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特集【恋人の聖地 Again】村山由佳/加藤千恵/山本文緒/マキヒロチ/畑野智美/井上荒野/角田光代

小説新潮 2013年12月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2013/11/22

発売日 2013/11/22
JANコード 4910047011234
定価 943円(税込)

特集【恋人の聖地 Again】

土地の記憶は、何によって思い出と名を変えるのか。景色、食べ物、風土、気候――そんな諸々すべてを引っくるめ、その土地での経験が総体が、単なる出来事を価値あるものとして記憶に留めるのだろう。
一人よりも二人の方が、何かが起こる可能性は高まるし、物事も関係性も多様になる。単なる知人だったり、気になる存在程度だった相手に、突然重みを感じることもあるかもしれない。
そしてそこは、生まれる、という意味での「恋人の生地」となり、二人の距離が縮まるにつれ、「聖地」に名を変えていく。
二〇一三年最後の号は、去年に引き続き、七つの恋人たちの風景をお届けする。

◆村山由佳/アンビバレンス
――写真家の比嘉と調香師の安藤――二人の男の間で揺れ惑う心と体は

◆加藤千恵/パノラマパーク パノラマガール
――卒業旅行、親友とロープウェイに乗る。別々の思いを抱えたまま

◆山本文緒/バヨリン心中
――無愛想で皺だらけの祖母にもかつてあったのだ、国境を超えた恋が

◆マキヒロチ/10年目の告白
――断っても毎年告白して来る同級生。今年の待ち合わせは思い出の場所で

◆畑野智美/黒部ダムの中心で愛を叫ぶ
――仁志君がまさかの大遅刻。彼の祖母との、奇妙な旅がはじまった!

◆井上荒野/最後の島
――海があかるすぎて調子がくるった男と、めちゃくちゃがやりたい女

◆角田光代/その、すこやかならざるときも
――こんな遠くまで来ることはなかった。人生に絶望していなければ

【読み切り時代小説】
◆青山文平/乳房
――養父への忠孝こそ使命と信じる娘に、急な嫁入り話が。戸惑いは隠せず

◆野口 卓/猫と火鉢
――一見使えないものが思わぬ役割を。騒動のきっかけは一匹の野良猫で

【連載第二回】
◆伊東 潤/死んでたまるか
――転んでもただでは起きない男、大鳥圭介。真摯な瞳が見ていたものは

◆樋口有介/金魚鉢の夏
――死んだ老婆は収入ゼロのはず。なのに、なぜ財布に“大金”が?

【好評グラビア・漫画】
◆グラビア 青山裕企/お仕事ちゃん
――子供が親の職場で働いてみたら? 大人気の写真家が写し出す現代の親子

◆シリーズ「しゃばけ漫画」
安田弘之/四ノ巻 しゃばけ異聞 のっぺら嬢
――毎月異なる漫画家がしゃばけの世界に新たな命を宿す、贅沢トリビュート。長崎屋に、“ちぇっくすかあと”姿の妖がやって来た!?

【好評連載小説】
あさのあつこ/ゆらやみ
安部龍太郎/冬を待つ城
飯嶋和一/星夜航行
乙川優三郎/ミラー テン・ストーリーズ
桐野夏生/抱く女
柴田よしき/転がらない球V 名前のない古道具屋の夜
杉山隆男/メイのいない五月
西村京太郎/生死の分水嶺・陸羽東線 最終回
野中 柊/波止場にて
乃南アサ/水曜日の凱歌
早見和真/イノセント・デイズ
原田マハ/暗幕のゲルニカ
森 達也/チャンキ

【連載エッセイ】
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人恋愛塾
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
椎名 誠/じいじいのヨロコビ
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
宮城谷昌光/随想 春夏秋冬
山田詠美/時計じかけの熱血ポンちゃん

第一回「新潮ミステリー大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

恋人の聖地 Again
 昨年のご好評に味を占め、今年も年末の特集は「恋人の聖地」をお贈りする。一口に「聖地」といっても、どんな出来事によって「聖地」と記憶されているかは、それぞれだろう。
 基本的には楽しい思い出だろうが、単純にそればかりではないかもしれない。関係性の決定打となったか、萌芽のきっかけとなったかでも、随分と意味合いが変わってくるはずだ。
 今年も、そんな様々な人間模様が、七つの場所を背景に描かれている。
 何度も行っているようなよく知っている場所でも、作中人物たちの目にはまったく違う景色が映っていたり、逆に、まったく知らない土地を、ずっと前から知っていたと錯覚するくらい身近に感じることもある。
 これからの季節、クリスマスのイルミネーションを眺めながら、舞台となった土地や、自分だけの「聖地」に思いを馳せていただけたらいいなと思っている。


小説新潮編集長 新井久幸

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小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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