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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

東京2020閉幕のあとに

 

 先日、某作家と都心の某ホテルで打合せがありました。オリンピック開催を当て込んだ最新の高層ホテルは動く人影もまばらで、ラウンジに映える鮮やかな夜景も何だかシュールな雰囲気。「戦争を体験して、あれ以上のことは起こらないと思ってたけど、まさかこんな時代が来るとはね......」、ため息まじりにそう話すのが印象的でした。
 確かに「緊急事態」にも慣れっこになった今、歴史的な変化のさなかにいるとも言えそうですが、コロナ禍の中でも平時でも、なぜか理屈に合わない妙なことをしでかしてしまうのが人間の不可思議です。9月新刊のイチ推し、百田尚樹さんの『アホか。』は、日々のニュースの中で思わず、「アホちゃうか!」とツッコまずにいられないような92の事件簿。歯に衣着せない鋭い論評と併せて、うっとうしいご時世に一服の清涼剤です。
2021/09

混迷する時代の空気の中で

 

 史上最多の五輪メダル獲得、猖獗をきわめるデルタ株、甲子園出場を決めた47代表の歓喜、グリップを失いつつある政権運営......目もくらむような酷暑の中、日々目にするニュースのベクトルもかつてなく混迷しているようです。
2021/08

すっきり晴れない長雨の下で

 

 繰り返される緊急事態の宣言と解除、祭典にはほど遠いオリンピック......総理の表情から日ごとに自信が失われていく様子を見ていると、「正常性バイアス」という心理学用語を思い出します。異常な事態を前にして、「大丈夫だ、何とかなる」と、自分にとって都合よく考える心の働きで、誰にでもある一種の自己防衛反応ですが、後になってみれば現実とは大きくズレていた、ということはしばしばあります。
2021/07

ようやく光が射してくる頃

 

 先日、約半年ぶりにさる著名な作家とリアルでの打合せをしました。お互い、マスクできっちり顎まで蔽いながら、飛沫が飛ばないようにボソボソヒソヒソ、何だが悪いことでもしているようで妙な気分でした。
 先月に引き続いての緊急事態宣言下、欧米諸国にはだいぶ遅れたものの、日本でもワクチンの本格接種が始まり、長い巣ごもり生活にもようやく先の光が射してきた頃合いでしょうか。
 6月新刊のイチ推し、『ビジネス戦略から読む美術史』(西岡文彦・著)は、美術にまつわる「イノベーション」を論じた一冊。名画・名作が今日そう評されるのは、作品を売りたい画家や画商、そして芸術を利用しようとした政治家や商人たちの「作為」の結果ですが、美術史はその作為(=イノベーション)の宝庫。読めば教養とビジネスノウハウの「二重取り」ができるお得な一冊です。
 何はともあれ当分は病院に行きたくない、そんな人も多いと思いますが、『その病気、市販薬で治せます』(久里建人・著)は、風邪や花粉症などポピュラーな日常薬から、育毛剤や精力剤のような人にはちょっと言いにくい薬剤まで、国が進めるセルフメディケーション政策のもと、急速の進化を遂げている市販薬について薬剤師がやさしく解説。一家に一冊の保存版です。
2021/06