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ドナルド・キーン著作集 第一巻 日本の文学

ドナルド・キーン/著 、吉田健一/訳 、篠田一士/訳 、大庭みな子/訳 、平野勇夫/訳

3,960円(税込)

発売日:2011/12/22

  • 書籍

日本文学が「どれほど面白いか」を、碩学があなたのために解き明かす!

人麻呂から正岡子規まで、紫式部から樋口一葉まで、そして世阿彌から近松、黙阿彌まで、詩や小説や戯曲が織りなす豊かな日本文学。その深い深い面白さを、“根っからの日本人”ドナルド・キーンが書き尽くした。国際的百科事典「エンサイクロペディア・ブリタニカ」で日本文学史を詳しく紹介した項目も原文(英文)で特別収録。

目次
日本の文学

日本の文学 吉田健一訳
 I 序章
 II 日本の詩
 III 日本の劇
 IV 日本の小説
 V 欧米の影響を受けた日本の文学

海外の万葉集
近松とシェイクスピア――比較情死論
近松と欧米の読者 吉田健一訳
啄木の日記と芸術
日本と太宰治と『斜陽』
解説 三島由紀夫

日本文学散歩 篠田一士訳
まえがき

室町編
 一休
 宗長
 世阿彌
 正徹

戦国編
 里村紹巴
 大村由己
 細川幽斎
 木下長嘯子
 松永貞徳

江戸編
 宝井其角
 紀海音
 菅茶山
 橘曙覧
 為永春水
 平田篤胤

明治編
 大沼枕山
 仮名垣魯文
 河竹黙阿彌
 東海散士
 樋口一葉
 正岡子規

古典を楽しむ 私の日本文学
『源氏物語』と私
 日米開戦前夜の出会い
 不似合いな場所で読む『紫式部日記』
 それでも原文で読みたい
 すばらしい“ウエーリ源氏”
 現実よりも真実な美の世界
 私の紫式部像

平安後期の物語の新しさ
 『源氏物語』との相似と相違――『狭衣物語』『夜の寝覚』
 物語にみる「本歌取り」――『いはでしのぶ物語』『とりかへばや物語』
 反『源氏物語』――『松浦宮物語』『いはでしのぶ物語』
 擬古物語の面白さ

能の楽しみ
 伝統と美――能舞台のこと
 自在な時間と空間――時・所・人のこと
 非写実の美――面と装束のこと
 文学として、演劇として
 能がわかりにくいわけ

『おくのほそ道』の世界
 「日記」と「日記文学」の違い
 日記の虚構と詩歌の真実
 芭蕉の旅と歌枕
 永遠に遺るもの
 『おくのほそ道』を行く

世界のなかの近松――悲劇の条件について
 “日本のシェイクスピア”
 広く知られた『曽根崎心中』
 人形浄瑠璃の型と近松の試み
 非英雄的な主人公
 喜劇を悲劇に変えるもの

歌舞伎における改作の功罪
 永遠のテーマをめぐる改作
 シェイクスピアの場合
 観阿彌を改作した世阿彌
 近松門左衛門の場合
 『心中天の網島』と『心中紙屋治兵衛』
 『冥途の飛脚』と『仮名手本忠臣蔵』の改作
 原作上演の試み

外国人に俳句がわかりますか?
 俳句翻訳の意外に短くない歴史
 翻訳にあたっての問題点の数々
 英語で俳句をどう作るか
 俳句の魅力

日本古典文学の特質
 散文と詩歌を分けるもの
 奇数の文化と詩歌
 「本歌取り」の思想
 余情の文学
 座の文学として
 日記から生まれた主観的な物語
 だれもしゃべらなかった言葉で書く
あとがき

古典の愉しみ 大庭みな子訳
第一章 日本の美学
  暗示 Suggestion
  不均整 Irregularity
  簡素 Simplicity
  無常 Perishability

第二章 日本の詩

第三章 日本の詩の有用性

第四章 日本の小説

第五章 日本の演劇

日本文学の国際性 平野勇夫訳
太平洋戦争まで
自由の享受
翻訳者たちの活躍
海を渡る日本文学・日本文化
Japanese literature
解題

人名索引/作品名索引

書誌情報

読み仮名 ドナルドキーンチョサクシュウ01ニホンノブンガク
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 ドナルド・キーン著作集
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 576ページ
ISBN 978-4-10-647101-8
C-CODE 0395
ジャンル 全集・選書
定価 3,960円

