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今月の表紙の筆蹟は、円城塔さん。

波 2025年6月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2025/05/27

発売日 2025/05/27
JANコード 4910068230652
定価 100円(税込)
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筒井康隆/チキンレース シリーズ第23回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第93回
【円城 塔『去年、本能寺で』刊行記念特集】
柴田勝家/圧縮された歴史を取り出して
[インタビュー]円城 塔/AIには吹けない法螺の吹き方
川本三郎『荷風の昭和 前篇─関東大震災から日米開戦まで─』、『荷風の昭和 後篇─偏奇館焼亡から最期の日まで─』(新潮選書)
小川洋子/揺るぎない孤独な瞳

阿部智里『皇后の碧』
金原瑞人/想像力の底が抜けた

青柳碧人『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』
門井慶喜/楕円形の歴史小説

町屋良平『生活』
滝口悠生/発生する「生」「活」

ミリアム・ルロワ、村松 潔 訳『わたしがナチスに首をはねられるまで』(新潮クレスト・ブックス)
江南亜美子/忘却にあらがう小説の力

「週刊新潮」編集部『週刊新潮が撮った 昭和の女優たち』
太田和彦/女優の素顔が映画以上に魅力的であるうれしさ

堀元 見『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』
水野太貴/「ゆる言語学ラジオ」相方より

佐藤 優『「孫子の兵法」思考術─大混迷時代のインテリジェンス─』
池上 彰/CIA長官も評価した『孫子』 諜報活動の奥義を学ぶ

川上和人『鳥類学者の半分は、鳥類学ではできてない』
東 えりか/何度でも言う 川上和人に外れなし

【万城目 学『あの子とO』刊行記念】
[対談]小島秀夫×万城目 学/ゴッドファーザーにご挨拶

【特別対談】
朝比奈 秋『受け手のいない祈り』
山口未桜×朝比奈 秋/消化器内科医兼小説家の二刀流対談
【新連載】
下重暁子/九十歳、それがどうした
【没後70年特別企画】
[エッセイ]木澤佐登志/文士と薬物――坂口安吾の場合
【新潮選書ベストセレクション 昭和100年/戦後80年 歴史フェア2025】
保阪正康さんが選ぶ3冊!
 片山杜秀『未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命―
 牧野邦昭『経済学者たちの日米開戦―秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く―
 岡部 伸『消えたヤルタ密約緊急電―情報士官・小野寺信の孤独な戦い―

川本三郎『荷風の昭和 前篇─関東大震災から日米開戦まで─』、『荷風の昭和 後篇─偏奇館焼亡から最期の日まで─』
多田蔵人/荷風を追いつづける姿に戦慄さえ覚える

熊本史雄『外務官僚たちの大東亜共栄圏』
戸部良一/「理知的なエリート官僚たち」への批判

原 武史『日本政治思想史』
平山周吉/「天皇制」と「鉄道」が交差する新たな思想史

上田正昭『私の日本古代史(上)―天皇とは何ものか――縄文から倭の五王まで―』、『私の日本古代史(下)―『古事記』は偽書か――継体朝から律令国家成立まで―』
赤坂憲雄/一国史観の幻影を壊す豊饒の書

三浦佑之『「海の民」の日本神話―古代ヤポネシア表通りをゆく―』
上野 誠/国家史から解放された神話の世界

佐伯啓思/人物評伝を読む 日本を考える3冊
 瀧井一博『大久保利通―「知」を結ぶ指導者―
 先崎彰容『本居宣長―「もののあはれ」と「日本」の発見―
 寺澤行忠『西行―歌と旅と人生―
【私の好きな新潮文庫】
田尻久子/この小さな本たちを私は手放さない
 向田邦子『思い出トランプ
 梨木香歩『家守綺譚
 レイチェル・カーソン、上遠恵子 訳『センス・オブ・ワンダー
【今月の新潮文庫】
山本暎一『大江戸春画ウォーズ UTAMARO伝』
森重良太/「アニメーション作家」だからこそ書けた小説
【コラム】
小澤 實/俳句と職業

[とんぼの本]編集室だより

読売新聞社会部「あれから」取材班『「まさか」の人生』(新潮新書)
森下義臣/記者が深掘りした人生のストーリー
【連載】
杏/杏のパリ細うで繁盛記 第17回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第15回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第33回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第20回
三宅香帆/推しとハレ 第5回
古市憲寿/絶対に挫折しない世界史 第14回
中村うさぎ/老後破産の女王 第15回
大木 毅/錯誤の波濤 海軍士官たちの太平洋戦争 第3回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、円城塔さん。

◎ポール・シュレイダー監督の「Mishima:A Life in Four Chapters」(1985)のブルーレイが米国クライテリオン社から出ていることを知って早速購入。三島由紀夫(演じるのは緒形拳)の最後の一日を、三島の回想(モノクロ画面になる)と三つの小説(『金閣寺』『鏡子の家』『奔馬』)を織り込んで描いたもの。ずっと日本では未公開で、昔は画質の悪いVHSが秘かに出回っていました。この監督は知日派と言われていますが、脚本デビュー作「ザ・ヤクザ」を小林信彦さん『唐獅子株式会社』でやくざたちが揶揄したように、少し文化誤解があるようです。でも今「Mishima」を観るとその誤解がキャンプの域に達していて、結構な面白さ。石岡瑛子の美術は瞠目に値しますし、沢田研二(『鏡子の家』パートに出演)の演技も印象的。
◎三島の映画では主演作「からっ風野郎」も必見で、撮影中、増村保造監督からしごかれたのは有名な話。自決直後の座談会(「週刊現代増刊 三島由紀夫緊急特集号」)でも、若尾文子曰く「まあ、増村さんてそういう人ですけど、私の見た範囲ではあんなのはちょっとないですね。(略)私はほんとに、もういやでしたね。かげでほんと、祈ってたわ。いやで」。続けて中村伸郎が「その仇討ちに書いた小説がありましたね」というのは三島の短篇「スタア」のこと。そして没後五年目、吉行淳之介は「スーパースター」という三島のポルトレを書きます。
◎その中に三島の振舞いを見て「あれじゃ、疲れるだろうなあ」と思う場面がありますが、同じく「(疲れるだろうな、もっとリラックスしたらいいのにな)と思わせる方だった」と回想したのは坂東玉三郎(「yom yom vol.13」)。丈は「新潮」六月号の座談会でも三島作品へ鋭い疑問を呈しつつ作家への同情と愛惜に満ちた発言をされていて、凡百の作家を超える出色の三島論になっていました。必読!
▽次号の刊行は六月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。