【特集】21世紀のための源氏物語
芸術新潮 2023年12月号
(毎月25日発売)
発売日 | 2023/11/25 |
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JANコード | 4910033051237 |
定価 | 1,500円(税込) |
【特集】21世紀のための源氏物語
I はじめての源氏物語
文 大塚ひかり
- 総説 ビフォー源氏、アフター源氏
- [MAP]リアル平安京と源氏ワールド
- 一、はじめに「悲恋」があった――それは「禁断の愛」か「虐待」か
- 二、光源氏とは何者か――繰り返される不倫
- 三、しぼんでいく世界の中で「自分」を生きる――宇治十帖を中心にして
『源氏物語』超あらすじ
And More ものがたり世界を身体測定する
II 源氏絵ギャラリー
解説 佐野みどり
- 描かれた紫式部――物語作者という物語
- 最古にして最深。国宝《源氏物語絵巻》
- 源氏絵はかわいい!? 土佐派と女のミニアチュール
- 源氏絵だってスペクタクル
- あなたの図像はどこから?
- 源氏物語を描き尽くせ! 杉原盛安の野望と挫折
[コラム]マンガになった源氏物語
文 大塚ひかり
III 「紫式部」の誕生
文 三田村雅子
関連ドラマ・展覧会案内
◆ Art News architecture ◆
\重要文化財指定記念/
モダニズムの青春が刻まれた場所
レーモンド「夏の家」をたずねて
文 松隈洋
◆ Art News interview ◆
インタビュー
松尾スズキ
作品250点超の大展覧会ができるまで
◆ Art News exhibition ◆
ホンマタカシの
建築・写真・ピアノ
◆ Review ◆
- 釣光穂「陶芸の進行形」展より
- 南条嘉毅/石川真生/土井沙織
◆ Regular Features ◆
◇ 巻頭 ◇
Goods & Shop
時と光の美術館〈80〉
タサキ
絵育のススメ〈4〉
上野行一[後編]
◇ 連載 ◇
定形外郵便〈113〉
文 堀江敏幸
山下裕二の
新・今月の隠し球〈23〉
神谷 恵(上)
中野京子
名画に見る悪の系譜〈18〉最終回
殺人教唆
千住博の知となり肉となり〈5〉
平和を描くということ
幻々夢譚〈12〉
絵・文 と金
福井江太郎の
駝鳥がゆく!!〈9〉
鏡リュウジ さん
千 宗屋の飲みたい茶碗、点てたい茶碗〈107〉
◇ PICK UP ◇
movie 北村紗衣
book 諏訪 敦
recommend 編集部のおすすめ!
ぐるぐるキョロキョロ展覧会記〈41〉小田原のどか
exhibition 全国展覧会情報
2023年芸術新潮総目次
次号予告
▼芸術新潮特別企画
時と光の美術館SPECIAL〈12〉
パテック フィリップ
日本の風流を描く
小さな家のウクライナ民謡コンサート
NFTアートカレッジ〈9〉Adam by GMO
ストリート系ネコと旅するNFTアートの箱庭
イタリア×京都 伝統美が融合したバッグ
新井文月
広がる意識は光へ向かう
Xmas Art Festa 2023
特別企画展 吉左衞門X
浦上玉堂×樂直入 佐川美術館
石をやく 土をやく
樂雅臣 樂直入 展
ART CAFÉ
GALLERY'S PLAZA
最新号PICK UP
21世紀にも生きる源氏物語リアリティ
源氏物語の「若紫」には、「雀の子を犬君が逃がした」と悲しがる少女・紫の上を、光源氏が覗き見する有名な場面があります。まだ幼い紫の上は〈髪は、扇をひろげたるやうに、ゆらゆらとして、顔は、いと赤くすりなし〉、〈伏し目になりてうつぶしたるに、こぼれかかりたる髪、つやつやとめでたう見ゆ〉などと描写されるのですが、私は学生時代にこのシーンを読んだ時から、この数行になぜか無性に惹かれました。あどけない少女の、泣いてこすり赤くなった顔や、こぼれかかるつやつやの黒髪が脳裏にくっきりと思い浮かび、垣間見る光源氏になったような気持ちで思わずきゅんとしたのです。