著者メッセージ

 日本人よ、
 勇気をもちましょう
ドナルド・キーン

 かつて川端康成さんがノーベル文学賞を受賞したとき、多くの日本人が、こう言いました。「日本文学が称讃してもらえるのは嬉しいが、川端作品は、あまりに日本的なのではないか」。
 日本的過ぎて、西洋人には「本当は分からないのではないか」という意味です。分からないけれど、「お情け」で、日本文学を評価してくれているのではないかというニュアンスが含まれていました。
 長年、そう、もう七十年にもわたって日本文学と文化を研究してきて、私がいまだに感じるのは、この日本人の、「日本的なもの」に対する自信のなさです。違うのです。「日本的」だからいいのです。
 昨年、地震と津波に襲われた東北の様子をニューヨークで見て、私は、「ああ、あの『おくのほそ道』の東北は、どうなってしまうのだろう」と衝撃を受けました。あまりにもひどすぎる原発の災禍が、それに追い打ちをかけています。
 しかし、こうした災難からも、日本人はきっと立ち直っていくはずだと、私はやがて考えるようになりました。それは、「日本的な勁(つよ)さ」というものを、心にしみて知っているからです。昭和二十年の冬、私は東京にいました。あの時の東京は、見渡すと、焼け残った蔵と煙突があるだけでした。予言者がいたら、決して「日本は良くなる」とは言わなかったでしょう。しかし、日本人は奇跡を起こしました。東北にも同じ奇跡が起こるのではないかと私は思っています。なぜなら、日本人は勁いからです。
 私は今年六月で九十歳になります。「卒寿」です。震災を機に日本人になることを決意し、昨年、帰化の申請をしました。晴れて国籍がいただけたら、私も日本人の一員として、日本の心、日本の文化を守り育てていくことに微力を尽くします。新しい作品の執筆に向けて、毎日、勉強を続けています。
 勁健(けいけん)なるみなさん、物事を再開する勇気をもち、自分や社会のありかたを良い方向に変えることを恐れず、勁く歩を運び続けようではありませんか。

著者プロフィール

ドナルド・キーン

Keene,Donald Lawrence

(1922-2019)ニューヨーク生れ。コロンビア大学名誉教授。日本文学の研究、海外への紹介などの功績によって1962(昭和37)年、菊池寛賞、1983年、山片蟠桃賞、1990(平成2)年、全米文芸評論家賞、1993年、勲二等旭日重光章を受章。2002年、文化功労者に選ばれる。2008年、文化勲章を受章。2012年、日本国籍を取得。『百代の過客』(読売文学賞、日本文学大賞)『日本人の美意識』『日本の作家』『日本文学史(全18巻)』『明治天皇』(毎日出版文化賞)など著書多数。

吉田健一

ヨシダ・ケンイチ

(1912-1977)ケンブリッジ大学中退。ポー、ヴァレリー等の翻訳の他、『英国の文学』『文学概論』『乞食王子』等の優れた批評、随筆で知られる。

篠田一士

シノダ・ハジメ

1927(昭和2)年、岐阜市に生まれる。旧制松江高校から東京大学英文科に進み、同大学院修了。大学で一級上の丸谷才一、中山公男らと「秩序」を発刊。都立大学人文学部で教鞭をとる傍ら精力的な評論活動を展開する。幅広い文学的教養と博識、精緻な分析で独自の地位を占め、詩歌、音楽の評論でも傑出していた。主な評論集に『邯鄲にて』『現代イギリス文学』『傳統と文學』『音楽の合間に』『現代詩人帖』など。『日本の現代小説』で毎日芸術賞受賞。

大庭みな子

オオバ・ミナコ

(1930-2007)1930(昭和5)年東京生れ。敗戦の夏、原爆後の広島市に救援隊として動員される。津田塾大学卒業。1959(昭和34)年10月、アメリカ、アラスカ州シトカに夫の勤務のため移り住む。1968年、群像新人賞の「三匹の蟹」で芥川賞を受賞し、作家生活にはいる。1970年帰国。著書に『ふなくい虫』『浦島草』『寂兮寥兮』(谷崎賞)『啼く鳥の』(野間文芸賞)『王女の涙』『津田梅子』(読売文学賞)『風紋』など。川端賞受賞の短編に「海にゆらぐ糸」「赤い満月」がある。2007(平成19)年5月、逝去。

平野勇夫

ヒラノ・イサオ

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