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今月の表紙の筆蹟は池澤夏樹さん。
池澤夏樹『砂浜に坐り込んだ船』

波 2015年12月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2015/11/27

発売日 2015/11/27
JANコード 4910068231253
定価 102円(税込)


[玉岡かおる『天平の女帝 孝謙称徳』刊行記念対談]
玉岡かおる(作家)×北河原公敬(東大寺長老)/偉大な女帝の名誉回復を!

池澤夏樹『砂浜に坐り込んだ船』
江國香織/物語の(あるいは知識の)靴

姫野カオルコ『謎の毒親』
千野帽子/親の呪いが解けるまでを描く「魂の冒険=探偵小説」

原田宗典『メメント・モリ』
高山文彦/死は勝利したか

神永 学『アレス―天命探偵 Next Gear―』
三浦天紗子/ど派手なアクション劇と普遍的な命の問い

イアン・マキューアン『未成年』(新潮クレスト・ブックス)
松浦寿輝/崇高と卑俗

ミハイル・ブルガーコフ『犬の心臓・運命の卵』
戸田裕之/「原稿は燃えない」と証明した、この数奇な作家

[『不明解日本語辞典』刊行記念特集 インタビュー]
高橋秀実/言葉の海で溺れて来ました

山田康弘『つくられた縄文時代―日本文化の原像を探る―』
山田康弘/「縄文」とは、つくられた歴史概念であった

西條奈加『大川契り―善人長屋―』
細谷正充/善人面した悪党たちの、痛快エンターテインメント

遠藤彩見『キッチン・ブルー』
倉本さおり/食べることの輪が生み出す孤独

長谷川康夫『つかこうへい正伝 1968-1982』
岡野宏文/つかこうへいとその作品の突出した魅力

片山杜秀『見果てぬ日本―司馬遼太郎・小津安二郎・小松左京の挑戦―』
先崎彰容/日本人が生きる時間とは

竹田武史『桃源郷の記―中国バーシャ村の人々との10年―』
安田菜津紀/十年の時を刻んだ家族写真

佐藤健太郎『国道者』
高橋良和/道から紡ぎだされる物語

磯部成文・三宅秀道『なんにもないから知恵が出る―驚異の下町企業フットマーク社の挑戦―』
新 雅史/「あたりまえ」を作りだす方法論

古田英明『ヘッドハンターだけが知っている プロ経営者の仕事術』
冨山和彦/カリスマヘッドハンターが教えるリーダーの心構え

内田春菊『おやこレシピ』
内田春菊/『おやこレシピ』について自分で解説&おすすめ

大塚ひかり『本当はエロかった昔の日本―古典文学で知る性愛あふれる日本人―』
江川達也/ギリシャのエロスと日本の古典
[追悼・佐木隆三さん]
校條 剛/あの熱き日々

佐藤秀明編『三島由紀夫の言葉 人間の性』
佐藤秀明/三島由紀夫の愉しみ方

[吉村昭『吉村昭 昭和の戦争6 終戦の後も』 吉村昭を読む]
川本三郎/敗者としての戦犯を描く

【コラム】
サン=テグジュペリ、河野万里子/訳『星の王子さま』
原 幹恵/映画になった新潮文庫

三橋曉の海外エンタ三つ巴

とんぼの本編集室だより

【連載】
荒山 徹/歴史の極意・小説の奥儀 第9回
橘 玲/残酷すぎる真実 第10回
津村記久子/やりなおし世界文学 第19回
大竹 聡/酔いどれ紀行 第3回
森まゆみ/子規の音 第23回
A・A・ミルン作、阿川佐和子訳/ウィニー・ザ・プーと魔法の冒険 第9回
石原千秋/漱石と日本の近代 第30回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第69回
末盛千枝子/父と母の娘 最終回
堀本裕樹、穂村弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第28回
木皿 泉/カゲロボ日記 第20回
津村節子/時のなごり 第51回

編集室だより  新潮社の新刊案内  編集長から  カット 水上多摩江

編集長から

今月の表紙の筆蹟は池澤夏樹さん

◇今月の表紙の筆蹟は、池澤夏樹さんです。 新刊『砂浜に坐り込んだ船』には、揮毫していただいた言葉「イスファハーンは世界の半分」が一度ならず使われています。まったくの蛇足ながら、イスファハーンとはかつてイランの首都として栄えた都市で、その美しさは真珠にも喩えられました。洋の東西の交易の要衝地として「世界の半分」と称されるほどの繁栄を極めた街。今作は江國香織さんの評にもあるように、登場人物が「あらゆる境界をゆうゆうと超えて」異国、夢境、幻想、さらには冥界とも往還しながら運命的な出会いや別れを語り、現実からの浮遊感を堪能できる作品集ですが、その中でイスファハーンは物語の転換地として登場します。写真は池澤さんから、街の中心にある十七世紀の名建築アリカプ宮殿の壁画をご提供いただきました。
◇中一弥さんがご逝去されました。一〇四歳まで挿画、装画を描き続けられたその偉大な業績については改めて申し上げるまでもありませんが、弊社では何と言っても池波正太郎さんの「剣客商売」シリーズ全巻を彩る絵が、まさに不朽の名品として今も息づいています。淡々とした筆遣いながら登場人物たちの哀歓、物語の興趣、そして時代の空気までもが醸し出され、作品の味わいを一段と深めていただきました。不世出のという表現を用いても過言ではないであろう職人絵師のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
黒川創さんの『京都』が第六十九回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)を受賞しました。自らが生まれ育った古都の歴史と風土を背景に、市井の人びとの人生の転変を愛おしむように細やかな筆致で綴った心に沁みる連作小説集です。
◇末盛千枝子さん『父と母の娘』は今月で連載を終了して来春、単行本として刊行の予定です。ご愛読いただき、有難うございました。次号からは西洋歴史小説の雄、佐藤賢一さんが長年の構想を経て西郷隆盛に挑む意欲作『遺訓』が始まります。どうぞお楽しみに!

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。