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ラヴクラフト三大長編の一作が、新訳で甦る!


 若き日より幻想文学に耽溺してきた、英文学者・小説家の南條竹則さんが満を持して手がけた、ラヴクラフト作品の編訳シリーズは、2019年刊行の『インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―』から始まりました。
 刊行直後、新潮文庫からラヴクラフト作品が刊行されたことについて大きな反響があり、また訳文も高い評価を得て、たちまち増刷。ご好評にお答えするかたちで、『狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―』『アウトサイダー―クトゥルー神話傑作選―』を刊行してきました。
 今回の選集の表題作「チャールズ・デクスター・ウォード事件」はクトゥルー神話の系譜に位置づけられるものです。そして、並録されている「戸口にいたもの」は「インスマスの影」の後日譚にあたる短編です。
 主人公が地底に足を踏み下ろしてゆく――そこには出会ってはいけない存在が蠢いている。ラヴクラフトが終生抱いていたヴィジョン。今回の新刊に収録された作品群にもそんな幻想が色濃く投影されています。
 そして、ヨーロッパの古都への憧憬も――。
 古今東西の読者を虜にしてきた〈闇の巨匠〉ラヴクラフト、その作品世界を彼の魂を深く覗き込んだ南條竹則さん渾身の新訳にてお届けします。

 それからしばらく音信が途絶え、十月にウォード夫妻はチェコスロヴァキアのプラハから来た絵葉書を受け取った。それによると、チャールズはある非常な高齢の人物――中世のいとも興味深い知識を有する最後の生存者といわれる――と面談をする目的で、この古都にいるのだという。

(「チャールズ・デクスター・ウォード事件」より)

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2025年05月15日   今月の1冊
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