【新連作】市川沙央「良心的兵役拒否」 小山田浩子「からの旅」
【対談】蓮實重彦×千葉雅也 平野啓一郎×九段理江
新潮 2025年1月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2024/12/06 |
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JANコード | 4910049010150 |
定価 | 1,200円(税込) |
【新連作】
◆良心的兵役拒否 [1]洒落た文句に振り返りゃ/市川沙央
くじ引きで徴兵される者と、断る者。「有事」のこの国をアイロニカルに描き出す、21世紀の戦記文学。
◆からの旅 1/小山田浩子
空の旅、日本からの旅。ドイツの都市K、大聖堂のステンドグラスが呼び起こす歴史と、幾層もの記憶。
【創作】
◆扉/上田岳弘
◆絶望退治/角田光代
◆聞こえたり聞こえなかったり(第3回)/桐野夏生
◆歯ごたえと喉ごし/滝口悠生
◆死んだ友達/保坂和志
◆お小水とお通じ/山田詠美
【対談】
◆驚きの連鎖を生きる/蓮實重彦×千葉雅也
伝説の式辞から、AIの神髄まで。自己のフィクション性を見つめる二人の、世代を超えた知の応酬。
◆現実を抉るパラレルワールド/平野啓一郎×九段理江
いかに同時代の読者に小説を届けるか――偶然と人称をキーワードに『富士山』収録短篇に切り込む。
【随筆】
◆哲学とはなにか/東 浩紀
◆ニコール・キッドマンの初恋/金原ひとみ
◆天に地にせめぎあう音たち/高村 薫
◆ツルツルした日々――業界も変わりゆく/中村文則
◆平坦さ/濱口竜介
◆酒場/又吉直樹
◆筆が向くまま西東、なのにヨー/町田 康
【対詩】
◆いつかなじんだ靴を履いて(遺作)/谷川俊太郎+覚 和歌子
追悼 谷川俊太郎
◆口承の谷川さん/伊藤比呂美
◆「詩」と「死」に就いて/尾崎真理子
◆その世とこの世とあの世/ブレイディみかこ
◆谷川俊太郎、ひとりぽっち/吉増剛造
◆あなたに好きな詩人がいること/最果タヒ
【ノンフィクション】
◆最後の山(第4回)長い旅の終わり/石川直樹
【リレーコラム 街の気分と思考】
◆豆乳でいたい/斎藤真理子
◆息絶える/ヒコロヒー
◆「ほんとうの日本」を求める人たち――水村美苗『大使とその妻』を読む/グレゴリー・ケズナジャット
◆微細に発酵し続ける、鮮やかな不穏――小山田浩子『最近』を読む/高山羽根子
【書評委員による 私の書棚の現在地】
◆金川晋吾『明るくていい部屋』/九段理江
◆ヨン・フォッセ『三部作』岡本健志・安藤佳子訳/山下澄人
■■ 本 ■■
◆古井由吉『古井由吉翻訳集成 ムージル・リルケ篇』/石沢麻依
◆久栖博季『ウミガメを砕く』/古川真人
◆高瀬隼子『新しい恋愛』/三宅香帆
■■ 連載小説 ■■
◆Ifの総て(第7回)/島田雅彦
◆湾(第8回)/宮本 輝
◆荒れ野にて(第81回)/重松 清
第57回新潮新人賞 応募規定
執筆者紹介
この号の誌面
編集長から
市川沙央「良心的兵役拒否」
小山田浩子「からの旅」
◎デザインリニューアルと共に、二本の連作を開始する。市川沙央「良心的兵役拒否」が描くのは、有事に突入した現代日本。くじ引きによりランダムに選ばれた国民は「防衛役務」を負うが、兵役拒否の自由が合法的に許されている。それでも我々が徴兵制に抵抗を覚えてしまうのはなぜなのか? この制度に身体障害者の居場所はあるのか? 近代国家と優生思想の関係を見つめてきた市川氏の、アイロニカルな筆が冴え渡る◎小山田浩子「からの旅」では、作家自身と思しき視点人物が近年訪れた場所での出来事を語っていく。初回の舞台は、大聖堂で有名なドイツの都市K。同地での経験が五感を動員して細密に綴られる中で、とりわけ目を惹くのはイスラエルの旗である。地面に描かれた六芒星のチョークアートが意図的に踏みつけられ、消えかかっている姿を見て、パレスチナの惨状を許すことができないはずの「私」の心は複雑に揺れ動く――これもいま世界で起きている戦争への誠実な応答だと思う。
編集長・杉山達哉
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。