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【創作】畠山丑雄「叫び」
【特別企画】尾崎世界観×ニシダ「ダブルスタンダード」

新潮 2025年12月号

(毎月7日発行)

1,200円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2025/11/07

発売日 2025/11/07
JANコード 4910049011256
定価 1,200円(税込)

【創作】
叫び(170枚)/畠山丑雄
一九三八年、川又青年は星空を夢見て大陸へと渡る。約九十年後、彼の故郷・大阪の茨木で「先生」と出会った早野ひかるは銅鐸をつくり、歴史を学び、恋をしていた──幻と現実の二つの万博を貫く、響きに満ちた野心作!
特別企画
■■ ダブルスタンダード ■■
【創作】
オケラカイドー尾崎世界観
ベガと競馬場へ行く日曜日。背中に誰か乗っているような重さで、ぼくはもうひとつのレースを走る。

けれど思い出すニシダ
女と同棲するきみは、人生の局面がにじりよる最中にも、創作の神に肩を叩かれたくて必死だった。
【対談】
二足のわらじでどう歩く?尾崎世界観×ニシダ
余技とは言えぬほど真剣に小説と向き合う二人。互いの作品を読みつつ考える、この先の勝負の仕方。
【掌篇】
T字路の奥筒井康隆
【連作】
大阪で海に至る黒川 創
若冲についての小説に取り組んでいた九〇年代。トミオカさん、父、震災の記憶が「表街道」たる川へ流れ込む。

ガルダ・ロジスティクス高山羽根子
ついにあの山へ。空港に着いたシマモリは、同行するアンドロイド犬・カズヨシの身体を自宅で待つプアと接続する。

【新連載】
大滝詠一と私(第1回)/湯浅 学
浪人時代にナイアガラ事務所に通い始めた私は、大滝さんに音楽と生き方を教わった。はっぴいえんど前夜、「スーダラ節」や「帰って来たヨッパライ」まで遡って歌謡史を語り起こす、無二の評伝=自伝が幕を開ける。
【映画論】
合衆国であえてハリウッド映画を擁護する蓮實重彦

特集上映「蓮實重彦:アメリカ映画と日本映画のもう一つの歴史」に寄せて黒沢 清
『監督 小津安二郎』英訳を機に、「映画狂人」の言説がついに米国に知れ渡る──ニューヨークの観客に向け語られたヴィデオ・メッセージと、師との出会いに人生を決定づけられた映画作家による紹介文を逆輸入!

旅と日々とうまくいかない日々──三宅唱監督作『旅と日々』を見て戌井昭人
【対談】
「新しい故郷」へのまなざし──難民の表象をめぐって池澤夏樹×ホンマタカシ
ソンタグは言った。苦しみを描く写真は美しくあってはならないと。非当事者の立場で表現の倫理を問い直す。
【鼎談】
書くという営為とサバイバル(後篇)/石川直樹×角幡唯介×服部文祥
山行に頂上は必要なのか。遭難は果たして表現なのか。現代日本の冒険文学を牽引する三者による徹底討論。
【連載評論】
数学する惑星(第3回)推論のゆりかご森田真生
銀河の「小さな腕」太陽系で、地球は天文学を育んだ。宇宙の調和から捉えるニュートン力学と三体問題。
【リレーコラム 街の気分と思考】
◆スイスの涙/村田沙耶香
◆シカゴの逆借景/伊藤亜紗
【新潮】
◆詩の距離 写真の距離/今宿未悠
◆坂本龍一さんと「日記」/大森健生
◆青春の尻尾/岡ノ谷一夫
◆本が届く/木村綾子
◆南極ハウスのこと/こんにち博士
【書評委員による 私の書棚の現在地】
◆W・フォークナーほか『障害文学短編集』(石塚久郎監訳)/市川沙央
◆砂本三郎『無名兵士の戦場スケッチブック──砲弾と飢餓と鎮魂』/古川真人
【本】
◆鳥羽和久『光る夏──旅をしても僕はそのまま』/尾久守侑
◆市川沙央『女の子の背骨』/先崎彰容
◆石川直樹『最後の山』/松永K三蔵
【連載評論】
みやびとまねび──日本クラシック音楽史(第12回)/片山杜秀
小林秀雄(第123回)/大澤信亮
【連載小説】
山吹散るか ほろほろと(第5回)/辻原 登
マイネームイズフューチャー(第8回)/千葉雅也
(第18回・完)/宮本 輝
第58回新潮新人賞 応募規定
執筆者紹介

この号の誌面

編集長から

畠山丑雄「叫び」
尾崎世界観×ニシダ「ダブルスタンダード」

◎十月十三日、大阪・関西万博が閉幕した。会期終了が近づくにつれチケット難民も続出したが、一九四〇年に予定されるも戦争の激化により中止となった「紀元二六〇〇年記念日本万国博覧会」の入場券が、今回の一日券と引き換えられたことはご存知だろうか。畠山丑雄「叫び」は大阪を舞台に、戦中と現代という二つの時間の接続を試みる。公務員の早野ひかるは銅鐸づくりを趣味とし、先生に師事している。彼は指導の一環で郷土史を学び、公共施設で鋳造体験会の助手を務めるうちに交際相手ができ、他方で川又青年なる同地に生まれた阿片アヘン製造者の姿を幻視する。やがて物語はゆめしまへと向かい、国家の欲望や天皇制をも巻き込んで驚くべき結末に。素っ頓狂な語りに乗せられ、気づくとこの世のことわりに突き当たる。これは極めてユニークな、令和流の政治小説だ◎尾崎世界観氏とニシダ氏による特別企画「ダブルスタンダード」では、時代の寵児ふたりの文学にかける真摯な思いが創作と対談に結実した。

編集長・杉山達哉

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞

新潮

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