新潮社

吉本ばなな『キッチン』刊行30周年 『キッチン』と私 思い出・エピソード大募集

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う──

あなたと『キッチン』をめぐる物語をお寄せください。
吉本ばななは、皮膚やかたちではなく、
はじめから人のこころを見ているような気がする。
糸井重里
あんなに澄んだ小説は、あとにも先にも出会ったことがない。
出てくる人みんな、一生懸命生きていて、こちらまで照らされる。
綿矢りさ
ただ生きている。
それだけの事を、こんなにも褒めてくれるのは、
この物語だけだと思う。
木村文乃

ずうっと食べたかったホットケーキと苦手なのにかっこつけで頼んだあたたかいコーヒー。そして、よしもとばななさんのキッチン。
いちばんだいすきなロイヤルホストでゆったりと読みました。
こんな気持ちはじめて!
自分の気持ちがよくわからなくて、うーーはなんだろうってなったけど、すっごく好きな気持ち!
帰り道は長いから、キッチンの最初の文章を覚えながら歩きました。
ずうっと246沿いだったから声に出して。
声に出すと気持ちが良い文章だった!
歌うように楽しい気持ちで覚えられました。ほんとうに楽しい言葉たちです!
今でも覚えています。
むかむかしたとき、どうしようもないとき、たのしいとき、なんとなくなとき、いつだってキッチンと会えるからうれしいな!
だいすきです!

暗い話なのに、なんで読んだあとは目の前が明るく感じるんだろう。
中学一年生のとき、初めて手に取って夢中で読んだ文庫本は、何度も引っ越して、結婚して家族が増えても、いつも手元にあります。
どうして私の気持ちが書かれているのかと思って読んだり、辛い状況のときには本から力をもらったり、もはや本自体がお守りのようです。
いつか、ばななさんにこの文庫本にサインをもらうのが夢です。夢が叶ったらヘナヘナと体から力が抜けてしまいそうだから、叶わない方がいいのかなと思うほどです(笑)
いつも変わらぬ力を与えてくれてありがとうございます。

neco777

初めて読んだばななさんの小説でした。気持ちを分かってくれる人がここにいると思ったものです。キッチンに布団をひきずっていって眠るみかげ。私も同じようなことをしていました。14歳くらいだったのではないだろうか。
人生で悲しいことが回ってくる確率は変わらない。だから、他のことは思いっきり明るくするしかない。というえりこさんの独白だったかしら、本当にそうだと、幼い私は思っていました。一丁前に人生を分かったつもりでいました。
こちらを読んでから、十代のころ、貪るようにばななさんの本を読みました。成人してからは、あまり本を読むことがなくなり、国外に住む今では日本語の本を手に入れる事も難しくなりました。娘、仕事、家事、資格の勉強と追われるような毎日。時間と機会を作るのは簡単じゃないけど、ばななさんの本がまた読みたいなぁ。

Az

初めて手にしたのは中学校の図書室で。自分って何?他人って必要?そんな自身や周囲との距離感をはかりかねている思春期真っ只中でした。
『キッチン』は悩める私のぐるぐると拗れた感情を驚くほど柔らかな言葉でシンプルに解きほぐし、等身大でいることの心地好さと勇気を与えてくれました。
そしてすっかり大人と呼ばれる年齢の今。私の本棚に並ぶこの本は、いつもの毎日をいつも通りに営む幸せに気付かせてくれる大切な一冊となっています。

映日紅

水面に落ちるしずくを感じた、14歳の頃の自分を今でも鮮やかに思い出す。
光と影。静と動。
読むのがとても痛いのに、
けど続きが読みたくて。
でも読み終わるのが勿体無くて。
この物語の中に居る時間がとても好きだった。

ちい

初めて読んだのは30代。この歳になって読んだのは必然だったと思う。「愛すら全てを救ってはくれない」からこそ、かけがえのない日々を丁寧に生きていこう。そう思える私になれていました。そんな私になれていることに、気づかせてくれました。心に小さくてあたたかい灯りをともしてくれた小説です。

ねえこ

この世には耐え切れないくらいの悲しさや苦しさ、大好きな人との別れがある。
これは予期していても実際に現実になると予期していた以上の悲しさと苦しさをもたらす。
けれどもいつか
いつかそれを乗り越えるための勇気や優しさや人との繋がりがこの世にはあるということを教えてくれた本。

こずえ

カバーが取れ、むき出しになってしまった文庫本。
そんな状態になるまで、カバンに入れて持ち歩き、心を落ち着かせるために、色々な場所で何度も何度も読みました。
本の中の人たちの言葉、風景、季節、食べ物。
カラーでイメージが浮かび、温度や、匂いまで感じられる。
淡々とした空気感があり、読むと安心し、また、安心したくて好きな部分を繰り返し、繰り返し目で追ったり。
心底疲れ果てた時、必ずと言っていいほど読み返したくなるキッチン。
そんな心を支えてくれる優しい物語は、私にとって安定剤のような癒しの本です。

篤美

やっぱり大人になっても、悩んでいます。初めてキッチンを読んだ15歳の頃と同じように。成長していないんじゃないかと、笑っちゃうくらいに、変わらない。だからこそ、本棚の下段にいるあの黄色い背表紙を手に取り、哀しみと温かさを感じるとほっとするんです。私はずっと私で、みかげちゃんたも、雄一くんも、えり子さんも、みんなそう。それでいいんだぜー、って語りかけてくれる。キッチンの世界は、いつ、どんな時に触れても、悲しいけれど、泣きたくなるくらいあったかい、そして強い。キッチン、ありがとうね。私は、これからも、たまにあなたを思い出し、引っ張りだして、自分の生活を歩いていこうと思います。どうぞ、よろしくね。

aik

母が亡くなってから7年。
その一連の出来事から、本当に悲しいとき家族では支え合えないんだと知りました。みんなそれぞれ同じように悲しいから
絶望から知らず知らず引き上げてくれるのは、光を見せてくれるのは、むしろ他人。私にとって「キッチン」はそういう存在です。登場人物とまったく同じ体験をしているわけではないのに、読んでいると安心して、じんわりとあたたかい涙が出てきて、みかげや雄一の気持ちの温度と自分のまわりの空気がつながっていく。悲しみやさびしさは過ぎ去ってくれないけれど、うん、私もだよ、とずっと手をにぎってくれている物語があって、よかった。

ヒミコ

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