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歪んだ幸せを求める人たち―ケーキの切れない非行少年たち3―

宮口幸治/著

836円(税込)

発売日:2024/07/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

「幸せを求めて不幸を招く人」の戦慄のロジック。シリーズ累計170万部突破!

「おばあちゃんを悲しませたくないので殺そうと思いました」。非行少年の中には、時にとてつもない歪んだ考え方に基づいて行動してしまう者がいる。しかし、そうした少年でも「幸せになりたい」という思いは共通している。問題はその「幸せ」を求める方法が極めて歪んでいることであり、それは非行少年に限らないのだ。彼らの戦慄のロジック、そしてその歪みから脱却する方法を、豊富な臨床例と共に詳述する。

目次
はじめに
第1章 歪んだ幸せを求めてしまった人たち
叔母の犬を助けて命を落とした甥っ子/祖母を悲しませたくないから死なせてあげよう/相手を喜ばせたいという動機が相手を悲しませる/女性への歪んだ想いから殺人未遂に/マナーの悪さが命取りに/窃盗の被害者に生まれた加害者への殺意
第2章 幸せの前に立ちはだかる5つの歪み
怒りの歪み/過剰反応で傷害事件/嫉妬の歪み/自己愛の歪み/所有欲の歪み/見せびらかしから生じた悲劇/判断の歪み/認知機能のレベル/情動のレベル/思考のレベル/行動のレベル/固定観念のレベル
第3章 身近にある歪み
勘違いによる怒り/怒りや嫉妬で判断が歪む/年配大学教授の恥ずかしい振る舞い/身近な自己愛の歪み/自己中な人たち/自分の時間だけを大切にする人/時間をあまり気にしない人/これだけやってあげたのに……/身近な所有欲の歪み/身近な判断の歪み~自分と他者の感覚のズレ/「自分のことが分からないと人のことも分からない」/よかれと思ってありがた迷惑に/「○○さんがこんなことを言っていましたよ」/「いい人をやめよう」/「みんなと同じでなくていい」/「少し休んだら?」/「人によって態度を変えるな」/「やられたらやり返せ」/「自分も頑張ってきたんだから君も頑張れるはずだ」/「一つのことを成し遂げろ」「失敗を恐れるな」/身近な固定観念の歪み/金儲けする人は悪い?/真面目な人は頭が固い?/要領がいい人はずるい?/できる子は〇〇が違う?
第4章 歪みの壁を乗り越えるために
相手のストーリーを知ると楽になる/みんな幸せになりたい/みんな自分を見てほしい/みんな人の役に立ちたい/相手のストーリーの歪みを正すのは難しい/自分のストーリーを変えてみる/怒りの段階/感情、思考、認知機能に働きかける/人のふり見て我が身を直す/自分の思い通りにならないと許せない/トラブルとの遭遇/問題解決トレーニング/ゴールを設定し、解決方法を考える/他人と比較しない、比較されない/自分よりも我慢できている人がいる/物ごとは見方によって変化する/合わない人とも付き合うことのメリット/マイナスもバランスを取るために生まれた現象/一喜一憂しない/大事なのは目の前のこと
おわりに

書誌情報

読み仮名 ユガンダシアワセヲモトメルヒトタチケーキノキレナイヒコウショウネンタチ03
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-611050-4
C-CODE 0236
整理番号 1050
ジャンル 政治・社会
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2024/07/18

蘊蓄倉庫

「人生は幸せであるべき」という固定観念

「人生は幸せであるべき」と考えている人は多いですが、ナチスの収容所を生き抜いた体験を持つ精神科医のV・フランクルは、著書『それでも人生にイエスと言う』の中で、「しあわせは、けっして目標ではないし、目標であってもならないし、さらに目標であることもできません。それは結果にすぎないのです」と述べています。固定観念はしばしば歪みを生む原因となりますが、「人生は幸せでなければならない」というのも立派な固定観念です。
 かといって、「人生は幸せでなくそもそも辛いものである」と考えると、さらに歪んだ幸せを求めることに繋がってしまう可能性が生じます。このパラドックスから逃れるため、著者の宮口さんは、「マイナスの出来事も人生のバランスを取るために生まれた現象である」との捉え方を提示しています。

掲載:2024年7月25日

担当編集者のひとこと

とてつもなく歪んだ考え方

 本書は、同じ著者による『ケーキの切れない非行少年たち』『どうしても頑張れない人たち―ケーキの切れない非行少年たち2―』に続く、「ケーキ」シリーズの第三弾の論考になります。

 非行少年の中には、時にとてつもない歪んだ考え方に基づいて行動してしまう子がいます。例えば本書には、「おばあちゃんを悲しませたくないので殺そうと思いました」と語る少年が出てきます。彼は、将来を悲観して自殺しようと考えたのですが、自分が自殺すると大好きな祖母が悲しむことになる。祖母は悲しませたくない。だったら、自分の自殺を知って悲しまなくてもいいように、祖母を先に死なせてあげよう、と考えたのです。「祖母を悲しませたくないから自殺をやめよう」とはならないのです。
 この少年は極めて歪んだ考え方をしていますが、それでも「幸せになりたい」「誰かを幸せにすることで自分も幸せになりたい」という考え方は、普通の人と共通しています。だとしたら、どうやって「歪み」を解消していけばいいのか。著者は歪みを生む原因として5つの理由を挙げ、丁寧に腑分けを試みています。

 本書では、歪んだ幸せを求める人たちの戦慄のロジック、そしてその歪みから脱却する方法を、豊富な臨床例と共に詳述しています。自分のことでも他人のことでも、「これは思い当たるフシがある」と感じたら、ぜひ手に取ってみてください。

2024/07/25

著者プロフィール

宮口幸治

ミヤグチ・コウジ

立命館大学教授・児童精神科医。一般社団法人・日本COG-TR学会代表理事。京都大学工学部卒業、建設コンサルタント会社勤務の後、神戸大学医学部医学科卒業。神戸大学医学部附属病院精神神経科、大阪府立精神医療センターなどを勤務の後、法務省宮川医療少年院、交野女子学院医務課長を経て、2016年より現職。医学博士、子どものこころ専門医、臨床心理士。児童精神科医として、困っている子どもたちの支援を教育・医療・心理・福祉の観点で行う「日本COG-TR学会」を主宰し、全国で教員等向けに研修を行っている。主な著書に『ケーキの切れない非行少年たち』『どうしても頑張れない人たち』『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』『歪んだ幸せを求める人たち ケーキの切れない非行少年たち3』(いずれも新潮社)、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(扶桑社)、『医者が考案したコグトレパズル』(SBクリエイティブ)など計80冊。

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