新潮新書
2025年の締めくくり

お笑いの面白さを、他人に面白く伝える──これはなかなか難問です。日常の感覚のなかに不意に飛び込んでくる驚きや不条理、「もはや笑うしかない何か」とは、得てして言葉にならないからです。12月新刊『現代お笑い論』(立川志らく・著)は、「M-1グランプリ」決勝の審査を5年間務め、トム・ブラウンやランジャタイなど異才を次々に見出した著者ならではの考察。毒舌をまじえた縦横無尽の語り口、ツボを押さえた指摘の数々は、あたかも一席の落語を聞いたかような読後感が。さすがは"全身落語家"です。
2025/12
自らを知るということ

人生のピークは何歳か、個人差もあれば様々な要因のめぐり合わせもありますが、わが身を振り返るなら40歳過ぎぐらい?、というのがざっくりした印象です。勤め人なら社会に出て約20年で定年までほぼ同じぐらい、気力・体力的にも無理が効く、いわばマラソンの「折り返し」にあたります。そういえば以前、著名な生物学者から、40歳過ぎぐらいがヒトという生物本来の寿命で、その先は恵まれた生存環境や医療技術の進歩のおかげだと聞いたことがありました。
2025/11
変わるものと変わらないもの

40年近く前、高田馬場駅から大学までのびる早稲田通りの両側には、たくさんの古本屋が軒を連ねていました。ある日、店前のワゴンに積まれた古いベストセラーの中から五木寛之さんの大河シリーズ『青春の門』の文庫本を数十円で購入。以来、次々続編を探しては読んだものです。その古本屋街も今は多くがラーメン屋などに姿を変えましたが、戦前、戦中、戦後80年を生き抜いてきた五木さんは、数多のベストセラーを生み出しながら、93歳の今なお日刊紙や週刊誌で連載を続けています。10月新刊『昭和の夢は夜ひらく』は、そんな五木さんならではのエッセイ集。時とともにきれいに整理され、歴史からは消えてゆく昭和という時代の空気、人々の息づかいが感じられる36話です。
2025/10
謎を読み解く

車を運転中よくラジオを聴いていますが、最近は映画「国宝」がしばしば話題にあがります。興行収入が早々に100億円を超えたことでも人気と評価の高さがわかりますが、大半のコメントは「すっごく、よかった」に終始して、映画を観ていないリスナーには、何がどうよかったのか、ほとんど魅力が伝わりません。雑談でも話題のエンタメはよく話題になるものですが、これと同じように「読んだ(見た)?」「よかった!」の応酬では話は広がらないもの。他人に面白く伝えるのが上手な人は、いったい何が違うのでしょう。
2025/09
































