今月の表紙の筆蹟は、ジュンパ・ラヒリさん。
波 2025年5月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2025/04/30 |
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JANコード | 4910068230553 |
定価 | 100円(税込) |
筒井康隆/宏川光子 シリーズ第22回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第92回
【新発見! 遠藤周作未発表作品手製本『メリノの歌』】
遠藤周作/「たびびとよるのうた」他
遠藤周作/『メリノの歌』あとがき
[解説]加藤宗哉/ロマネスクへの憧れ、言い訳としての狐狸庵
【長江俊和『出版禁止 女優 真里亜』刊行記念特集】
背筋/不穏な虚構を演じる読者
はやせやすひろ(都市ボーイズ)/脳汁が出る快感をあなたに
ジュンパ・ラヒリ、小川高義 訳『翻訳する私』(新潮クレスト・ブックス)
関口涼子/変容を続ける作家の到達点
上村裕香『救われてんじゃねえよ』
石井光太/若き才能にただただ震撼した
水沢秋生『君が眠りにつくまえに』
寺地はるな/虹をかける
俵 万智『生きる言葉』(新潮新書)
山口真由/「心掘り当てること」こそ言葉の本質
原 丈人、奥野武範 聞き手『富める者だけの資本主義に反旗を翻す』
落合陽一/「世界があこがれる日本」をいかにしてつくるか
【百田尚樹『モンゴル人の物語 第一巻─チンギス・カン─』刊行記念】
赤坂恒明/一モンゴル帝国史研究者の、著名作家との出会い
アンデシュ・ハンセン、久山葉子 訳『多動脳─ADHDの真実─』(新潮新書)
柳沢幸雄/ADHDも個性の一つ
堀田秀吾『決めることに疲れない 最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣』
[感想マンガ]いしかわひろこ/最新科学が教える「決断疲れ」をなくす習慣
マイケル・J・マーコード、ボブ・ティード、黒輪篤嗣 訳『世界最高の質問術─一流のビジネスリーダー45人が実践する人を動かす「問いかけ」の極意─』
土井英司/組織を成長させる質問、衰退させる質問
阪倉篤秀『中国皇帝の条件─後継者はいかに選ばれたか─』(新潮選書)
冨谷 至/「名君」の素質でもどうしようもない「命運」
【特別エッセイ】
吉川 潮/退屈指南 色川武大先生のこと
【掌篇小説】
阿刀田 高/壺の底 シリーズ最終回
【阿刀田 高ミニシアター 完結記念特集】
待つもの、待たざるもの――ダザイ、カフカ、アンゴの掌篇小説(「波」編集部・選)
太宰 治/待つ
フランツ・カフカ、原田義人 訳/皇帝の使者
坂口安吾/復員
フランツ・カフカ、原田義人 訳/家長の心配
太宰 治/満願
【私の好きな新潮文庫】
内田 剛/手書きPOPと本屋大賞
テリー・ケイ、兼武 進 訳『白い犬とワルツを』
百田尚樹『夏の騎士』
あさのあつこ『ハリネズミは月を見上げる』
【今月の新潮文庫】
H・P・ラヴクラフト、南條竹則 編訳『チャールズ・デクスター・ウォード事件』
東 雅夫/プロヴィデンスへの偏愛ぶりを示す、記念碑的な作品
【コラム】
小澤 實/俳句と職業
池谷裕二『すごい科学論文』(新潮新書)
池谷裕二/科学の最前線は、論文にあり!
[とんぼの本]編集室だより
【連載】
杏/杏のパリ細うで繁盛記 第16回
中村うさぎ/老後破産の女王 第14回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第32回
大木 毅/錯誤の波濤 海軍士官たちの太平洋戦争 第2回
古市憲寿/絶対に挫折しない世界史 第13回
内田 樹/カミュ論 第30回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、ジュンパ・ラヒリさん。
◎後輩編集者に資料として某映画のDVDを渡そうとしたら、「プレイヤーを持っていません」と言われ吃驚して(TVを持たない後輩もいるから今更驚いちゃいけないけど)、久々に村上春樹さんと川本三郎さんの『映画をめぐる冒険』を取り出して読む。
◎四十年前に出たこの共著は、DVDどころか、当時普及し始めたビデオのおかげで新旧の映画を手軽に観られるようになった読者が対象と思しき、著者二人の偏愛映画紹介本。筋金入りの映画館常連者である二人の文章からは、ビデオで映画を観る時代への戸惑いと新鮮な喜びが滲み出ています。
◎ではビデオ以前、いわば古典時代のヘヴィーな映画好きはどうしていたかと言えば、恐るべきことに16ミリで好きな映画を持っていました。村上さんは経営していたジャズの店で閉店後に仲間内で16ミリ・フィルムの映写会をやっていたし、和田誠さんからは和田さん所蔵の「拳銃の罠」の16ミリ・フィルムを観せてもらったそう(『愛蔵版 お楽しみはこれからだ』栞より)。亡くなった芦屋小雁さんはSFや怪奇映画のコレクターとして有名でしたが、兄の雁之助もミュージカル映画の蒐集家で、日本未公開だった「ヤンキー・ドゥードル・ダンディ」のフィルムは雁之助邸にしかなかった由(小林信彦『笑学百科』)。
◎フィルムとビデオの間(?)にはLD時代もあって、高崎俊夫さんが村上さんの自宅で「ブレードランナー」と「秋刀魚の味」のLDを観た夜を回想した文章が高崎さんの『祝祭の日々』にあります。同書は「キネマ旬報」映画本大賞も受賞した名著なので、高崎さんが村上さんの前で何と言って「深い自己嫌悪に陥った」のか、読んでみて下さい。他にも蓮實重彦さんと小林旭さんの奇縁など興味津々の話が満載の一冊。
▽次号の刊行は五月二十七日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?

1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。