ホーム > 雑誌 > 雑誌詳細:新潮 > 雑誌詳細:新潮 2025年7月号

【新連載】村田喜代子「その後の桜」
中沢新一「神の耳――音楽という謎」

新潮 2025年7月号

(毎月7日発行)

1,200円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2025/06/06

発売日 2025/06/06
JANコード 4910049010754
定価 1,200円(税込)

【新連載小説】
その後の桜(第1回)レンズ村田喜代子
夫の一周忌を終えた春、わたしは双眼鏡の虜になった。死の世界を想起させる静謐な空間、もう戻れない時空。

【新連載評論】
神の耳――音楽という謎(第1回)/中沢新一
南米アマゾンの先住民は、モーツァルトの曲になぜ畏怖の感情を覚えたか? 音楽の奥に潜む創造神を探す旅。
【創作】
近江、川の流れが始まるところ黒川 創
先輩作家トミオカさんは語っていた。若沖と芭蕉はよく似た暮らしぶりなのに、どうして違って感じられるのかと。
【掌篇】
狐狸筒井康隆
【連作】
良心的兵役拒否 [3]風船のパパ市川沙央
父は産道の出口で待っていてくれなかった。双生児しのぶとアケルの分かり合えない関係と、迫りくる戦争の影。

からの旅 3小山田浩子
祖父が吸った野生の大麻、「おとめの腰湯」という名のチーズ。異国で不意に質感を伴った記憶がよみがえる。
第38回 三島由紀夫賞発表
【受賞作】橘の家(一部掲載)/中西智佐乃
【選評】川上末映子/高橋源一郎/多和田葉子/中村文則/松家仁之
◆受賞記念エッセイ 悪いくせお気楽なくせ
【対談】
中動態と「行為のコミュニズム」國分功一郎×伊藤亜紗
創作は個人を超えた共同作業である。規則の外側を意識した対話から、次なる思想のヒントが浮かび上がる。
【評論】
いかに敗北するか――没後五十五年目の三島由紀夫入門私説高橋睦郎
三島は女性原理に抵抗するため強靭な文体を求めた。晩年を知る詩人による、同性愛者としての批評と告白。

黙殺された『日本文学史』――ドナルド・キーンの「代表作」を検証する角地幸男
全十八巻にもなるこの労作は、長年あまりに無視されてきた。読みどころの紹介とともに、著者の目諭見を探る。

メキシコ湾スケッチ今福龍太
奇矯な米国大統領令が覆い隠そうとするクレオールの豊かな文化。旅人の立場で名付けの歴史を書き留める試み。
【ノンフィクション】
触れるポートフォリオ(第9回)ラスト・ダンス(前篇)島本理生
【リレーコラム 街の気分と思考】
◆掃除嫌いな幽霊/石沢麻依
◆三茶で待つ/ハラサオリ
【新潮】
◆寝ても忘れないこと/安藤 奎
◆小説を書かせ続ける人/小山田浩子
◆なんとなく、わかる。――ファッションとは何か/長畑宏明
【書評委員による 私の書棚の現在地】
◆ジュンパ・ラヒリ『翻訳する私』(小川高義 訳)/九段理江
◆町田 康『俺の文章修行』/山下澄人
【本】
◆村田喜代子『美土里倶楽部』/石井遊佳
◆村田沙耶香『世界99』/郷原佳以
◆中西智佐乃『長くなった夜を、』/芝 夏子
◆福嶋亮大『世界文学のアーキテクチャ』/古川日出男
【連載コラム】
◆料理の人類学のかたわらで(第12回・完)/藤田 周
料理は食べてもわからない
【連載評論】
みやびとまねび――日本クラシック音楽史(第7回)/片山杜秀
独りの椅子――石垣りんのために(第14回)/梯 久美子
小林秀雄(第118回)/大澤信亮
【連載小説】
マイネームイズフューチャー(第4回)/千葉雅也
Ifの総て(第13回)/島田雅彦
(第13回)/宮本 輝
荒れ野にて(第87回)/重松 清
第58回新潮新人賞 応募規定
執筆者紹介

この号の誌面

編集長から

村田喜代子「その後の桜」
中沢新一「神の耳――音楽という謎」

◎ベテランが新境地を拓く連載二本を開始する。村田喜代子「その後の桜」。その後とは作家自身を思わせる主人公が配偶者を亡くしてからの時間を指し、同級生の藤井君へ宛てたメールの形で綴られる物語には、齢八十を迎えた書き手の切実な孤独が滲む。生活に刺激をもたらすのは、夫の遺品である双眼鏡だ。「わたし」はレンズを通して自宅の向かいの谷を眺めるうち、そこに立つ桜のあでやかさと不吉さが混然となった魅力に気づく。本物の世界以上に美しい、レンズの中の静謐な空間。双眼鏡はいずれ過去にも、夫のいる彼岸にも向けられることになるだろう。喪失の先を描く重要作となるに違いない◎中沢新一「神の耳――音楽という謎」は、森羅万象を論じてきた著者による初の本格音楽論。南米オリノコ川の先住民はモーツァルトの交響曲を聴き、なぜ畏怖の感情を覚えたのか? その問いから西欧知識人の盲点を突くように音楽の神聖さと創造神の姿を探る、新たな「精神の考古学」が出発する。

編集長・杉山達哉

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞

新潮

全国の書店、または以下のネット書店よりご購入ください。

※書店によっては、在庫の無い場合や取扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

  • amazon
  • 楽天ブックス
  • 7net
  • e-hon
  • TSUTAYA
  • kinokuniya