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「すべてがゆがんで見えている」子どもたちの驚くべき実像。

ケーキの切れない非行少年たち

宮口幸治/著

792円(税込)

本の仕様

発売日:2019/07/13

読み仮名 ケーキノキレナイヒコウショウネンタチ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 182ページ
ISBN 978-4-10-610820-4
C-CODE 0236
整理番号 820
ジャンル 政治・社会
定価 792円
電子書籍 価格 792円
電子書籍 配信開始日 2019/07/26

児童精神科医である筆者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。

著者プロフィール

宮口幸治 ミヤグチ・コウジ

立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「コグトレ研究会」を主宰。医学博士、臨床心理士。

目次

はじめに
第1章 「反省以前」の子どもたち
「凶暴で手に負えない少年」の真実/世の中のすべてが歪んで見えている?/面接と検査から浮かび上がってきた実態/学校で気づかれない子どもたち/褒める教育だけでは問題は解決しない/1日5分で日本が変わる
第2章 「僕はやさしい人間です」と答える殺人少年
ケーキを切れない非行少年たち/計算ができず、漢字も読めない/計画が立てられない、見通しがもてない/そもそも反省ができず、葛藤すらもてない/自分はやさしいと言う殺人少年/人を殺してみたい気持ちが消えない少年/幼児ばかり狙う性非行少年
第3章 非行少年に共通する特徴
非行少年に共通する特徴5点セット+1/【認知機能の弱さ】見たり聞いたり想像する力が弱い/「不真面目な生徒」「やる気がない生徒」の背景にあるもの/想像力が弱ければ努力できない/悪いことをしても反省できない/【感情統制の弱さ】感情を統制できないと認知機能も働かない/ストレス発散のために性非行/“怒り”の背景を知らねばならない/“怒り”は冷静な思考を止める/感情は多くの行動の動機づけである/【融通の利かなさ】頭が硬いとどうなるのか?/BADS(遂行機能障害症候群の行動評価)/学校にも多い「融通の利かない子」/融通の利かなさが被害感につながる/【不適切な自己評価】自分のことを知らないとどうなるのか?/なぜ自己評価が不適切になるのか?/【対人スキルの乏しさ】対人スキルが弱いとどうなるのか?/嫌われないために非行に走る?/性の問題行動につながることも/【身体的不器用さ】身体が不器用だったらどうなるのか?/不器用さは周りにバレる/身体的不器用さの特徴と背景
第4章 気づかれない子どもたち
子どもたちが発しているサイン/サインの「出し始め」は小学2年生から/保護者にも気づかれない/社会でも気づかれない/「クラスの下から5人」の子どもたち/病名のつかない子どもたち/非行化も懸念される子どもたち/気づかれないから警察に逮捕される
第5章 忘れられた人々
どうしてそんなことをするのか理解不能な人々/かつての「軽度知的障害」は人口の14%いた?/大人になると忘れられてしまう厄介な人々/健常人と見分けがつきにくい/「軽度」という誤解/虐待も知的なハンディが原因の場合も/本来は保護しなければならない障害者が犯罪者に/刑務所にかなりの割合でいる忘れられた人々/少年院にもいた「忘れられた少年たち」/被害者が被害者を生む
第6章 褒める教育だけでは問題は解決しない
褒める教育で本当に改善するのか?/「この子は自尊感情が低い」という紋切り型フレーズ/教科教育以外はないがしろにされている/全ての学習の基礎となる認知機能への支援を/医療・心理分野からは救えないもの/知能検査だけではなぜダメなのか?/「知的には問題ない」が新たな障害を生む/ソーシャルスキルが身につかない訳/司法分野にないもの/欧米の受け売りでは通用しない
第7章 ではどうすれば? 1日5分で日本を変える
非行少年から学ぶ子どもの教育/共通するのは「自己への気づき」と「自己評価の向上」/やる気のない非行少年たちが劇的に変わった瞬間/子どもへの社会面、学習面、身体面の三支援/認知機能に着目した新しい治療教育/学習の土台にある認知機能をターゲットにせよ/新しいブレーキをつける方法/子どもの心を傷つけないトレーニング/朝の会の1日5分でできる/お金をかけないでもできる/脳機能と犯罪との関係/性犯罪者を治すための認知機能トレーニング/被虐待児童の治療にも/犯罪者を納税者に
おわりに

