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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

16周年のごあいさつ

 社会学者の古市憲寿さんは、テレビの人気コメンテーターでもあり、今では作家でもあります。前者についていえば、コメントの独自性や的確さが人気の一因でしょう。
 4月の「新潮新書創刊16周年フェア」に関連して、そのコメント力を改めて認識させられたことがありました。今回は新しい試みとして、古市さん推薦の既刊3点に、推薦コメントを入れたオビを巻くことにしたところ、どのコメントもとても良いのです。
戦略がすべて』(瀧本哲史・著)、『脳が壊れた』(鈴木大介・著)、『コンビニ外国人』(芹澤健介・著)に寄せられたコメントは、いずれも短いながらも、本の魅力を伝えていて、開いてみたくなるものばかり。文章のリズム感もよく、推薦文のお手本のようなクオリティで、部員一同うならされました。フェアは4月中旬以降、あちこちの本屋さんでやってくださっているはずなので、ご興味のあるかたは書店でご覧になってみてください。

 4月の新刊のうちの1冊は、その古市さんの『誰の味方でもありません』。
 このタイトルのようなスタンスも、人気の秘密のひとつでしょう。とかく特定の主義主張にこだわって、他人を激しく攻撃する人が目立つなか、古市さんは常にフェアであろうとしているように見えます。さまざまな社会事象を扱った本書を読むと、その貴重さがよくわかります。

 他の3点もご紹介します。
2019/04

「場当たり的」の話

 ニュースなどを見て「場当たり的だなあ」と感じることはちょくちょくあります(ここでうかつに身近な事例を引っ張り出すと、このあとの会社員生活に支障をきたすのでやめておきます)。
 不祥事などの際に、追い込まれて何度も謝罪をする羽目になった企業などは、その典型かもしれません。「ここまでは譲る(謝る)」「これ以上はやらない」といった大きな方針がないので、対応がその場しのぎになってしまい、結果として延々と撤退戦を強いられるのです。
 飲食店などだと「この前までとずいぶん思いきった方針転換をしたなあ」と思っていると、いつの間にか店が消えているなんてこともあります。
 こんな風に書いている私も、部下から見ればしょっちゅうブレているに違いありません。悪気はありませんが、記憶力が弱いのです。「言っていることがこの前と違わない?」と思われ、「場当たり的だ」と陰で言われているかもしれません。
 なぜ人は、あるいは企業は「場当たり的」になるのか。このテーマに正面から取り組んだのが、3月新刊『「場当たり的」が会社を潰す』(北澤孝太郎・著)です。
 リクルートや日本テレコム(現・ソフトバンク)のカリスマ営業マンとして活躍した著者は、現在、さまざまな企業の研修に携わっています。大手企業も珍しくないのですが、そうした場でも「場当たり的だなあ」と思わせる部長さんは珍しくないとのこと。
 経済が右肩上がりの時代であれば、少々の「場当たり的」もご愛嬌というか、カバーされるのでしょうが、現在、多くの企業にとってそれは確実にロスになります。ではどうすればいいか。著者は「場当たり的」の原因を解明したうえで、具体的な改善策を示していきます。

 他の新刊3点もご紹介します。
2019/03

裏話の話

 大ヒットしている映画「ボヘミアン・ラプソディ」については、いろんな人がいろんな分析をなさっています。私が感じたのは、ドラマチックな作品は、制作過程も往々にしてドラマチックで、その手の裏話には多くの人を惹きつける力がある、ということでした。自分がいい年をこいて、いまだに子供の頃と同じように音楽雑誌を一所懸命読んでいるのも、そういう話を知りたいからなのだろうと思います。

 2月の新刊『ドラマへの遺言』(倉本聰碓井広義・著)では、ドラマ界の生きる伝説である倉本さんが、自作やテレビ界の裏話をたっぷりと語っています。倉本さんの有名な逸話の一つがNHKの大河ドラマ「勝海舟」を途中降板した、というものです。そこで何があったのか、といった話もフランクに明かしていて、実にドラマチックです。「前略おふくろ様」「北の国から」から、最新作「やすらぎの刻~道」まで、本人しか語れない秘話満載。
 ファンが多いだけに、ゲラの時点で「読みたい」という声が社内各部署から上がり、読んだ人がみな「めちゃくちゃ面白かった」と言っています。

 他の新刊3点をご紹介します。
2019/02

マウンティングの話

 流行の言葉や新しい言葉はあまり使わないほうなので、当然「マジ卍」などと口にしたことはありません。しかしながら、なるほどこれは便利だ、と思ってつい使う言葉も時々出てきます。私にとっては「マウンティング」というのがそれでした。簡単に言えば、相手より自分を高い位置に置こうとする行為、ということになるのでしょうが、日本語で一言で言うのはわりと難しい気がします。
 これが便利だなと思うのは、そういう感じの言動を見る機会が結構あるからかもしれません。出版業界などというものは、半可通や調子に乗りたい人がわりと多いところです。また、その中でも、自分の所属している小さなムラやサークルのようなところでのポジションをとても重視する人がいます。
 そういう人は、機会を見つけては「俺のほうが知っている」「僕のほうが正しい」と示そうとする。「マウンティング」をするわけです。はたから見ているといささか滑稽で、「そのムラで偉いからといっても世間とは関係ないのにね」などと思いますが、余計な波風を立てたくないのでなるべく黙っています。
 ただ、自分自身、そういう言動をとってしまう面もあるのかもしれません。お笑い好きとか洋楽好きの若い人と話している時に、つい「俺は生で見たことがあるぞ」とか言ってしまいます。気をつけたいと思っています。

 1月新刊『ちょいバカ戦略―意識低い系マーケティングのすすめ―』(小口覺・著)は、「マウンティング」と密接な関係がある「上から目線」の危険性を説いた異色のビジネス書です。実は多くのヒット商品は「意識高い系」の上から目線ではなく、もっと下からの目線、「意識低い系」の視点を取り入れたものだ、ということがx鮮やかに示されていきます。アップルも、ワークマンもみんな「ちょいバカ戦略」の賜物だ、というのはかなり新しい指摘だと思いました。

 他の新刊3点もご紹介します。
2019/01