【ALL読み切り、書き下ろし】Story Seller 2011 読み応えは2冊分、お値段は1冊分
小説新潮 2011年5月号
(毎月22日発売)
発売日 | 2011/04/22 |
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JANコード | 4910047010510 |
定価 | 943円(税込) |
昔から語呂合わせや単語のモジリが好きで、なんの必要もないのに、よく一人で勝手に言葉遊びを楽しんでいた。
十年以上前になるが、何かの拍子に突然、「ストーリーテラー(storyteller)」のモジリで「ストーリーセラー(storyseller)」というのは面白いんじゃないか、と思い付いた。日本語でも英語でも原語と一字違いだし、優れた物語の作り手は、同時に物語を売る人でもある。そして、小説雑誌や本に携わる出版社の人間もまた、物語を売って生活しているという点では「storyseller」だ。いやむしろ、自分で作ることができない分、より「seller」に寄っていると言える。
だから、我々出版社の人間の使命は、優れた物語を一人でも多くの人に届けること、なのだ。ここで出会った作品が、広大な物語世界へ誘う扉になってくれたらいい、そう願って毎号「小説新潮」を作っている。
十年以上前になるが、何かの拍子に突然、「ストーリーテラー(storyteller)」のモジリで「ストーリーセラー(storyseller)」というのは面白いんじゃないか、と思い付いた。日本語でも英語でも原語と一字違いだし、優れた物語の作り手は、同時に物語を売る人でもある。そして、小説雑誌や本に携わる出版社の人間もまた、物語を売って生活しているという点では「storyseller」だ。いやむしろ、自分で作ることができない分、より「seller」に寄っていると言える。
だから、我々出版社の人間の使命は、優れた物語を一人でも多くの人に届けること、なのだ。ここで出会った作品が、広大な物語世界へ誘う扉になってくれたらいい、そう願って毎号「小説新潮」を作っている。
◆道尾秀介/暗がりの子供
──雛壇の緋毛氈の中で、莉子は両親の不穏な話を聞いた
◆近藤史恵/トゥラーダ
──リスボンに移ったチカ。この街を楽しんでいたつもりだった
◆有川 浩/R-18──二次元規制についてとある出版関係者たちの雑談
──その作家は、人目を憚るような本をおもむろに取り出した
◆米澤穂信/万灯 まんとう
──国のための尊い仕事だ、殺人だってやむを得ないはずだ
◆恩田 陸/ジョン・ファウルズを探して
──何か気になる作家。そのエージェントに会いに行ったの記
◆湊かなえ/約束
──遠く離れた南の島で、私たちはあの夜のことを語り始めた
【連載第二回】
阿刀田 高/源氏物語を知っていますか
葉室 麟/春風伝──高杉晋作・萩花の詩──
蜂谷 涼/鬼の捨て子
葉室 麟/春風伝──高杉晋作・萩花の詩──
蜂谷 涼/鬼の捨て子
【好評読み切り連作】
◆畠中 恵/長崎屋のたまご しゃばけ
──美しい夕暮れ時、若だんなの前に空色の玉が降ってきた!
◆宇江佐真理/糸桜 古手屋喜十 為事覚え
──店の前に捨てられていた赤ん坊。嬉しそうなおそめを横目に喜十は
【連載エッセイ・コラム】
柴門ふみ/大人の恋力
酒井順子/徒然草REMIX
佐藤 優/落日の帝国 私のイギリス物語
沢木耕太郎/挽歌、ひとつ ポーカー・フェース
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ
酒井順子/徒然草REMIX
佐藤 優/落日の帝国 私のイギリス物語
沢木耕太郎/挽歌、ひとつ ポーカー・フェース
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ
【新連載小説】
◆柴田よしき/さかさまの物語I 名前のない古道具屋の夜
──怪しげな笑顔に吸い込まれるように、薄暗い店の中に足を踏み入れた
◆本多孝好/魔術師の視線
──目的を見失い、当て所なく働く女性記者。奇跡を起こす少女と再会して
【新連載エッセイ】
◆嶽本野ばら/地嶽八景亡者戯
──イメージは耽美、パンク、ゴスロリ? 乙女のカリスマの知られざる趣味
【新シリーズ開始】
◆さだまさし/空蝉風土記――京都・はかぼんさん
──真夏の炎天下、高瀬川のほとりに延々佇む若夫婦。一体何をしている?