担当編集者のひとこと

困っている子どもたちを救うには

 まずは、オビのイラストをご覧ください。これは、精神科医である著者が医療少年院に勤めていた時、「ケーキを三等分する」という課題に対して在院中の少年が出した答えの例です。医療少年院に在院している少年ですから、だいたい10代の中盤から後半くらいの年齢の少年ですが、彼らには、ホールケーキを120度で切って三等分する、という発想が身についていないのです。
 それだけでも問題ですが、さらに驚くべきは、これを描いた少年たちが、殺人や強姦致傷などの凶悪な犯罪を起こしている、という事実です。

 通常、犯罪を繰り返すような少年たちには、更生の過程において、「認知のゆがみ」をただすための認知行動療法が施されます。かつては著者も、それを試みていました。しかし、はかばかしい結果が得られませんでした。なぜかと言えば、こうした少年たちは、そもそもの認知機能に問題があったからです。

 では「認知機能に問題がある子ども」とはどういう子か。それは、発達障害や知的障害をもつ子どもたちですが、実際に非行の現場で困っている子ども達の多くが、その当事者なのです。

 現在、知的障害はおよそIQ70未満の人をさす、ということになっていて、人口の2%程度とされています。しかし、1950年代には、知的障害はIQ85未満とされていました。「それではあまりに多すぎる」ということで今の基準になったわけですが、もしIQ70~84の人を「軽度知的障害」と考えれば、この層はなんと人口の14%程度はいる、という計算になります。つまり、小学校の35人クラスで考えれば、5人くらいはその範疇の生徒がいる可能性がある、ということになります。

 現在、この範疇の子ども達は「知的には問題ない」ということになってしまい、「ちょっと勉強が遅れている子」「ちょっと社会性に問題がある子」という程度で放置されてしまいがちです。しかし、この層の子ども達の多くが、問題に気づかれないまま放置されることで、社会のセイフティネットから落ちこぼれてしまっている、というのが著者の見立てです。これは、日本社会にとって、とてつもない損失になっているのではないか、と。

 そこで著者は、矯正施設だけでなく学校施設でも使えるような、認知機能の向上プログラム「コグトレ」を開発しました。これによって、発達障害や「軽度知的障害」の子どもの認知機能を向上させ、問題の発生を軽減させるわけです(その実践の様子については、昨年の5月に出版された『発達障害と少年犯罪』(田淵俊彦&NNNドキュメント取材班著)に詳しく描写されています)。

 本書では、医療少年院に勤務していた精神科医の目から見た「非行少年」の姿、そして彼らを取り巻く問題の構造、彼らの効果的な支援方法が、一気通貫で語られています。矯正関係者だけでなく、広く教育関係者にも資する本であるのは、立命館大学産業社会学部教授として著者の前任にあたる故・岡本茂樹先生の著『反省させると犯罪者になります』『いい子に育てると犯罪者になります』とも共通しています。

 ご興味をもたれた方は、ぜひご一読ください。

2019/07/25

蘊蓄倉庫

犯罪と障害

 最高裁7月1日付の決定で検察側の上告を棄却し、無期懲役とした二審判決が確定した、2014年の「神戸市女児殺害事件」の犯人は、知的障害を認定する「療育手帳」を保有していました。この犯人は、遺体を捨てたビニール袋に自分の名前が書かれた診察券を一緒に入れていて、「どうしてそんなことをするのか分からない」と当時言われましたが、知的障害の人は後先を考えて行動することが苦手なのです。「どうしてそんなことをするのか分からない」犯罪の背景には、往々にして何らかの障害が関係していることが多いのです。

掲載:2019年7月25日

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