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「ファンタジーセラー2010」Magazine in Magazine

小説新潮 2010年11月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2010/10/22

発売日 2010/10/22
JANコード 4910047011104
定価 943円(税込)

「ファンタジーセラー2010」Magazine in Magazine

ファンタジーって何だろう?
「Fantasy Seller」を作るにあたり、改めて自問してみたが、簡潔な答えは思い浮かばなかった。現実と違う世界を舞台にした小説、と仮に設定してみると、じゃあSFとファンタジーの差は何かという話になるし、そもそもフィクションはみな架空の話であって、現実そのものをなぞっているわけではない。RPGや海外作品からの連想で、中世ヨーロッパ的な「剣と魔法の世界」という括りが思い浮かぶかもしれないが、それだと入りきらない要素が多すぎる。解答を示せるとすれば、おそらく作品によってのみ、だろう。
今回の「Fantasy Seller」は、それに対する一つの解の提示である。もちろん解は無限にあって、その多様さこそが、ファンタジーの魅力と奥行きなのだ。

◆畠中 恵/太郎君、東へ 「しゃばけ」シリーズ外伝
──利根川が増水して、河童の大親分禰々子はお侍と急接近!?

◆仁木英之/雷のお届けもの 僕僕先生
──小さな雷神達に課された初めての試練とほんとうの友情

◆森見登美彦/四畳半世界放浪記
──妄想の王国で繰り広げられた登美彦氏の闘いの全貌に迫る

◆堀川アサコ/暗いバス
──毎日一本の深夜バス。ここに来るのはいつも午前二時だ

◆遠田潤子/水鏡の虜
──水鏡が男の罪を映し出す。悪名高い山椒太夫の真実とは

◆紫野貴李/哭く戦艦
──夜ごと港に轟く奇怪な響き。霊力を宿す義手が真相に迫る

◆石野 晶/スミス氏の箱庭
──教室の隅、裏山の階段、校庭の砂場。彼といた愛すべき学校

◆宇月原晴明/赫夜島
──竹取姫の霊薬が導くのは畜生道…平将門を襲う奇怪な史実

【江戸のもてなし】
巻頭グラビア/福田 浩・松下幸子
連載エッセイ/松井今朝子

【12ヶ月連続 総天然色付録】しゃばけ花札

【好評読切連作】
◆宇江佐真理/寒夜 古手屋喜十為事覚え
──どぶさえも命を奪う。死に方さえ選べないから、人は酒をのむ
◆誉田哲也/愛したのが百年目
──酒気帯びではねた相手は親友。ありふれた交通事故のはずが

【連載エッセイ・コラム】
柴門ふみ/大人の恋力
酒井順子/徒然草REMIX
佐藤 優/落日の帝国 私のイギリス物語
沢木耕太郎/悟りの構造 ポーカー・フェース
山田詠美/ライ麦畑で熱血ポンちゃん
河口俊彦/盤上の人生 盤外の勝負 最終回

【第六回 新潮エンターテインメント大賞決定発表】
【受賞作】神田 茜/花園のサル(抄)
【選評】三浦しをん

【好評連載小説】
あさのあつこ/たまゆら
荒山 徹/蓋島伝――長宗我部元親秘録
飯嶋和一/星夜航行
池井戸 潤/鋼のアリス
石田衣良/明日のマーチ
大沢在昌/冬芽の人
今野 敏/転迷 隠蔽捜査4
佐々木 譲/警官の条件
小路幸也/荻窪 小助川医院
白川 道/神様が降りてくる
谷村志穂/尋ね人
西村京太郎/阪神間三十六・九キロの殺人
楡 周平/虚空の冠
原田マハ/夢をみた J'ai reve
宮部みゆき/ソロモンの偽証
山本一力/べんけい飛脚

第七回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
川柳うきよ大学/小沢昭一
編集後記

編集長から

ファンタジーとは何か? と訊かれたら。
 11月号は、「Mystery Seller 2010」に続き、〈雑誌内雑誌〉「Fantasy Seller 2010」を組んだ。今回は本文とは色の違う紙を使い、「別物」感が際立つようにしたつもりなのだが、どうだろうか。
 ファンタジー、とは比較的よく口にする言葉でありながら、人によってイメージは様々だし、ファンタジーとは何か? という問いに対する明快な答えは、おそらく誰も持ち得ないだろう。示せるとすれば唯一、実作をもってのみ、である。
 今回の企画は、それに敢えて挑んだ一つの解の提示である。
 第二十二回ファンタジーノベル大賞を受賞し、十一月に単行本デビューする二人の新人の作品もいち早く掲載した。
 ベテランからデビュー前夜の作品までが並んだこの「Fantasy Seller 2010」には、現代日本におけるファンタジー小説の有り様が凝縮されている。
 とはいえ、これも無数に存在する解の一つ。今回の特集が、無限に広がるファンタジー世界への誘いになってくれれば、とても嬉しい。


小説新潮編集長 新井久幸

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 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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