

- 『尾張ヒールズ』Feat.EQUAL(from M.O.S.A.D)
- 『P×××Y』


(文・都築響一)
11月22日の真夜中を過ぎたころ、名古屋市街の中心部を少し外れたRADIXというクラブに向かった。便利なロケーションでもないし、電車もバスもとうに終わっている時間なのに、フロアは身動きできないほどに混み合っている。すでに400人を超す入場者で超満員なのに、あとからあとから新しい客が入ってきて、フロアに降りる階段の途中で、それ以上進むことができず立ちすくむ。
ステージ上にはラッパーとDJのセットが次々に登場し、激しい音と言葉をフロアにぶつけ、観客は腕を挙げてそれに応える。しかしいつものように拳をあげるのでもなく、人差し指を立てるのでもなく、両腕をバツの字に組み合わせて。それは「X=エックス」であり、名古屋が生んだ偉大なラッパー「TOKONA-X」(トコナ・エックス)を称えるサインだ。今夜RADIXで開かれているパーティは、2004年11月22日にわずか26歳で急死したTOKONA-Xの命日にあわせて開かれている、もう7回目になるライブ・イベントなのだ。
続きは本誌にてお楽しみ下さい。

1978年生まれ・愛知県常滑市出身。1996年7月、日比谷野外音楽堂で開催されたジャパニーズ・ヒップホップの記念碑的イベント「さんピンCAMP」に弱冠17歳で参加。共にそのステージに立ったDJの刃頭と「ILLMARIACHI」を結成し、インディ・レーベル「音韻王者(オーティノージャー)」からCDデビュー。名古屋弁で挑発的にまくし立てていくパフォーマンスは、当時のシーンに凄まじい衝撃を与えた。
一方、旧友のラッパー“E”QUALやAKIRAらと共に組んでいた「M.O.S.A.D.」の一員としても精力的な活動を重ねる。その実力はアンダーグラウンド界の注目を集め、多数のレーベルによる争奪戦を巻き起こす。しかし2004年、満を持してDef Jam Japanからアルバム『トウカイXテイオー』でメジャーデビューを果たした矢先の同年11月22日に26歳の若さで急逝。現在活躍する若手ヒップホップアーティストに与えた影響は計り知れない。