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新潮文庫メールマガジン アーカイブス


 初めて発表した小説『泣くな研修医』がベストセラーに――。最新作『やめるな外科医 泣くな研修医4』までのシリーズ累計は45万部を越え、注目を集め続ける、現役医師・作家の中山祐次郎さん。彼が書きたかったもう一つのテーマは"中堅外科医たちのリアル"でした。
 2019年、『泣くな研修医』というタイトルのまっすぐで清々しい医療エンターテインメントを書き終えた中山さんが、新たに構想を始めたのが本書の原型でした。外科医のリアルを物語のかたちで伝えたい。中山さんはそう考え、「研修医」シリーズの執筆を進めるかたわら、試行錯誤しつつ、この作品を書き続けてゆきました。
 中山さんからメッセージを預かっています。

 刊行によせて

 プロの外科医が、いのちの最前線でどのような日々を送っているのか。映画にもドラマにもなく、ドキュメンタリーでも描くことのできない「本物」を描きたかった。まさにプロの外科医たる自分が、手術室で何を思いメスを持ち、何に慌て、何に興奮しているのか。そしてきわめて日常的な「患者の死」にどう対峙し、どう感情を処理しているのか。
 この物語は、僕にとってごくごく平常の、毎日のことである。無理にドラマチックな話を書くつもりはない。ただ日記のように、いつものことを書きたかったのだ。ありのままに、なるべく正直に。それがどんなに過酷で、そしてどんなに素晴らしいかを描きたかった。
 ずっと憧れていた。超一流の技術を持つ外科医ふたりが、文字通りいのちを助け合い、慰め、思い遣る。そんな相棒が、欲しかった。しかし叶うことはなかった。そんな思いを、剣崎と松島のふたりに込めた。

 中山さんの長年の思いはこの作品で果たされました――。

 剣崎啓介と松島直武というふたりの外科医が、いのちの最前線から、あなたに医師のリアルを伝えます。

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2022年06月15日  


 人間にとって最も大切なものって、何だと思いますか?
「お金」でしょうか。それとも「地位」や「権力」?
「健康」「愛」「家族」などと答える方も多いでしょう。

 しかし百田尚樹さんはこう言い切ります。
 人間にとって最も大切なのは「時間」であると。
「金」も「地位」も「権力」も「健康」も「愛」も「家族」も、すべて時間が変換されたものだ、と。

 人間の営みを「時間」という観点で捉えたのが、この『成功は時間が10割』です。
 読めば「ナルホド!」と思わず膝を打ちたくなる、目からウロコの思考法を一部紹介すると――。

〇社会は「時間」の売買で成り立っている
 仕事で得る対価とは、仕事に費やした時間を売った結果、にほかなりません。逆に、あなたがお金を払うのは、他人が時間を費やして行った仕事(ものやサービス)に対して、なのです。つまり私たちの社会では「お金」ではなく「時間」をやりとりしているのです。

〇「仕事ができる人」とはつまり時間を凝縮できる人
 同じ仕事を一日でこなすのと一週間でこなすのとで対価が同じならば、一日でこなしたほうが、仕事の価値が上がります。そして「才能」というのは、同じことを人より短い時間でこなせる能力ともいえるでしょう。

〇成功する人は、「今やるべきことをやる」
 成功者と言われる人の共通点は、「時間を無駄にしない」ということ。言い換えると「やることの優先順位を間違えない」ということです。

 いかがでしょうか。ほんの一部をご紹介しただけでも、一分一秒を大切にせねば、と気が引き締まる思いがしませんか?
 実際、百田尚樹さんほど、時間を大切にする人はいません。
 執筆や配信などをこなすハードスケジュールのなかで、どんな隙間時間も決して無駄にせず、アウトプットやインプットの時間に費やしています。その合理性とパワフルさを、担当編集者はいつも見習いたいと思っています。
 皆様もこの本を読めば、時間というものの尊さを実感し、充実した毎日が送れるはずです!

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2022年06月15日   今月の1冊


 そもそも言い訳とは何かというと、言い逃れであり、弁解、釈明です。よろしくない事態や非難されるべき原因を作った張本人の立場から逃れるための説明が言い訳です。自分をよく見せようとする本能を起点にしているので、いじましい行為と思われ、大方軽蔑の対象になります。
 しかし、言い訳は言い方次第で、味わい深いものに変化するのも事実です。
 フィアンセに二股疑惑を掛けられた芥川龍之介。手紙の失礼を体調のせいにしてお茶を濁した太宰治。納税を誤魔化そうとした夏目漱石。恋人との間で奇妙な謝罪プレーを繰り広げる谷崎潤一郎。浮気をなかったことにしようとする林芙美子。息子の粗相を近所の子供のせいにした親バカ阿川弘之......。
「こちらは悪くありません」「こちらも大変だから許して」を流麗美文で綴り、思わず「いいよ」と折れてしまう、文豪に言い訳の奥義を学びます。

