新潮社

吉本ばなな『キッチン』刊行30周年 『キッチン』と私 思い出・エピソード大募集

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う──

あなたと『キッチン』をめぐる物語をお寄せください。
吉本ばななは、皮膚やかたちではなく、
はじめから人のこころを見ているような気がする。
糸井重里
あんなに澄んだ小説は、あとにも先にも出会ったことがない。
出てくる人みんな、一生懸命生きていて、こちらまで照らされる。
綿矢りさ
ただ生きている。
それだけの事を、こんなにも褒めてくれるのは、
この物語だけだと思う。
木村文乃

吸い寄せられたのかもしれません。いままで気に留めなかった母親の本棚にあったこの本を、中学生の頃にふと手に取りました。10年ほど前でしょうか。
何不自由無く生活をさせてもらっていましたが、だからこそ多感な時期に家の外で受ける刺激に、私は潰されそうになっていました。
自分の存在への疑問というのでしょうか、思春期には多くの方が通るであろう問いに私も悩まされていたとき、この本に出会い、心が暖かく溶かされたような気持ちになりました。
この物語がいつまでも色褪せないというのは、人間の根幹も今も昔も変わらずみな同じように悩み、何かをきっかけに解き放たれているという証明であるのかなと思います。これからも、温かく柔らかい道標となりますように。

ヒロ

『神様、どうか行きていけますように』
とても大好きだった人ともう会わないとなった時に、この一文が思い浮かべました。彼もわたしも、行きていけますように、と全然相手にされてなかったのに、なんだかとってもそう祈りました。
あと、社会人になりたての頃、お話に出てくるカツ丼を想って、外ごはんの時はカツ丼ばっかり頼んでいました。味や香りがしてきてしまう、大好きなカツ丼です。わたしもカツ丼と一緒に希望とかそういうピカピカしたものを一緒に食べていたのかもしれません。

沙衣

『キッチン』を読むと世の中にはこんな気持ちがわかってよかったということを思いながら、涙がどんどん流れていた。

わか

私とキッチンが出会ったのは、高校2年の夏の終わり頃です。その頃私は恋人との気持ちの入れ違いでひどく傷心的になっていました。私は落ち込むといつも祖父母の家のキッチンで、立ったまま祖母の作ってくれたご飯を食べます。まだ一緒に住んでいた幼い頃、泣き虫だった頃に戻っても許される気がして、幼い頃と同じ様に行動します。キッチンは私に懐かしさを感じさせ、人の温かみを教えてくれました。ばななさん、本当にありがとうございました。

母から受け継いだ唯一の本です。
温かく懐かしい香りがする素敵な宝物になっています。

がっきー

嵐の夜に、ずっとずっと読みたかった『キッチン』をやっと読むことができました。
こんなに透明な本に出会ったのは生まれて初めてで夢中になってページをめくりました。言葉の一つ一つが冬の夜のようにきりりと凛とした冷たさがあって、でもそれすら包み込んでしまうようなあたたかさがあって、つらいとき、さびしいとき、きっと私は何回もこの本に帰ってくるんだろうなって思います。

てんてん

ユー ライク キッチン!!
2000年ロンドンの学生寮のキッチンで、友人以上恋人未満の日本人の彼と毎週末のように炊飯器でなくお鍋でご飯を炊きながら、お喋りしたり鼻唄なんかを歌っていると決まっていつもそれを見たイギリス人のエマに、あなたたちは吉本ばななのキッチンみたいと言われた。その時はまだ「キッチン」を読んでいなくてピンとこなかったけど今はわかる。無邪気な私たちはそこでしっかり繋がっていたこと。なんてことない毎日がどれもこれもキラキラしていた宝物だった事を。キッチンを読み返すとあの頃のかけがえのない時を思い出してキュンとします。

あの頃、ペントンライズで

10代後半、いつも居場所を探しているような時間を過ごすなかで、吉本ばななさんの作品はいつもわたしのとなりにありました。
そのなかでも、幾度となく読み返したキッチン。
学生の自分とは、かけ離れた世界での出来事のはずなのに、読むと、心に水が沁みわたるような安心感がありました。
あれから随分時が流れましたが、キッチンは私にとって、今でも大切な一冊です。

みかん

正直、話の内容は全くといっていいほどおぼえていません。
けど、すごく本の中に引き込まれたということは覚えています。
私は国語も苦手で、本なんか読みたくないと思っていたんですが、中学生の頃に母に進められてよんだキッチン。
本って面白いんだと初めて知った一冊でした。
その後、よしもとばななさんの本を買い漁って読みました。そのなかでも、私は、キッチンとTUGUMIが好きです。

今では読書好き

大学の初めての期末試験中、高田馬場の芳林堂で平積みになっていた「キッチン」を立ち読みして、ぼろぼろ涙が出て止まらなくなってしまったのを覚えています。「キッチン」だけでなく「ムーンライト・シャドウ」が好きで、同じ意見の人にそれから何人も出会い、友達になりました。
その後、文庫本で購入した「キッチン」はいまも手元に置いてあります。
当時は生きづらく何年も死とぎりぎりの所にいて、折に触れて読み返した「キッチン」が、生きる杖になった夜もありました。
年を取って図々しくなったのか、今はもう死のうと思うこともなく、こうして生きていられることに感謝しています。同時代にばななさんの作品を読めてよかった。ありがとうございます。

crispa

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