【特集】若冲 水墨ニューウェイヴ
芸術新潮 2016年5月号
(毎月25日発売)
発売日 | 2016/04/25 |
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JANコード | 4910033050568 |
定価 | 1,466円(税込) |
若冲
水墨ニューウェイヴ
◆ special features ◆────────────
ゆるい かわいい たのしい
墨一色、技ありグラフ
水墨でたどる
革新者(イノベイター)
若冲の軌跡
福士雄也 解説
一、中国絵画でモシャ修行
二、まさかの大抜擢!
金閣寺で空間デザイン
三、トレンドチェックはぬかりなく
四、空白の20年
拓版画と五百羅漢の時代
五、賛に注目!若冲コネクション
六、いくつわかる?
読み解き《果蔬涅槃図》
七、止まらない晩年
諏訪敦が挑む!
超絶技巧・筋目描き
荒井経・宇高健太郎 師匠 諏訪敦 弟子
室町水墨画なんてこわくない
奇想4人衆、龍虎くらべ
山下裕二 解説
分かりやすく、おもしろく、買いやすく、売りやすい
report 伊藤若冲の市場
藤田一人 文
若冲だけじゃないんです
かわいい
江戸の水墨画
金子信久 選+解説
若冲(超)略年譜
若冲ご近所マップ
京都町絵師今昔物語
伊野孝行 絵
展覧会案内
◆ art news ◆ ────────────────
◇exhibition◇
シャルル・フレジェ
YOKAIたちの肖像
自画像で読み直す
モリムラ流
西洋美術史
インタビュー 森村泰昌
ルノワールは
リウマチといかに闘ったのか?
文 前橋重二
栗原類が対峙する
MIYAKE ISSEY
という革命
◇review◇
原田直次郎
枝史織
原在中 「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」より
サブリナ・ホーラク
◇global news◇
Paris「ユベール・ロベール」展
London「カメラに向けたパフォーマンス」展
New York「メトブロイヤー」オープン
Conegliano「ヴィヴァリーニ:ゴシックとルネサンスのはざまの絵画の栄華」展
◆ regular features ◆ ────────────
◇巻頭◇
FLOWER
日々の花〈13〉
滝本玲子
文 市村美佳子
PHOTO
作家が覗いたレンズ〈25〉
堀本裕樹
選・文 森岡督行
GOODS & SHOP
◇短期集中連載◇
デトロイト
美術館の奇跡
DIA: A Portrait of Life
〈1〉フレッド・ウィル《妻の思い出》
二〇一三年
原田マハ
◇連載◇
リ・アルティジャーニ
ルネッサンス画家職人伝
〈3〉ボッティチェリ、リッピ工房に弟子入り1
ヤマザキマリ とり・みき
定形外郵便〈25〉
文 堀江敏幸
海外アート
Study最前線〈13〉
文 前橋重二
建物残像
メモランダム〈13〉
フェルクリンゲン製鉄所
絵・文 三宅信太郎
伊藤まさこの
小さい美術館めぐり
時々おやつ
〈12〉ベルナール・ビュフェ美術館
もう一杯だけ
呑んで帰ろう。〈25〉
文・写真 角田光代+河野丈洋
千 宗屋の
飲みたい茶碗、
点てたい茶碗〈24〉
換骨奪胎
ホンマタカシの
映像リテラシー〈17〉
(ささやかに)介入する芸術
TONY & INOCCHI
マンガ展評
ちくちく美術部〈13〉
◇PICK UP◇
movie 野崎歓
book 諏訪敦
recommend 編集部のおすすめ!
