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アレス―天命探偵 Next Gear―

神永学/著

1,320円(税込)

発売日:2015/11/27

  • 書籍

死の連鎖を止めるのは熱血か冷徹か。全ての予想を裏切るシリーズ最強ライバル登場!

二人の男が凶弾に倒れた――クロノスシステムが予見する死を阻止すべく駆けつけた次世代犯罪情報室メンバーの前に、最強の男と女が現れた。やがて浮上する秘密組織と恐怖のテロ計画。奴らの真の目的は何か? 謎が謎をよぶスリリングな逆転劇、累計80万部突破のハイスピードアクション最新刊。

目次
第一章 FALL
第二章 SOOTH
第三章 TRAP
第四章 ARES
その後

書誌情報

読み仮名 アレステンメイタンテイネクストギア
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 336ページ
ISBN 978-4-10-306606-4
C-CODE 0093
ジャンル ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
定価 1,320円

書評

ど派手なアクション劇と普遍的な命の問い

三浦天紗子

 未来に起こる殺人を、100%の的中率で予見するクロノスシステム。その特殊な装置を保持し、誰かが死する運命を回避すべく奔走する精鋭揃いのチーム「警察庁警備局公安課次世代犯罪情報室」、略して次世代犯罪情報室の面々が、2年ぶりに帰ってきた!
 危険をも顧みず一途な正義感で突き進む真田省吾。チームのまとめ役であり、父親のように部下を見守る山縣。探偵時代からの真田の同僚で、鼻っ柱の強い美貌の池田公香。クロノスシステムの管理運用を担う研究者・東雲塔子。元警視庁SATで超一級の狙撃手だった鳥居。そして、予知夢を可視化するクロノスシステムとつながれて眠り続ける中西志乃。
 前作『クロノス』からチームに加入した、冷静沈着な頭脳派・黒野武人のシャープな読みに助けられて、次世代犯罪情報室のメンバーは、予知されたいくつもの殺人計画と対峙しながら、その先にあった前代未聞の企み――アメリカ大使を拉致――を潰すことができた。その貢献により、任務達成に大きな期待が寄せられるようになった彼らは、続編『アレス』でも、のっけから、死ぬ運命にある人を救うために、せめて最悪の事態を免れるために、奮闘することになる。
 まず予見されたのは、ふたりの男がバーと思しき場所で凶弾に倒れる様子。黒野の分析によって現場を特定し、真田と黒野はタンデムバイクで、公香と山縣は車で、それぞれ品川駅近くのホテルのバーへと向かう。ほどなく、クロノスシステムのモニタリングルームに映し出された最新予知夢は、真田たちの身に危険が迫っていることを示す映像だった……。
 前作同様、冒頭の出来事は、背後でうごめくさらなる事件の序章に過ぎない。本作では、次世代犯罪情報室の上位組織「内閣情報調査室」内に組織された特別編成チーム「STU」が、世界を揺るがすシナリオの可能性をつかんでいた。中東の過激派組織が日本国内で、日、米、英の外相会談を標的としたVXガスによるテロ計画を進めているらしい。その過激派組織と関わる秘密結社「愛国者」の影も見え隠れする。次世代犯罪情報室は、STUから、テロを未然に防ぐために協力を要請されるのだ。
 だが、本作が面白いのは、真田たちが単にテロを阻止するために動けばいいという単純な図式にはなっていないからだ。次世代犯罪情報室と手を組むことになったSTUだが、参事官の永倉にしても、エージェントの蓮見リカにしても、心の奥を覗かせないようなところがあり、信用しきれない。愛国者のメンバーと目されている白髪の男は、超人的な戦闘能力の持ち主で、黒野が北朝鮮の工作員として活動していたころのコードネームを知っているほど国家の裏権力に通じている。だが、どうやら愛国者と目的を一にしているわけではないらしい。敵の敵は味方とは限らず、味方がいつ真の目的のために牙をむくかわからない。
 しかも、新たに登場してきたリカや白髪の男は、実は真田や黒野と似た思いを抱えていることが徐々に浮かび上がってくる。自分を必要としてくれる居場所を探し求めてきた孤独感。自分なりの正義をまっとうしようという信念。運命によって、いわばネガとポジの関係に置かれてしまった彼らだからこそ、憎みきれない気持ちも湧いてくる。
 そんな綱渡りの状況下で、着々と進行しているテロ計画を止めなければならない神経戦&肉弾戦の緊迫感! 本作でのアクションは、まさに死闘だ。現場に赴く真田たちは何度も九死に一生を得る事態に陥る。無人航空機イーグルアイや肩撃ち式のロケット発射機ロケットランチャーなど強力な殺傷兵器も投入され、脈拍があがること間違いなし。
 だが、そんなど派手なストーリーを支えるのは、実はオーソドックスな哲学だ。真田は、たとえ犯罪を犯そうとしている人間に対しても引き金を引くことができない。その迷いで自分はおろか、仲間をも絶体絶命のピンチに追いやることもあるのだが、真田自身の心の声が、ときに志乃の声が聞こえてきて、決断できずにいる。多くの命を守るためには、犠牲となる命があってもしかたないのか。命の重さに優劣はあるのか。そんな普遍的な命題を、この物語は問いかけ続ける。
 ラストには、次に続く伏線も用意されている。真田たちがきょうもしっかり活動してくれているのだろうなと思いつつ、次回作を楽しみに待ちたい。

(みうら・あさこ ライター、ブックカウンセラー)
波 2015年12月号より

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著者プロフィール

神永学

カミナガ・マナブ

1974(昭和49)年、山梨県生れ。日本映画学校(現日本映画大学)卒。自費出版した「赤い隻眼」が編集者の目に留まり、大幅に改稿の上、2004(平成16)年『心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている』として刊行され作家デビュー。「心霊探偵八雲」シリーズとして人気を集める。小説の他、舞台脚本の執筆なども手がけている。他の著作に、「怪盗探偵山猫」「天命探偵」「確率捜査官 御子柴岳人」「革命のリベリオン」「浮雲心霊奇譚」「悪魔と呼ばれた男」の各シリーズ、『コンダクター』『イノセントブルー 記憶の旅人』『ガラスの城壁』などがある。

神永学 オフィシャルサイト (外部リンク)

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