞か/二百年以上の歴史の空白/『古事記』のふたつの顔/なぜ藤原氏の出自が不明なのか/鹿島神宮の神に背乗りした藤原氏/白村江の戦いに登場しない忠臣・中臣鎌足/阿武山古墳は豊璋の墓か/朝鮮半島情勢とふたつの日本/ヤマト政権を頼った百済/『古事記』のどこが新羅推しなのか/百済と新羅をめぐる日本外交史/『古事記』は敗者の書

第三章 『古事記』と重なるヤマト建国の真相
なぜ顕宗天皇で終わるのか/なぜ神話の舞台は出雲と日向だけだったのか/記紀はどちらが先に神話を構築したのか/考古学と合致する「タラシの王家」の動き/考古学が明らかにしたヤマト建国/二つの王家は併立していた?/『日本書紀』が先に嘘をついた/出雲の国譲りの舞台は北部九州/「前方後円墳」と「前方後方墳」の二大勢力圏/大物主神の祟りに怯えた崇神天皇/凶暴な『古事記』のヤマトタケル/タラシの王家をめぐる仮説/なぜ宮を近江に遷したのか/景行天皇=ナガスネビコ/時代を分解した『日本書紀』

第四章 『古事記』に秘められた秦氏の怨念
安康天皇と雄略天皇/針間国に逃げた意祁王と袁祁王/「ここに秘密が隠されている」/『古事記』にのみ登場する大年神/秦氏は「擬似的同族組織」/秦氏が築いた葛野大堰/雄略天皇と多氏と秦氏/王家と藤原氏への怒り/葛城氏との強い結びつき/蘇我氏や聖徳太子とのつながり/聖徳太子三十三歳像の謎/蘇我入鹿暗殺の実行犯は誰か/律令制度の発展と養蚕利権/秦氏の広めた太子信仰/渡来人は弱い立場だった/渡航を支えた海人と舟/「波多」から「秦」へ/多氏が『古事記』編纂に関わった理由/『古事記』の正体

おわりに 参考文献

書誌情報

読み仮名 コジキノショウタイ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-611099-3
C-CODE 0221
整理番号 1099
ジャンル 日本史
定価 946円
電子書籍 価格 946円
電子書籍 配信開始日 2025/09/18

蘊蓄倉庫

天皇家はなぜ即位儀礼に使用した服を広隆寺に贈り続けるのか

 本書の重要な登場人物である秦河勝が建立したとされる広隆寺は京都最古の寺院です。もっとも有名なのは、国宝彫刻の部第1号となったことで知られる弥勒菩薩半跏像。しかし、本尊はそれほど有名ではない聖徳太子三十三歳像です。そして、天皇家はこの像に、歴代天皇が即位儀礼に用いた服を贈り続けてきました。理由は明らかではありませんが、関裕二さんは、これは蘇我入鹿が暗殺された乙巳の変が原因ではないかと推理しています。本書第4章に詳しい説明があります。

掲載:2025年9月25日

著者プロフィール

関裕二

セキ・ユウジ

1959(昭和34)年、千葉県柏市生まれ。歴史作家、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。仏教美術に魅了されて奈良に通いつめ、独学で古代史を学ぶ。『藤原氏の正体』『古代史の正体』『スサノヲの正体』『アマテラスの正体』など著書多数。

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