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[平野啓一郎『透明な迷宮』刊行記念対談]又吉直樹×平野啓一郎/愛するとはどういうことか

波 2014年7月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2014/06/27

発売日 2014/06/27
JANコード 4910068230744
定価 102円(税込)

[平野啓一郎『透明な迷宮』刊行記念対談]
又吉直樹×平野啓一郎/愛するとはどういうことか

尾崎真理子『ひみつの王国―評伝 石井桃子―』 堀江敏幸/空白を埋める試み

[『かもめのジョナサン完成版』刊行記念特集]伝説のかもめが帰ってきた
北上次郎/五木寛之ゆえに
原 幹恵/瞬間が降りてくる

カレン・テイ・ヤマシタ『熱帯雨林の彼方へ』
都甲幸治/三の物語

乾 ルカ『モノクローム』
藤田香織/白と黒の世界で起きた呪縛、そして解放

久坂部 羊『芥川症』
久坂部 羊/医療小説の“罪と罰”

仙川 環『流転の細胞』
東 えりか/「ヒト」はいつから「ヒト」になるのか?

[乙川優三郎『トワイライト・シャッフル』刊行記念特集]
【インタビュー】乙川優三郎/挑戦、習作、現代、房総――
平松洋子/この艶。大山脈を母として

樋口有介『金魚鉢の夏』
香山二三郎/昭和調で奏でる近未来ミステリー

今福龍太『書物変身譚』
大竹昭子/変身の過程をたどって、書物の故郷へ

辻 惟雄『奇想の発見―ある美術史家の回想―』
鈴木芳雄/「先生の恩師」の飾らぬ素顔

加藤典洋『人類が永遠に続くのではないとしたら』
高橋源一郎/その向こうにあるものは

小澤征爾 村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(新潮文庫)
青柳いづみこ/「らあ、らあ、らあ」――小澤征爾の言葉、村上春樹の音楽

フランク・ウォラル『どうしていつも俺なんだ?!―悪童マリオ・バロテッリ伝説の真実―』
森田義信/やんちゃで何が悪い

岡本和明『俺の喉は一声千両―天才浪曲師・桃中軒雲右衛門―』
国本武春/なぜ雲右衛門を「先生」と呼ぶのか

読売新聞政治部『「日中韓」外交戦争―日本が直面する「いまそこにある危機」―』
永原 伸/安全保障の「現場」にこだわる

矢口祐人『奇妙なアメリカ―神と正義のミュージアム―』(新潮選書)
渡辺 靖/ユニークな現代アメリカ論

稲垣栄洋『弱者の戦略』(新潮選書)
稲垣栄洋/弱いことこそが成功の条件

山村基毅『ルポ 介護独身』(新潮新書)
山村基毅/泣くがいやさに笑ってござる

コラム
考える人/文庫――小さな本の大きな世界
三橋曉の海外エンタ三つ巴

連載
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第52回
津村記久子/やりなおし世界文学 第2回
嵐山光三郎/芭蕉という修羅 第16回
末盛千枝子/父と母の娘 第4回
藤野千夜/D菩薩峠漫研夏合宿 第10回
石原千秋/漱石と日本の近代 第13回
木皿 泉/カゲロボ日記 第3回
池上 彰/超訳 日本国憲法 第16回
堀本裕樹、穂村弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第11回
森 まゆみ/子規の音 第6回
久間十義/デス・エンジェル 第12回
高橋秀実/とかなんとか言語学 第31回
津村節子/時のなごり 第34回

編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から

編集長から

◇今月の表紙の筆蹟は、平野啓一郎さんです。平野さんの新作『透明な迷宮』は、最新の六篇を収録した七年ぶりの短篇集になります。揮毫していただいたのは、深夜のブダペストで突如、監禁されて衆人環視の中で性行為を強要された日本人男女の心理が描かれ、官能的で夢幻的な小説世界が広がる表題作の一節です。その他の作品も、他人の筆跡を完璧に模写できる郵便配達員、亡くなった父親の遺品整理をするうちに拳銃を発見してしまう姉妹、交通事故で大切な女性を喪って時間の進行速度が狂っていく劇作家など、日常の中に亀裂のように差し込む非日常から展開するドラマは耽読必至です。写真は都内にある平野さんの仕事部屋にお邪魔して撮影しました。
◇岩橋邦枝さんがご逝去されました。お茶の水女子大在学中に小説を書き始めて「女石原慎太郎」と評されたことはよく知られていますが、女性の情念を硬質な文章で描き続けた岩橋さんの仕事は晩年の『評伝 野上彌生子―迷路を抜けて森へ―』(小社刊)に結実します。九九歳で急逝するまで小説を執筆した「あらゆる意味で強靭な女性」野上彌生子の生涯をたどり、戦争忌避の姿勢や中勘助、田辺元との秘められた恋を描き出したこの作品は、「岩橋さんの綿密、かつ、率直な観察眼がなければ簡単には把握できない作家像」(津島佑子氏、小誌二〇一一年一〇月号)を浮き彫りにした評伝文学の秀作です。小誌にも、書評、対談など様々な機会にご登場いただきました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
◇『日本人に生まれて、まあよかった』(新潮新書)が発売以来、好調に版を重ねています。夏目漱石の言葉に想を得た題名の本書は、比較文化史の碩学・平川祐弘氏が綴った「日本再生の処方箋」です。「自己卑下が美徳となっている」異常なこの国を憂いながら、日本人が現在から未来に向けて守るべき大原則とは何かを説き、教育の観点から未来に向けての方策が実践的に語られます。憲法改正問題の根本にも触れた、まさに時宜を得た好著です。

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。