今回、特集の準備をするなかで、源氏物語は驚くほど具体的な(ときにハラハラするほどの)身体描写に満ちているということを知りました。詳しくは本誌を読んでもらえればと思いますが、執拗なまでに登場人物の姿を描きこんだ源氏物語は、それまでの物語文学にはない圧倒的なリアリティに満ちています。帝の子である美青年・光源氏も、恋い慕う女性に逃げられてしまったり、亡くなった恋人をみて動転のあまり頭痛と発熱に倒れたりと、決して完全無欠ではありません。女性たち――紫の上も、六条御息所も、浮舟も、生きづらくままならない人生に悩み、もがき苦しみます。きらびやかな王朝文化の中で繰り広げられる恋愛物語は、等身大で切実な苦難も赤裸々に描くからこそ、成立当初も今も読者を惹きつけ続けるのでしょう。
今回は、「21世紀のための」と題した通り、紫式部というひとりの女性によって紡がれた源氏物語を、現代の視点で改めて読み解く特集です。大きく分けて3章構成となっており、源氏物語のエキスパートである御三方に登場いただきました。源氏物語の現代語訳も手掛けた古典エッセイスト・大塚ひかりさんには、「はじめての源氏物語」と題して、源氏物語の革新性について、国文学者・三田村雅子さんには、作者・紫式部の生涯や彼女を取り巻く時代情勢について、それぞれ素晴らしい論考を寄せていただきました。また、物語から生まれた源氏絵には、国宝絵巻をはじめとして優れた作品が数多くあります。源氏絵研究者・佐野みどりさんには、数多ある源氏絵の中でもポイントとなる作品を厳選して解説していただいています。54帖の長編を8ページにぎゅっとまとめた「超あらすじ」や源氏物語マンガを一挙に取り上げたコラムなど盛りだくさん。1000年以上前に描かれた源氏物語の、今なお色褪せない魅力をたっぷり感じていただければ幸いです。
この号の誌面
編集長から
更新され続ける源氏物語の読み
少し前、ある展覧会のキャプションに、源氏物語は家父長制の価値観を強く反映した作品なので、将来的にはあまり読まれなくなるかもという意味のことが書いてあって、なるほどとは思った。実際は、たとえば山崎ナオコーラ氏の『ミライの源氏物語』や奥山景布子氏の『フェミニスト紫式部の生活と意見』のような本が続々と登場。読み自体をアップデートすることが可能で、かつそれが面白いというようなあり方をしているのが源氏物語なので、たぶん簡単にお蔵入りはしないだろう。
〈I はじめての源氏物語〉をご執筆下さった古典エッセイスト・大塚ひかり氏もまたそうした読みの更新を続けてきた一人。〈II 源氏絵ギャラリー〉はやまと絵研究の第一人者・佐野みどり氏による、〈III 「紫式部」の誕生〉は源氏受容史の解明に大きな一石を投じた『記憶の中の源氏物語』の三田村雅子氏による解説だ。特集タイトルは「21世紀のための源氏物語」。抜群に面白い入門編になった。
芸術新潮編集長 高山れおな
これだけは見ておきたい2024年美術展 Best25 and More !「芸術新潮 2024年1月増刊号」
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雑誌から生まれた本
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「暮らし」はアートであるをキャッチフレーズにあらゆる事象を「芸術」という観点から検証し、表現する「芸術新潮」。1950年に創刊され、歴史と文化を見続けてきたハイクオリティなアートマガジン。歴史的な芸術作品から、建築、古美術、現代アートまで、あらゆる「美しきもの」を独自の切り口で紹介しています。