重松 清「荒れ野にて」(新連載)
新潮 2015年1月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2014/12/06 |
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JANコード | 4910049010150 |
定価 | 特別定価1,049円(税込) |
・あるフランス人の女中さん/水村美苗
・ロルカの鎮魂と『涙の泉』/四方田犬彦
――ゴリホフのオペラを観て
脱構築vs複雑系/佐々木 敦×渡部直己
――今日のフィクションを読む
・さよなら師匠/矢作俊彦
――トマス・ピンチョン『重力の虹』をめぐって
・瀬戸内寂聴『死に支度』/中上 紀
・上田岳弘『太陽・惑星』/長野まゆみ
・川上弘美『水声』/沼野充義
・黒川 創『京都』/野崎 歓
・都甲幸治『生き延びるための世界文学』/松永美穂
・よしもとばなな『鳥たち』/若松英輔
編集長から

◎重松清氏の連載小説「荒れ野にて」を開始する。氏の純文学誌における初創作だ。「荒れ野」とは、ある悲惨な事故により致死的な有害物質に汚染された立ち入り禁止地域。その後、巨大自然災害に襲われている……。この設定は、しかしフクシマの現実を虚構でなぞるためのものではない。小説家は「荒れ野」の彼方を凝視しているのだ。現在(フクシマ)のみならず過去(ヒロシマ)と未来を。文明の業と、それに翻弄され立ち向かう人間の普遍的な姿を。圧倒的な現実を前に、文学的想像力に賭けること。稀代のフィクションライターの虚構への強靭な意志が解き放たれる◎舞城王太郎氏の長篇「淵の王」(四七〇枚)を一挙掲載する。虚構を過激なまでに疾走させることと人間のリアルな営みを細密画のように描くこと。この小説家固有の両極性が統合された本作は氏の新たな代表作となるだろう◎この二作を始めとする生まれたばかりの小説たちとともに、小誌は創刊111年目を迎える。

バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。