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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

グルメの変遷をたどる

「不適切にもほどがある」「おいしい給食」など、舞台を昭和の1980年代に設定したドラマが人気を集めています。背景には、行き過ぎたコンプライアンス社会への反動もあるのでしょうが、バブルを挟んで、よくもわるくも世間が活気と変化にあふれていた時代の空気は、中高年世代にとってはある種のノスタルジーでもあるようです。
『東京いい店はやる店―バブル前夜からコロナ後まで―』(柏原光太郎・著)は、1980年代から現在まで半世紀にわたるグルメの現代史。『東京いい店うまい店』元編集長で、食のオンライン「文春マルシェ」を立ち上げた当代きっての美食家が、外食グルメの歴史を自身の体験とともにたどります。フランス料理やイタ飯ブームから、フーディーの登場や活況を呈するイノベーティブレストランまで、一度は行きたいお店の名前もたくさん登場します。
2024/06

会社も業界も「見える化」

 GWが明けて仕事再開、また会議や商談の日々がはじまって――というかたも多いと思いますが、一週間程度といえブランクがあると話がかみ合わないことは珍しくありません。そんなとき、曖昧な印象や記憶よりも頼りになるのは、やはり整理された記録であり、何より相手との共通認識でしょう。
2024/05

創刊21年目、新たな始まり

 ヨレのないスーツに襟元の輝く新社会人、誇らしげに、少しはにかんで歩く新入生――通勤途中でそうした光景に出会うと、今さらながら新年度が始まることに思いいたります。「昨年今年貫く棒の如きもの」(高浜虚子)という有名な句は、何も日々の繰り返しや退屈を嘆いたものではなく、それでも自分には一本の棒のごとき信念があるとの含意だそうですが、若者たちがこれから何をわが道としていくのか、楽しみでもあります。
2024/04

本ならではの気づき

 自分が出版業界に就職した当時、業界全体の売上も書店数も、ほぼピークにありました。それから30数年、ざっくり言うとどちらも半減したようですが、最近、おや? と思ったのが、経済産業省が書店振興プロジェクトに乗りだすというニュースでした。行政の旗振りがどこまで効果的かはわかりませんが、書店の棚から気になる一冊を手に取って読み、そこから得られた様々な心象が、今の仕事の原点にあることはまちがいありません。3月新刊の新潮新書は次の4点、それぞれに書籍ならではの知識や気づきをもたらしてくれます。
2024/03