【創作】今村夏子「先生のおりがみ」
【特集】歩く風景 温 又柔 瀬尾夏美 パク・ソルメ 榎本 空
新潮 2026年4月号
(毎月7日発行)
| 発売日 | 2026/03/06 |
|---|---|
| JANコード | 4912049010468 |
| 定価 | 1,200円(税込) |
【創作】
◆先生のおりがみ/今村夏子
学童保育所・涼風館には、るいのほかにも一人で過ごす人がいた。子供の目を通し描かれる、残酷で優しい世界。
◆丹心(200枚)/仁科 斂
建築家の鹿野川航は、中国・寧波郊外の爛尾楼を美術館に設計し直してほしいと依頼を受ける。現地での折衝を任された助手のレンは、次第にQ親子の陰謀に巻き込まれていき──多声的な文体で大国の今を捉えた渾身作!
◆姥皮/三国美千子
女系の強い我が家には、大叔母のあけ美さんから譲り受けた「皮」があった。性愛と生殖の不気味を穿つ奇譚。
【掌篇】
◆カナール・オ・サン/筒井康隆
【連作】
◆ツクモガミ/高山羽根子
◆あなたたちはわたしたちを夢みる/川上弘美
■■ 特集 歩く風景 ■■
◆「略歴」の彼方/温 又柔
幼い頃住んだ台北のマンション「九鼎」。排気ガスと線香の匂い。失いかけた記憶が「略歴」の間から溢れ出す。
◆すべての海を思う/瀬尾夏美
広島から釜山、対馬へ。戦後80年の夏。災禍の痕跡を辿り、数多の人と出会った彼女は、未来に向けて祈る。
◆鳩の翻訳/パク・ソルメ(斎藤真理子 訳)
私は新潟への旅で韓国の港町・束草を思い出していた。訳すこと、何かを移し替えることの欲望とその困難。
◆終わりなき遊歩/榎本 空
【批評】
◆『ワン・バトル・アフター・アナザー』と『ヴァインランド』──分断をすり抜けるピンチョンに共嗚するアンダーソン/佐藤良明
【連載】
◆教室で読む文学(第2回)横光利一「蠅」/池澤夏樹×田口耕平
横光がわずか一五〇〇字の作品に込めた企み。「同化読み」のセオリーを超えたところで、新たな技法に迫る。
◆大滝詠一と私(第3回)/湯浅 学
少年漫画誌がカルチャー誌だった時代、日本語ロックの準備は整った。そして松本隆は都市感覚を歌詞に刻む。
◆うたと夢の出会う場所(第2回)子守歌/大森静佳
◆光源の旅(第3回)チベット・ラサとティンリー/石川直樹
【リレーコラム 街の気分と思考】
◆いつ何時、の街/ブレイディみかこ
◆歩き疲れるその日まで/宇垣美里
【新潮】
◆季節/石黒麻衣
◆手で書くということ/久栖博季
◆才能の民主化とAI/工藤郁子
◆撤退戦としてのリベラリズム/下西風澄
【書評委員による 私の書棚の現在地】
◆リチャード・ドーキンス『虹の解体──世界はなぜ美しいのか』(福岡伸一 訳)、スティーヴン・クレイン『スティーヴン・クレイン全詩集』(管 啓次郎 訳)/井戸川射子
◆ミア・コウト『夢遊の大地』(伊藤秋仁 訳)/豊永浩平
【本】
◆ナスターシャ・マルタン『熊になったわたし──人類学者、シベリアで世界の狭間に生きる』(高野 優 訳)/服部文祥
◆鴻巣友季子『なぜ日本文学は英米で人気があるのか』/速水健朗
◆ハン・ガン『光と糸』(斎藤真理子 訳)/マーサ・ナカムラ
◆又吉直樹『生きとるわ』/山下澄人
【連載小説】
◆痴れ者(第4回)/上田岳弘
◆山吹散るか ほろほろと(第9回)/辻原 登
◆マイネームイズフューチャー(第11回)/千葉雅也
【連載評論】
◆雅とまねび──日本クラシック音楽史(第15回)/片山杜秀
◆独りの椅子──石垣りんのために(第20回)/梯 久美子
◆小林秀雄(第126回)/大澤信亮
第58回新潮新人賞 応募規定
執筆者紹介
この号の誌面
編集長から
今村夏子「先生のおりがみ」
特集「歩く風景」
温又柔×瀬尾夏美×パク・ソルメ
◎無垢な目を通して、社会に馴染めない存在を浮かび上がらせる。時に残酷なまでの子供視点のうまさにおいて、今村夏子氏の右に出る者はいないだろう。「先生のおりがみ」の舞台は、学童保育所・涼風館。母親の都合でここへ預けられることになった小学一年生のるいは人見知りで、友達を作れずにいる。そして彼女は同じ部屋にもう一人、孤独な人間がいることに気付く。それが奥野先生だ。口調の厳しい奥野先生は子供たちに疎まれ、他の大人と談笑することもない。そこに夏休み限定のアルバイト指導員として、誰からも愛されるかける先生がやってきてから、人間関係にわずかな変化が生じる──この物語はおそらく、読者が「こうあってほしい」と願う方向には進まない。だが、そのままならなさこそ、作家の世界との誠実な向き合い方の現れなのだ◎温又柔氏が台北を、瀬尾夏美氏が広島~釜山~対馬を、パク・ソルメ氏が東京と新潟を旅して作品を書き上げた。「歩く風景」のなかに未知の感情が萌芽する。
編集長・杉山達哉
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。














































