【特集】とてつもない絵師、河鍋暁斎
編集長から
若冲知ってて、暁斎知らないなんて!
河鍋暁斎の訃報を伝える当時の新聞に「奇抜の画を以て」世に知られたとの記述がある。美人画や花鳥画はもちろん、ユーモア精神に富む暁斎は戯画でも比類ない才能を発揮したのだ。たとえば滑稽な放屁合戦絵巻、陽気に踊る骸骨たち、狐に化かされる坊主を描いた春画巻――。カエルが大好きで、幕府と長州の闘いをカエルの水鉄砲合戦に見立てた錦絵も実に愉快だ。7歳で歌川国芳の画塾に入門、のちに狩野派に学んだ暁斎が活躍したのは、幕末から明治にかけて。政治のみならず美術界も大きく揺れた時代である。幕府が倒れるとともに狩野派は衰退、洋画の台頭により絵師たちは画境を変転させていく。そんななか暁斎は、日本のさまざまな流派の画風を吸収し、自国の筆法で近代化の時代に立ち向かったと画家の山口晃は指摘する。外国人からも人気が高く、鹿鳴館の設計で知られるジョサイア・コンドルは弟子になったほど。多才すぎて摑みどころのない絵師、その深奥に迫る。
芸術新潮編集長 吉田晃子
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