千葉雅也「エレクトリック」(220枚)
中西智佐乃「狭間の者たちへ」(160枚)
新潮 2023年2月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2023/01/07 |
---|---|
JANコード | 4910049010235 |
定価 | 1,200円(税込) |
◆エレクトリック[二二〇枚]/千葉雅也
一九九五年、雷都・宇都宮。高校二年の達也は東京に憧れ、父はアンプの完成に腐心する。性と家族の旋律が高らかに響く気鋭の渾身作!
◆狭間の者たちへ[一六〇枚]/中西智佐乃
少年は大人になり、痴漢加害者になった。抑圧の連鎖に呑まれた生を繋ぎ止める飛翔作。
◆フィードバック/古川真人
外部視覚装置でついに光を取り戻した妻の視覚。見えてきたのは不可視の社会の影だった。
■■ 連載小説 ■■
◆生活(九)[連載完結]/町屋良平
◆大使とその妻(十七)/水村美苗
◆漂流(四十)/町田 康
◆チェロ湖(四十二)/いしいしんじ
■■ 新潮 ■■
◆やどり龍/青葉市子
◆エスニック風カウント/石田夏穂
◆秋の祭りとフィリップ・ケーヌの舞台美術/久保宏樹
◆ゴダールが海辺で自殺を語った日/松浦 泉
■■ 本 ■■
◆筒井康隆・蓮實重彦『笑犬楼vs.偽伯爵』/大谷能生
◆山崎修平『テーゲベックのきれいな香り』/川本 直
◆大濱普美子『陽だまりの果て』/豊崎由美
◆多和田葉子『太陽諸島』/沼野充義
◆藤野可織『青木きららのちょっとした冒険』/山崎まどか
【対談】
◆「命のものさし」で歴史を測る/斎藤真理子 黒川 創
『彼女のことを知っている』を契機に、四半世紀ぶりに集う韓国文学翻訳者と作家の対話。
◆ぼくはあと何回、満月を見るだろう/坂本龍一
最終回「未来に遺すもの」
最後のピアノ・ソロ。日記のように生まれた新アルバム。今だから明かせる幾つかのこと。
◆精神の考古学(最終回)/中沢新一
第十部 いかにして人は精神の考古学者になるか
遂に明かされたアフリカ的段階の思想の本質。
◆弔辞 映画作家吉田喜重を追悼する/蓮實重彦
◆嫉妬と階級の『源氏物語』(二)/大塚ひかり
◆温又柔『祝宴』を読む/小竹由美子 長瀬 海
【リレーコラム】街の気分と思考(13)
◆ハシビロコウ/川上弘美
◆「ここがあなたの場所よ」/塩田千春
◆小林秀雄(九十二)/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第百十三回・日常への帰還
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第二一二回・途上の匂い
【私の書棚の現在地】
◆橋本輝幸編訳『Rikka Zine Vol.1』/【書評委員】高山羽根子
◆ダビット・サンデン『この本はよまれるのがきらい』/【書評委員】乗代雄介
第55回《新潮新人賞》応募規定 [ウェブ応募受付中!]
【選考委員】上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹
この号の誌面
立ち読み
編集長から
千葉雅也「エレクトリック」
中西智佐乃「狭間の者たちへ」
◎千葉雅也「エレクトリック」(220枚)を発表する。あの年、阪神・淡路大震災とオウム事件が連続して起き、世界を根底から変えたインターネット革命の出発点である一九九五年の物語だ。自らの同性愛に気づきつつある高校生の主人公達也と、広告業で成功を収めた父(達也は父を「英雄」と、自らを「継承者」と呼ぶ)を軸に、達也は性的成長の冒険を、父はネットにより激変する事業環境の冒険をともにおこなう。そう、本作は時代の大転換期という歴史の次元と紐帯で結ばれつつも、実に爽快で胸躍る親子の冒険譚なのだ。千葉氏は、旧作の私小説的側面を引き継ぎながら、いま、決定的な切断と進化を遂げたのではないか◎中西智佐乃「狭間の者たちへ」(160枚)の主人公はサラリーマン男性。会社と家族というふたつの狭間で抑圧され、満員電車という肉体の狭間で一人の女子高生から「元気」を得ていた。切実だが危険な男の魂はどこに辿り着くのか。気鋭の全力投球にご注目を!
編集長・矢野 優
バックナンバー
雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。
雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。