成相肇の やっかい もっかい てんらんかい〈1〉
exhibition 全国展覧会情報
次号予告
◇芸術新潮特別企画◇
東京アート
・東京―エフェメラの美と不変の美 文 鹿島茂
・アートフェア東京2016
・画廊の夜会
・アートスポット
箱根ガラスの森美術館
連載 Bonhams Monthly lot16
中国宮廷美術の精華と出会う
連載 美に魅せられて/アジア文化芸術協会〈13〉
興福寺阿修羅像
ART CAFE SPECIAL
ART CAFE
最新号PICK UP
身体で感じる若冲の凄さ
伊藤若冲がどれほどのテクニシャンかは既に自明のこと。その超絶技巧は《動植綵絵》など緻密な彩色画に明らかなわけですが、彼が生涯のこした作品のうちの大半を占めると言われる水墨画となると、高度な技量をほとんど感じさせない、ゆるくて脱力系な作品が多い、と思っていました。そこがまた若冲絵画が多くの人々に愛される理由でもあるのだと。けれど、今回の特集内で企画した筋目描きの実践取材で、そんな思い込みは吹き飛びました。
筋目描きに挑戦したのは、諏訪敦さん。普段は洋画技術を駆使してリアリズム絵画を描いているアーティストです。指南役は東京藝術大学の研究者で日本画家の荒井経さんと、日本画の保存修復の研究者で、実作者でもある宇髙健太郎さん。若冲の水墨画《鯉鯰図》の鯉の鱗の部分を、若冲の得意とした「筋目描き」と呼ばれるテクニックで模写してみました。
その詳細は本誌でお読みいただきたいのですが、紙に墨で描くというのは、当然ながら、書と同様で、やり直しがききません。事前に筋目描きに適した紙と墨を吟味しておくことが重要なのはもちろんのこと、ちょっとした水の含ませ方、筆のスピードの違いでも、筆跡(ふであと)はまったく違う表情を見せる。そんなわけで、冗談を言ったりしてにこやかだった諏訪さんも、途中からは息を詰め、眉根に皺をよせ、かなりの緊張感の中で筆を走らせることになりました。若冲の水墨画は一見シンプルなものも、分割してよく見てみると、筋目描きに限らず、様々な技がてんこ盛り。描く人の立場から見ると、その驚異的な技の数々にあらためて気づかされます。若冲恐るべし。
最後に恥ずかしながら、特集を担当した二人の編集者の筋目描きをお見せいたしましょう。たしかに筋目はある……けれど、まるで絵になっていませんね。ぜひ本誌を見て諏訪さんのものと比較してみてください。「筋目描き童貞」にもかかわらず、きちんと絵を描いている諏訪さんの高いテクニックにも、驚いていただけるはずです。
この号の誌面
編集長から
若冲の水墨画を知って
若通になろう
若冲といえば《動植綵絵》に代表されるように、極彩色のイメージが強い。だが手がけた作品の8割以上は水墨画。つまり水墨画をも知ることで、ようやく画業の全貌が見えてくるわけだ。そこには超絶技巧もあれば、静謐な襖絵、ユーモアあふれる戯画まで多種多様。描き込み具合も晩年に向かって変容するし、点描作品だってある。そういった数々の制作をとおして、若冲は独自の手法も編み出していった。たとえば墨のにじみをコントロールする“筋目描き”。誌面では、洋画家・諏訪敦氏がこの変則ワザに挑戦している。晩年ともなると、その筋目描きや墨のかすれを自在に操る若冲の技も円熟の域に達し、最高傑作のひとつ《果蔬涅槃図》が生まれた。釈迦涅槃図の要素を野菜と果物に置き換えた本作は、読み解きも面白い。
また原田マハ氏による短期集中連載「デトロイト美術館の奇跡」がスタート。市の財政破綻により存続の危機に瀕した美術館の、実話をもとにした物語。
芸術新潮編集長 吉田晃子
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
芸術新潮とは?
「暮らし」はアートであるをキャッチフレーズにあらゆる事象を「芸術」という観点から検証し、表現する「芸術新潮」。1950年に創刊され、歴史と文化を見続けてきたハイクオリティなアートマガジン。歴史的な芸術作品から、建築、古美術、現代アートまで、あらゆる「美しきもの」を独自の切り口で紹介しています。