川端康成文学賞
主催・公益財団法人 川端康成記念会 後援・株式会社 新潮社 発表誌:「新潮」
第45回 川端康成文学賞 受賞作品
マジックミラー
文学ムック『ことばと』vol.1
受賞作は2021年5月7日発売の「新潮」6月号に掲載します。
千葉雅也さんのスピーチ
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受賞のことば
松山さんという色黒でガッチリしたゴルファーがマスターズというゴルフの世界大会で優勝した瞬間、朝、僕は老夫婦が営む喫茶店のテレビで喝采を聞いた。僕はスポーツの試合というもの全般に興味がないが、今回の件はすごい達成らしく、まったく興味がないのに気持ちが高揚して、今日はいいことがあるかもしれない、いや、だが他人にあやかっていいことがあるかもなどと思うと運は逃げていくぞ……と心配にもなって、それからゴルフのことは忘れていた。午後、担当編集者から電話があり、川端賞に決まったとの報を受け、初めて挑戦した短篇なのにとびっくり仰天し、声がうわずらないよう気をつけながら話していて、「そういえば今朝ゴルフの」と言いかけたが、なんだか恥ずかしくなって言葉をこらえた。知らない人が知らないことでいいことがあって、僕にもいいことがあった。なんていい日なんだろうと思った。
〔千葉雅也氏略歴〕
1978年、栃木県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コース博士課程修了。博士(学術)。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。2019年、『デッドライン』で野間文芸新人賞受賞。他の著書に『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』『勉強の哲学――来たるべきバカのために』『意味がない無意味』『アメリカ紀行』などがある。
選考委員
過去の受賞作品
- 私の批評
- 反対方向行き
- 旅のない