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ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ

宮口幸治/著

1,056円(税込)

発売日:2022/09/20

  • 新書
  • 電子書籍あり

シリーズ累計100万部突破! 物語でしか描けない不都合すぎる真実。ベストセラーをより深く理解するために――。

精神科医の六麦克彦は、医局から派遣された要鹿乃原少年院に勤務して5年になる。彼がそこで目にしたのは、少年院に堕ちてきた加害者ながら、あらゆる意味で恵まれず、本来ならば保護されてしかるべき「被害者」と言わざるを得ない少年たちの姿だった――。累計100万部を超えたベストセラー新書の世界を著者自ら小説化、物語でしか伝えられない不都合な真実を描きだす。

  • 受賞
    第6回 さいとう・たかを賞
目次
まえがき
第1章 田町雪人
第2章 門倉恭子
第3章 荒井路彦
第4章 出水亮一
第5章 少年たちのその後

書誌情報

読み仮名 ドキュメントショウセツケーキノキレナイヒコウショウネンタチノカルテ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 352ページ
ISBN 978-4-10-610965-2
C-CODE 0236
整理番号 965
ジャンル 事件・犯罪
定価 1,056円
電子書籍 価格 1,056円
電子書籍 配信開始日 2022/09/20

蘊蓄倉庫

性非行少年たちはだいたい大人しい

 本書の第4章では、幼女に性非行をはたらいた14歳の少年のケースを扱っています。性非行は、少年院入院者(男子)全体の6・2%を占めますが、年少少年(14、15歳)に限ると16%と割合が高くなり、窃盗、傷害・暴行に次ぐ三番目に多い非行理由になっています。イジメに遭っていた子も多く、そのストレス発散が幼女へのいたずらという形をとっているケースが多くあります。
 通常、少年院では、同じ非行学習メンバー以外には、誰がどんな非行をしたのか分からないようにしています。しかし、性非行をした少年たちは、窃盗系や暴力系の少年たちに比べると概して大人しい少年たちが多いので、生活態度を見ているとだいたい分かってしまうそうです。

掲載:2022年9月22日

担当編集者のひとこと

犯罪者の世界も二極化している

 本書は、2019年の7月に刊行され、現時点で累計79万部(電子版を除く書籍版のみ)のベストセラーとなっている『ケーキの切れない非行少年たち』の世界を、著者自ら小説化したものです。

 舞台は要鹿乃原(いるかのばら)少年院という架空の少年院。医局からそこに派遣されて5年になる児童精神科医、六麦克彦の目を通して、現実に起きていることを匿名化して紹介しています。第1章では少年院出院後に殺人事件を犯した元少年、第2章では妊娠8か月で女子少年院に入院した15歳の少女、第3章では自宅の放火により隣家の女性を焼死させてしまった14歳の少年、第4章では幼女に対する強制わいせつ事件を起こした14歳の少年、の姿が描き出されていきます。

 著者によると、少年犯罪の世界においてすら二極化が進んでいるそうです。刑法犯の数は減っていますが、再犯率は上がっているからです。恵まれた犯罪者と恵まれない犯罪者がおり、恵まれない犯罪者は年々追い詰められていく傾向にある、とも言えます。本書で描き出されているのはこの「恵まれない犯罪者」たちの姿です。

 テーマの性質上、厳しい話、一筋縄ではいかない話が多いですが、彼らが更生していくためのノウハウやきっかけも、物語の形でたくさん語られています。中でも、第3章に収録された放火事件の被害者遺族のエピソードは感動的で、この話を聞いて加害者少年が変わっていく様子は胸に迫るものがあります。私は何度ゲラを読んでも、この箇所に来ると涙が滲んでくるのを抑えられませんでした。

 ぜひご一読頂ければ幸いです。

2022/09/22

著者プロフィール

宮口幸治

ミヤグチ・コウジ

立命館大学大学院人間科学研究科教授。京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務の後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務。2016年より現職。一般社団法人日本COG-TR学会代表理事。医学博士、臨床心理士。

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