河合隼雄物語賞受賞の西加奈子、最初で最後の超全身恋愛小説!
Yonda?Mailを読んでくださっている皆さん、こんにちは。
今回は、記念すべき第一回河合隼雄物語賞を受賞された西加奈子さんの最新の文庫『白いしるし』をご紹介します。
皆さんは「ああああああ。」と声に出して叫びたくなるような恋愛をしたことはありますか?
この物語の主人公、夏目は売れない絵を描いて暮らす32歳♀。人を好きになるたび思いっきりのめりこんで、手痛い失恋を重ねた結果、しばらく恋を遠ざけていました。
けれど、友人の瀬田に誘われて行った間島くんの個展で、彼の絵を見た瞬間、すこーんと心を持っていかれてしまいます。走り出した夏目は間島まっしぐら。少しずつ近づく二人の距離。
ところが夏目の恋には、大きな大きな障壁がありました。それは――
間島にはどうしても、側にいなければいけない、別の女性がいたのです。ダメだダメだと言い聞かせても、彼を想う気持ちは募り、彼を失う恐怖は大きくなっていきます。
本気で誰かを好きになるとき、私たちは怖さを抱える。
そして、恋が終わりに向かっていることを知りながら過ごす時間は身体を壊すほどに苦しい。真剣に恋愛をしたことがあるひと、失恋をしたことがあるひとなら誰でも、それぞれの苦い記憶を思い起こすはずです。
西加奈子さんは自身初の恋愛小説としてこの作品を全身で書き上げ、もう今後恋愛小説を書くことはないだろう、と恋愛小説絶筆宣言されました!
痛みの先の希望を感じさせてくれるこの作品、カバー写真の猫の可愛さに騙されて、ぜひ手に取ってみてください。
(新潮文庫編集部 S・T)
2013年07月10日 今月の1冊