【江戸のもてなし】
――様々な日記や記録をもとに、江戸の宴会を再現する好評連載
巻頭グラビア/福田 浩・松下幸子
連載エッセイ/松井今朝子
巻頭グラビア/福田 浩・松下幸子
連載エッセイ/松井今朝子
【緊急寄稿】
◆彩瀬まる/川と星 東日本大震災に遭って
――一人旅で偶然訪れた福島。津波に呑み込まれた街で作家が体験した五日間
【好評連載小説】
浅田次郎/赤猫異聞
荒山 徹/蓋島伝――長宗我部元親秘録
飯嶋和一/星夜航行
池井戸 潤/鋼のアリス
大沢在昌/冬芽の人
今野 敏/転迷 隠蔽捜査4 最終回
小路幸也/荻窪 小助川医院
白川 道/神様が降りてくる
楡 周平/虚空の冠 最終回
橋本 紡/ハチミツ
原田マハ/夢をみた J'ai reve
宮部みゆき/ソロモンの偽証
山本一力/べんけい飛脚
荒山 徹/蓋島伝――長宗我部元親秘録
飯嶋和一/星夜航行
池井戸 潤/鋼のアリス
大沢在昌/冬芽の人
今野 敏/転迷 隠蔽捜査4 最終回
小路幸也/荻窪 小助川医院
白川 道/神様が降りてくる
楡 周平/虚空の冠 最終回
橋本 紡/ハチミツ
原田マハ/夢をみた J'ai reve
宮部みゆき/ソロモンの偽証
山本一力/べんけい飛脚
第二四回「山本周五郎賞」候補作発表
第八回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
第二三回「日本ファンタジーノベル大賞」募集要項
次号予告/編集後記
第八回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
第二三回「日本ファンタジーノベル大賞」募集要項
次号予告/編集後記
お知らせ
今月号の山田詠美「熱血ポンちゃんから騒ぎ」の扉ページからタイトルが抜けております。正しくは「カタストロフィに思う春」です。お詫び申し上げます。
編集長から
それでも
五月号では、下記のような編集後記を書いた。
今の気持ちを代弁するには、それを読んでいただくのが一番だと思い、今月は編集後記を引用することで、代わりにさせていただきたい。
編集後記
東日本大震災で被災したすべての方に、心よりお見舞い申し上げます。
本震があったとき、編集部は校了という雑誌の最終作業の真っ最中だった。長い地震だなと思っているうちに、どんどん揺れは激しくなり、机の上の棚が倒れそうになったり、壁面の書架から本がばらばらと崩れてきたりした。すぐにテレビをつけると、信じられないような光景が映っている。しばらくは、何が起きているのか分からなかった。正直言えば、いまだに何が起こっているのか、把握できている気がしない。
そして一ヶ月後、この号の校了中にも大きな余震があった。一月前とこの一ヶ月間を思い出し、余震がある度に、何ともいい難い不安が襲ってくる。東京でこうなのだから、被災地の方々の気持ちはいかばかりかと思う。
震災の後、著者や出版関係者と会うと、必ず「小説の意味」についての話になった。少なからぬ人が、小説に何ができるのかと自問した結果、言葉を失ったり、項垂れたりしていた。はっきりと、「何もできない」と口にする人もいた。
確かに、大きな力はないかもしれない。物語は、空腹を満たすこともなければ、喉の渇きを癒すこともない。残念ながら、眼前の光景を覆すことはできない。
だが、無力ではないと信じている。
かといって、こうした事態を前に、物語はたとえ一刻でも現実を忘れさせてくれるはずだ、などと言うつもりもない。忘れられるわけがない。それだけ、現実は過酷だ。
それでも、と敢えて言いたい。それでも、寄り添うことはできるはずだ、と。
何も小説に限らない。疲れて立ち止まり、うずくまりそうになったとき、映画や漫画や、胸のうちの思い出といった、そうした小さな「物語」の一つ一つが織り重なって、倒れないよう支える力の一つになってくれる、そう信じる。
ずっとそう思って本や雑誌を作ってきた。そして、こういうときだから、その気持ちをより一層強くして、自分の今いる場所で、自分のできることを、今まで以上に精一杯やっていこうと期している。
沢山の想いを託された物語が、一人でも多くの人に届くことを願って――。
今の気持ちを代弁するには、それを読んでいただくのが一番だと思い、今月は編集後記を引用することで、代わりにさせていただきたい。
編集後記
東日本大震災で被災したすべての方に、心よりお見舞い申し上げます。
本震があったとき、編集部は校了という雑誌の最終作業の真っ最中だった。長い地震だなと思っているうちに、どんどん揺れは激しくなり、机の上の棚が倒れそうになったり、壁面の書架から本がばらばらと崩れてきたりした。すぐにテレビをつけると、信じられないような光景が映っている。しばらくは、何が起きているのか分からなかった。正直言えば、いまだに何が起こっているのか、把握できている気がしない。
そして一ヶ月後、この号の校了中にも大きな余震があった。一月前とこの一ヶ月間を思い出し、余震がある度に、何ともいい難い不安が襲ってくる。東京でこうなのだから、被災地の方々の気持ちはいかばかりかと思う。
震災の後、著者や出版関係者と会うと、必ず「小説の意味」についての話になった。少なからぬ人が、小説に何ができるのかと自問した結果、言葉を失ったり、項垂れたりしていた。はっきりと、「何もできない」と口にする人もいた。
確かに、大きな力はないかもしれない。物語は、空腹を満たすこともなければ、喉の渇きを癒すこともない。残念ながら、眼前の光景を覆すことはできない。
だが、無力ではないと信じている。
かといって、こうした事態を前に、物語はたとえ一刻でも現実を忘れさせてくれるはずだ、などと言うつもりもない。忘れられるわけがない。それだけ、現実は過酷だ。
それでも、と敢えて言いたい。それでも、寄り添うことはできるはずだ、と。
何も小説に限らない。疲れて立ち止まり、うずくまりそうになったとき、映画や漫画や、胸のうちの思い出といった、そうした小さな「物語」の一つ一つが織り重なって、倒れないよう支える力の一つになってくれる、そう信じる。
ずっとそう思って本や雑誌を作ってきた。そして、こういうときだから、その気持ちをより一層強くして、自分の今いる場所で、自分のできることを、今まで以上に精一杯やっていこうと期している。
沢山の想いを託された物語が、一人でも多くの人に届くことを願って――。
小説新潮編集長 新井久幸
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
小説新潮とは?
小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。
時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。
小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。
目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。
言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。