【特集】さよならは仮のことば
追悼 谷川俊太郎
芸術新潮 2025年3月号
(毎月25日発売)
発売日 | 2025/02/25 |
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JANコード | 4910033050353 |
定価 | 1,500円(税込) |
【特集】さよならは仮のことば
追悼 谷川俊太郎
| 巻頭グラフ | アルバムからの写真と詩
ネロ/ばか/さよならは仮のことば
I 詩人の暮らした「楽園」
谷川俊太郎の92年
文 尾崎真理子
II 谷川俊太郎への道順
10の窓から望見する詩の宇宙
解説 四元康祐
III きこえるえ、おどることば
コラボ名人・しゅんたろさんの絵本
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」案内
IV Shuntaro Tanikawa as Photographer
解説 森岡督行
| インタビュー | 岡﨑乾二郎
谷川さんと「WHOちゃん」(そして、僕)
父・俊太郎さんのこと
谷川賢作 父は僕の応援団長でした
谷川志野 俊太郎さんは神様みたいな人
minimini 図書案内
◆ Art News exhibition ◆
ふたりのアルプ、その軌跡
“ブツドリ”でとらえる
モノと写真家のものがたり
◆ Art News book ◆
白井敬尚インタビュー
「本は背」
『図書館を建てる、図書館で暮らす 本のための家づくり』を
デザインする
◆ Review ◆
- 今津景
- 稲田侑峰
- 服部義文「名古屋:前衛写真の系譜 1930~50年代」展より
- 那須佐和子
◆ Regular Features ◆
◇ 巻頭 ◇
Goods & Shop
時と光の美術館〈95〉
ヴァン クリーフ&アーペル
とんぼの手帖〈15〉
スヌーピーと谷川俊太郎
◇ 連載 ◇
定形外郵便〈128〉
文 堀江敏幸
三浦篤×森村泰昌
キテレツ絵画の逆襲〈7〉
日本近代洋画を見つめなおす
日本に裸体画は必要か
ゲスト:蔵屋美香
千住 博の
知となり肉となり〈20〉
記憶の話
山下裕二の
新・今月の隠し球〈37〉
井下紗希(上)
福井江太郎の
駝鳥がゆく!!〈24〉
友永詔三さん
千 宗屋の
飲みたい茶碗、点てたい茶碗〈120〉最終回
◇ PICK UP ◇
- movie 佐々木敦
- book 諏訪 敦
- recommend 編集部のおすすめ!
- ぐるぐるキョロキョロ展覧会記〈56〉
小田原のどか - exhibition 全国展覧会情報
次号予告
▼芸術新潮特別企画
建築家・永山祐子が
100年の歴史からインスピレーションを受けた
松坂屋名古屋店アートフロアのリニューアル
生命にとって時間とは何か。
わたしの「時間論」
文 福岡伸一
釘町 彰の挑戦――不在の在を描く
広いブースで充実の展観
アートフェア東京 19
連載 美に魅せられて/
アジア文化芸術協会〈65〉
唐招提寺《勅額》
日本近代洋画のミカタ〈7〉
ガラスの裸体
ART CAFÉ
GALLERY'S PLAZA
最新号PICK UP
谷川俊太郎さんのこと
11年前の冬、谷川俊太郎さんに連絡を取った。谷川さんがかつて自費出版した写真詩集『絵本』(1956年)の写真を、森岡書店の店主・森岡督行さんの連載に掲載する許可をいただくためだった。写真詩集の復刻版は入手済みだったけれど、印画紙にプリントされた写真そのものを貼りこんだオリジナル版は手元にないことを告げると、「うちにあるのを撮りにくれば?」と提案してくださった。
森岡さんと一緒に、いそいそと南阿佐ヶ谷のご自宅を訪ねた。小学校以来の憧れの人は居間の「詩人の椅子」に腰かけて、にこやかに自身が撮った写真について語ってくださった。優しいのに甘くない。大人のおとこの色気がただよっていて、すこしぼおっとしていたかもしれない。
その後も、対談の仕事で2回、谷川家の居間にお邪魔する機会があった。初対面の相手でも気負わず、相手に気をつかわせない気づかいも、対話の緩急も、いつも完璧だった。人生の中でいちばん大きくリアルなできごとは、3回結婚して3回離婚したこと。やったことがないからやってみたいのは、死ぬこと。そう言って笑った。
昨年11月13日、92歳で亡くなった谷川さんを追悼する特集を組んだ。谷川家に残されたアルバムには、生後63日から近年に至るまで、さまざまな年齢さまざまな表情の谷川さんの姿が残されていた。自身の人との距離感を「デタッチメント」と表現する谷川さんは、しばしば自分は冷たい人間だと言っていた。でも谷川さんが与えてくれる安心感は、相手も自分も含めて圧倒的に生を肯定している人のそれだった。こちら側とあちら側は、そんなに離れてはいないはずだ。

この号の誌面
編集長から
それは現代日本語からの最大の贈り物
追悼 谷川俊太郎
「さよならは仮のことば 追悼 谷川俊太郎」と題し、昨年11月に92歳で亡くなった詩人の追悼特集をお届けする。サブタイトルは、詩集『私』所収の詩の一節より。――〈さよならは仮のことば/思い出よりも記憶よりも深く/ぼくらをむすんでいるものがある/それを探さなくてもいい信じさえすれば〉
『私』刊行時には谷川はすでに76歳。21世紀に入ってからの谷川の詩には、さほど遠くないだろう自らの死への意識が色濃く滲む一方、言葉はいよいよ透明になり、自在を極めた。20歳で出した『二十億光年の孤独』をはじめとする、生の光に満ちた青春詩集の数々。上善水の如き老境の詩群。その間には、現代詩の頂点をなす『コカコーラ・レッスン』以下の峰々が高く連なるといった具合で、やはりこの人こそが、日本語の現在を総体として代表する詩人だったのだという思いが、今さら抑え難い。解説は尾崎真理子、四元康祐ほか。新旧のポートレイトやスナップも多数収録。永久保存版です。
芸術新潮編集長 高山れおな
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