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[角田光代『私のなかの彼女』刊行記念特集]

波 2013年12月号

(毎月27日発売)

105円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2013/11/27

発売日 2013/11/27
JANコード 4910068231239
定価 105円(税込)

[角田光代『私のなかの彼女』刊行記念特集]
中島京子/物語は傷つけ、そして救う
中村文則/シンプルな図式化を許さない圧倒的なリアル

井上ひさし こまつ座『井上ひさし「せりふ」集』
小田島雄志/井上ひさしの「せりふ」の力

石井光太『蛍の森』
石井光太/最大級の狂気の歴史

竹邑 類『呵呵大将―我が友、三島由紀夫―』
水谷八重子/唖唖青春

【『動物園の王子』刊行記念インタビュー】
中沢けい/『動物園の王子』と『楽隊のうさぎ』

ジョン・バンヴィル『いにしえの光』(新潮クレスト・ブックス)
川本三郎/思い出を生き直す

神永 学『クロノス―天命探偵 Next Gear―』
三浦天紗子/ギアを上げて疾走する痛快アクション

宇月原晴明『かがやく月の宮』
宇月原晴明/喪失を荘厳する

古谷田奈月『星の民のクリスマス』(第二十五回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作)
石井千湖/本が閉じているとき、その中では

冴崎 伸『忘れ村のイェンと深海の犬』(第二十五回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作)
大森 望/史上初、王道ファンタジーの受賞作

野口 卓『闇の黒猫―北町奉行所朽木組―』(新潮文庫)
田口幹人/時代小説の新たなる旗手

津野海太郎『花森安治伝―日本の暮しをかえた男―』
黒川 創/原発には「商品テスト」ができるのか?

チャック・ノリス『チャック全開! チャック・ノリス「最強」伝説』
チャック・ノリス特別取材班/玉ねぎを泣かせる男

西原理恵子『いいとこ取り! 熟年交際のススメ』
勝間和代/自立した女だからこそ、熟年交際を楽しめる!!

NHK ETV特集取材班『原発メルトダウンへの道―原子力政策研究会100時間の証言―』
松丸慶太/「原子力ムラ」の重鎮が開いていた「原子力反省会」

小澤典代『一緒に暮らす布』
引田かおり/こんなに幸せな気持ちになれる

木村藤子『すべての縁を良縁に変える51の「気づき」』
新潮社出版企画部/良縁の育て方、教えます

鶴見太郎『座談の思想』(新潮選書)
鶴見太郎/“型”より“動き”を

與那覇 潤『史論の復権』(新潮新書)
與那覇 潤/人間力より「変わる力」を

[山本周五郎と私]
和田 竜/しみじみと「物語」が胸に沁み込む

コラム
とんぼの本をよむ
三橋曉の海外エンタ三つ巴

第1回新潮ミステリー大賞作品募集

連載
【短期集中連載エッセイ】海堂 尊/スチャラカ三都物語 第5回
堀本裕樹、穂村 弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第4回
嵐山光三郎/芭蕉という修羅 第9回
斎藤明美/高峰秀子の言葉 最終回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第45回
池上 彰/超訳 日本国憲法 第9回
石原千秋/漱石と日本の近代 第6回
吉田篤弘/ソラシド 第17回
久間十義/デス・エンジェル 第5回
鹿島田真希/少女のための秘密の聖書 第15回
藤野千夜/D菩薩峠漫研夏合宿 第3回
高橋秀実/とかなんとか言語学 第24回
津村節子/時のなごり 第27回

編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から

編集長から

◇今月の表紙の筆蹟は、角田光代さんです。新作『私のなかの彼女』の主人公・本田和歌は、大学の文学部を卒業して出版社に就職し、人気イラストレーターの恋人と当たり前の家庭を築くことを願う女性です。そんな彼女の人生を一変させたのは、帰省して実家の土蔵を整理している時に見つけた「箱」の中身でした。木箱、段ボール箱、菓子箱などが雑多に積まれた蔵の中で、和歌はまるで呼ばれたようにある硯箱の蓋を開けます。そこには彼女の祖母が書き残した一冊の小説本が入っていました。異様な官能を帯びたその小説を読むうちに和歌の心中で次第に祖母に対する興味が昂じ、やがてそれは自分で祖母の人生のストーリーを紡ぎたいという思いに帰着して、新たな道へと踏み出します。表紙の写真はその土蔵の光景をイメージして撮影しました。
◇新刊案内の欄でもご紹介していますが、今年の島清恋愛文学賞は、いずれも小社刊の林真理子さん『アスクレピオスの愛人』、千早茜さん『あとかた』の二作が受賞しました。この賞は作家・島田清次郎の名を冠した日本で唯一の恋愛小説を対象にした文学賞ですが、このほど精神科医の風野春樹氏が清次郎の評伝『島田清次郎 誰にも愛されなかった男』(本の雑誌社)を上梓しました。大正年間の大ベストセラー『地上』で世に出ながら度を越した自分本位の行動で周囲に厭われ、やがて海軍少将令嬢を誘拐監禁するという事件を起こし、「狂人」として三一歳で夭逝した清次郎。彼の伝記といえば杉森久英氏の直木賞受賞作『天才と狂人の間』が有名ですが、風野氏は精神科医の冷静な双眸であまり伝えられていない、発狂と扱われ精神病院に入った後の清次郎の行動を見つめていきます。そして入院後も再起を信じて創作を続けた清次郎は決して狂死したのではない、と結論づけます。「新潮」十二月号の随筆で風野氏は「まばゆいばかりの熱さと愚かさと若さを、清次郎は放っていた」と記していますが、定説の中に埋もれそうな作家の人間像を見直した瑞々しさを感じる作品です。

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。