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前代未聞のロック×ミステリ(新潮文庫編集部 D・A)


 あなたにも、きっと、好きなロックバンド、ミュージシャンがいることでしょう。私にも数え切れないくらい、好きなバンドやミュージシャンがいます。

 ここに、殺人事件という嵐に襲われ、崩壊寸前の人気ロックバンドをめぐる、ひとつの物語が誕生しました。

「夏の100冊」でおなじみ『ブラバン』の著者である津原さんはバンドやソロなどのスタイルで活動を続ける、現役のミュージシャンでもあります。打ち合わせの合間、ロックについて雑談するなかで、
「津原さんに、ぜひ、ロックバンドをめぐるストーリーを描いてほしい」
 という気持ちが育ってゆきました。
 そして、ある年の某日、その思いをお伝えしました。

 音を発することのない小説というメディアから旋律を響かせるというのはいかに困難なことか。存在しないロックバンドに生命を与えることがどんなに大変か。思い返せば、乱暴無謀な依頼でした。

 そして――、昨年10月末、〈クロニクル・アラウンド・ザ・クロック〉が新潮文庫の新シリーズとしてスタートしました。

 第一巻『爛漫たる爛漫』の原稿を読みはじめたとき、私の耳にはロックバンド爛漫の演奏する姿が見えました。彼らが全身全霊で奏でる曲の数々が確かに聞こえました。物語が終わったとき、ギターの残響を味わいながら、しばらくデスクから動けませんでした。

 ここで、主要な登場人物を紹介しましょう。



 ロックバンド爛漫は、カリスマ的人気を誇ったボーカル&ギター新渡戸利夫を何者かに殺害され、その活動を停止しました。なりゆきでその謎を追うことになったのは、不良女性音楽ライターのひとり娘にして、絶対音感の持ち主である、向田くれない。彼女は、利夫の兄で爛漫の影のメンバーであった新渡戸鋭夫と共に、事件の真相に迫ってゆきます。バンドの再生への道のりと、ミステリの二つの物語が、極限まで削り込まれたタイトな文章で、並行して綴られてゆきます。

 第一弾に続き、第二弾『廻旋する夏空』が現在発売中です。爛漫のライブ会場に、ぜひ、足を踏み入れてみてください。

(新潮文庫編集部 D・A)

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2013年02月12日   今月の1冊
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