【特集】美女と幽霊
編集長から
美女と幽霊
今月号の表紙は、現代に於ける幽霊画の唯一無二の名手、松井冬子による描き下ろしの幽霊画《鳥眼》である。闇黒から浮かび上がる髪の長い女の顔は、恐ろしさと哀しさ、そして何故か一抹の優しささえ感じられる不思議な表情で、一目見るなり脳裡に焼き付く。特集「美女と幽霊」に登場するのは、主に江戸時代から昭和前期の様々な幽霊画だが、此の松井の最新作を得る事で、一気に現代との回路が繋がった。松井には特集内でも独自の幽霊画観について訊いた他、エッセイスト・漫画家の辛酸なめ子、現代美術家の束芋には、それぞれ東と西の幽霊画コレクションで知られる名刹を実際に訪ねてもらった。十八世紀に彼の円山応挙が創始したとされる足のない幽霊美女の絵は、「百物語」なる怪談会の流行と共に、手を替え品を替え描かれ続け、世の人々を心底怖がらせながらも魅了して来た。今宵あなたも小誌を手に、目で見る新たな「百物語」を楽しまれたい。
芸術新潮編集長 米谷一志
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