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特集【医療小説解体新書】仙川 環/久坂部 羊/小笠原 慧/知念実希人

小説新潮 2014年6月号

(毎月22日発売)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2014/05/22

発売日 2014/05/22
JANコード 4910047010640
定価 947円(税込)

特集【医療小説解体新書】

「日本医療小説大賞」の発表に合わせて医療小説の特集を組むようになって、今年で三年目になる。たった三年でも、医療を取り巻く環境は大きく変わっているし、何より、自分を取り巻く環境が大きく変わった人も多いだろう。医者には無縁と思っていたのに病気になったり、あるいは身近な人が病に倒れたり。医療小説は今後ますます、時代と個人の変化を鋭敏に映す鏡となっていくに違いない。

◆仙川 環/看取り
――理想の看護を実現するため――割り切って選んだ道のはずだったが

◆久坂部 羊/地下室のカルテ
――ある患者の死により心を病んだ医者。真に誠実な医療とは何なのか

◆小笠原 慧/母子カプセル メンタルクリニック物語
――息子の非行に悩む母親。面談で明らかになった、その意外は原因とは

◆知念実希人/閃光の中へ 統括診断部の事件カルテ
――自殺の原因は「呪いの動画」? 双子姉妹にふりかかった災難とは

第三回「日本医療小説大賞」決定発表
[受賞の言葉、選評]海堂 尊/篠田節子/久間十義
[受賞作(抄録)]久坂部 羊『悪医』
ブックガイド 二〇一三年医療小説総括 東 えりか

特集【梅雨の晴れ間】

こちらも昨年に引き続き、テーマ競作の特集を企画した。六月という月号は、季節的には梅雨を連想させるが、裏を張って「晴れ」というお題である。そこから連想、発生するテーマで、必ずしも天気に限らず、自由に書いてもらおうというものだ。じめじめしがちな季節に、小説を読むことで心の晴れ間ができたらいいなと思っている。

◆田中兆子/薄紅色の母
――雨だと中止の後楽園球場の時代。晴れた日にだけ家に来る男は

◆こざわたまこ/紫陽花の濡れる季節に
――初恋のあの人が再婚する。二人だけの秘密が頭を離れない俺だったが

◆深沢 潮/アドバンテージ フォー
――女4人のランチ会で勃発した「マウンティング・バトル」の行方は?

◆森 美樹/眠る無花果
――母の死で徐々に変わる父娘の日常。ママはしあわせだったの?

【新連載】
◆中脇初枝/川にすむ神は水にくすぐられてわらう
――川は流れて海に出会う。その道を辿って、あたしは彼と再び出会った

◆西村京太郎/金沢が歴史を創った日
――ポツダム宣言と金沢を結ぶ点と線。起点はスイス駐在の海軍中佐

【連載第二回】
◆木内 昇/球道恋々
―― 一高野球再建のために担ぎ出された銀平、しかし早速前途多難で…

【好評読み切りシリーズ】
◆近藤史恵/そこからの景色
――耳を疑う宣告。おまえは補欠だ――日本チャンピオンのこの俺が?

◆今野敏/送検 隠蔽捜査外伝
――強姦殺人事件発生の報を受けた伊丹。すぐに容疑者が浮上するが

【シリーズ「しゃばけ漫画」】
◆岩岡ヒサエ/十ノ巻 はるがいくよ
――兄さんの分家が決まり、寂しい若だんなの元に赤ん坊が舞い込んで

【好評グラビア】
◆グラビア 青山裕企/お仕事ちゃん
―― 子供が親の職場で働いてみたら? 大人気の写真家が写し出す親子像

【連載コラム】
◆本の森
――新刊文芸書の中から、選りすぐりのお薦めを紹介
〈仕事・人生〉吉田大助/〈医療・介護〉杉江松恋/〈ホラー・ミステリ〉村上貴史

【好評連載小説】
あさのあつこ/ゆらやみ
阿刀田 高/頭のよい木 絵のない肖像6
安部龍太郎/冬を待つ城 最終回
伊東 潤/死んでたまるか
江上 剛/鬼忘島 金融捜査官・伊地知の密命
小川 糸/サーカスの夜に
桐野夏生/抱く女 最終回
柴田よしき/最後の選択I 名前のない古道具屋の夜
杉山隆男/メイのいない五月
乃南アサ/水曜日の凱歌
葉室 麟/鬼神の如く 黒田叛臣伝
原田マハ/暗幕のゲルニカ
森 達也/チャンキ

【連載エッセイ】
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人恋愛塾
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
椎名 誠/じいじいのヨロコビ
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
山田詠美/時計じかけの熱血ポンちゃん

第三十三回「新田次郎文学賞」決定発表
次号予告/編集後記

編集長から

すべては「選評」のなかに
 今年で三度目を迎えた「日本医療小説大賞」も、例年にも増して活発な議論が交わされた後、受賞作が決まった。何をもって「医療小説」と呼ぶのか、明確な定義はないが、選考の過程で議論されたことは、そのまま医療小説の何たるかを物語っていたように感じる。経過すべてをご覧いただけないのが残念だが、選評からもそれは感じていただけることと思う。
 この「日本医療小説大賞」に限ったことではないが、各種の文学賞は、その選評にこそあらゆる文学のエッセンスが詰まっている。自分の気付かなかった観点を指摘され、蒙を啓かれたことは数限りない。選考の場、そして選評は、どんな読書よりも実践的な勉強の場である。その思いは、選考会を経れば経るほど強くなっていく。
 この原稿を書いている数日後には、「山本周五郎賞」選考会が迫っている。受賞作発表と選評は次号に掲載されるので、楽しみにしていていただきたい。


小説新潮編集長 新井久幸

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小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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