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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

創刊23周年・注目の3作品

 自民党が圧倒的多数を獲得した先の衆院選以来、にわかに憲法改正への動きが目立ってきました。改正は自民党結党以来の党是なので当然ですが、ではあなたの考えはどうかと問われると、ほとんどの人が口ごもってしまうでしょう。戦後多くの知識人が改憲・護憲の立場で議論を戦わせてきましたが、かつては護憲政党が強かったこともあり、改憲はどこか空想めいた話のようにも感じられました。少なくとも第二次安倍政権下での「解釈改憲」までは──。『天皇への敗北─シリーズ哲学講話─』(國分功一郎・著)は当時メディアを騒がせた「立憲主義の危機」に立ちはだかった天皇という存在をめぐって、憲法学と文学の両面から「天皇・憲法・戦後」の核心へと迫ります。『目的への抵抗―シリーズ哲学講話―』『手段からの解放―シリーズ哲学講話―』に続く「シリーズ哲学講話」3作目は、人間の自由や嗜好という普遍的なテーマを探究した前作とは異なる、深く、痛切な戦後日本論となりました。
2026/04

世界にも稀な教育、文化、そして人生案内

 幼稚園から小学校、さらには中学・高校へ──春は卒業と進学の季節です。私立校に進む子もいれば、とくに意識せず公立校へと進む子もたくさんいますが、公立小学校に比べて試験のある私立のほうが、やはり平均的な学業レベルは高いはずです。ただ、集団の中の様々な他者との関わりかたや適度な自意識を育てるという面では、学業成績だけでは測りがたいのが児童教育の難しいところでもあるようです。
2026/03

居心地のいい世界はどこに

 昨年と変わらず、国際ニュースを見るのもいささか気が重い日々が続きます。トランプしかり、習近平やプーチンなど世界のリーダーたちが剥き出しの自己主張を繰り返す昨今、国連の場においてもそれぞれが自国の利害を最優先し、合意の形成はいよいよ困難になっています。何年か前までは確かにあった、アメリカを中心とした世界秩序が大きく揺らぐなか、日本としても安閑としてはいられません。
2026/02

2026年の幕開け

 2026年が始まりました。もっとも、カレンダーは例年のように一新されても、年来の課題や問題が一掃されるわけではありません。たとえば昨年、台湾有事に関する高市首相の国会答弁を機に冷え込んだ日中関係も、元通りに復するまでには年単位で考えなければならないだろうと多くの識者が指摘しています。
 そんななか、ぜひ手に取っていただきたいのが『中国共産党が語れない日中近現代史』(兼原信克・著、垂秀夫・著)。国家安全保障局次長として安倍政権の官邸外交を支えたキーマン・兼原氏と、駐中国日本国特命全権大使として中国への厳しい姿勢で知られた垂氏。ともに対中外交を牽引してきた二人が、アヘン戦争の時代から習近平独裁の現在まで、日中の不可分な関係性をめぐって徹底的に話し合います。辛亥革命がそうであるように、近代中国の歴史は日本の影響を抜きには語れませんが、共産党が支配する中国では文化大革命や天安門事件など、中華人民共和国の歴史を画す大事件はほとんど漂白されてしまっています。プロの実務家ならではの幅広い知見には、ジャーナリズムとは次元の違う説得力があります。
2026/01