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2022年05月15日   今月の1冊


 石田三成という名前を聞いて、何を連想するでしょうか。
「関ヶ原合戦の西軍大将だったのに惨めに大敗した」とか「官僚的で、人望がなかった」など、あまりいいイメージを持たれていないかもしれません。
 確かに、多くの小説などでは肯定的に描かれてきたとは言いにくい。もっとも、関ヶ原合戦以後、盤石の権力を手中にした徳川にとっては、敵の大将が「魅力ある人物」であってはいささか困ったのかもしれません。
 そもそも、本当に「人望がなかった」のであれば、西軍の大将になれたはずもないのです。では、石田三成という武将の魅力とは何であったのか。
 武に秀でていたわけでもなく、感情豊かな能弁家でもなかった三成が、なぜ人を惹きつけたのか。これは大きな「謎」でしょう。本書は、小説でしか描けない三成像によって、それに一つの解答を与えているのです。
「賤ケ岳の七本槍」と称せられる七人の武将の目を通して、次第に浮かび上がってくる石田三成の知られざる姿。戦国乱世という苛烈な時代を受け入れつつ、その先に、三成が思い描いていた「この国のグランドデザイン」ともいうべき大きなかたち......。彼が心に秘めていた志や、「七本槍」だけに見せた本音、理の明晰さを信じる姿は、きわめて先駆的で魅力的です。三成が放つ言葉には、著者・今村翔吾さんの熱い想いが乗り移り、まったく新しい石田三成となっています。
 それだけではありません。今村さんの三成像は、天下国家を語るだけの存在ではないのです。五奉行の一人として国のことを考えるのは当然のことでしょう。しかし本作品が秀逸なのは、三成が矛盾と弱さを抱えた人間にも細やかな目を向け、驚くほど感情豊かな言葉を発しているところにあります。

「苦しい日々だったな。辛かったろう」(「五本槍 蟻の中の孫六」より)

「権平......お主が小馬鹿にされ、私たちが口惜しいと思わなかったとでも思うのか」(「六本槍 権平は笑っているか」より)

 思わず目頭を熱くしてしまうのは、これらの場面だけではありません。本書の一番最後で放たれる市松(福島正則)のセリフに、万感胸に迫らぬひとはいないでしょう。と同時に、石田三成という、はるか遠くを見ようとしていた清々しき武将に出会えた喜びもまた、湧いてくるのではないかと思うのです。

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2022年05月15日   今月の1冊

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 海上自衛隊の花形である護衛艦。最前線で国の安全を守り、災害救助にも活躍しています。では、その艦(ふね)をどのような人々が動かしているのか。内実を知る方は少ないでしょう。我々にはブラックボックスにさえ感じられる護衛艦ですが、本シリーズではそこを職場とするさまざまな人々を丁寧に描いてゆきます。
 さらに近年は各自衛隊において女性の進出が目覚ましく、海上自衛隊でもさまざまな部署で女性たちが重要な役割を担っています。少数ながら艦長を務める幹部もおり、本書の主人公もそのひとり。
 早乙女碧2等海佐は、国立大学教育学部を卒業後、江田島の幹部候補生学校で学び、卒業後は幹部としてのキャリアを積んでゆきます。かつて練習艦艦長を務め、操船のセンスにも恵まれた彼女は海上での勤務を熱望し続けるものの、市ヶ谷の海上幕僚監部で人事調整という複雑なデスクワークに頭を悩ませる日々を送っていました。「海に戻るチャンスはもうないのか......」。諦めかけていたところに、あおぎり艦長への異動を打診され、喜び勇んで、懐かしい呉の地を踏みしめます。
 あおぎりは、全長137メートル、ヘリコプターを搭載する本格的な護衛艦で、早乙女は、約170名の部下の命を預かるという重責を担うことに。いよいよ待ち望んでいた初出港の日。でも、その直前、部下1名が姿を消していたことを知ってしまうのです。本来であれば、捜索を部下に任せ、報告を艦内でじりじりと待つことになるのですが、彼女はある決断をします。護衛艦はどのような世界なのか。艦をひとつに束ねる艦長の職責とは――。この1冊が、ブラックボックスを照らします。
 第2巻『試練―護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧―』では、広報活動の一環として、100名の民間人を乗せ、スケジュールを順調にこなしつつ瀬戸内海を航行するあおぎりに、海自練習機からの遭難信号が飛びこんできます。時を同じくして、乗船中の民間人男性が倒れ、即時移送が求められる疾患と判明。2つの事件に伴う多重の問題に、新任艦長・早乙女碧はどう立ち向かうのか。指揮官の苦悩と決断。さまざまな部署のプロフェッショナルたちが危機を打開してゆく様子。サスペンス小説の醍醐味が味わえる長編となっています。
 著者の時武里帆さんは、主人公・早乙女碧と同様、防衛大学校ではなく、一般大学から海上自衛隊へと飛び込んだという経歴の持ち主。ご自身の経験に本作のための取材を重ねて、日本初の女性艦長シリーズがここに船出をしました。
 警察小説や企業小説など組織を描く小説を愛する読者にも、男性社会で奮闘する女性を描くお仕事小説に共感する読者にも、自信を持ってオススメできる2作です。


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2022年04月15日   今月の1冊