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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

2026年の幕開け

 2026年が始まりました。もっとも、カレンダーは例年のように一新されても、年来の課題や問題が一掃されるわけではありません。たとえば昨年、台湾有事に関する高市首相の国会答弁を機に冷え込んだ日中関係も、元通りに復するまでには年単位で考えなければならないだろうと多くの識者が指摘しています。
 そんななか、ぜひ手に取っていただきたいのが『中国共産党が語れない日中近現代史』(兼原信克・著、垂秀夫・著)。国家安全保障局次長として安倍政権の官邸外交を支えたキーマン・兼原氏と、駐中国日本国特命全権大使として中国への厳しい姿勢で知られた垂氏。ともに対中外交を牽引してきた二人が、アヘン戦争の時代から習近平独裁の現在まで、日中の不可分な関係性をめぐって徹底的に話し合います。辛亥革命がそうであるように、近代中国の歴史は日本の影響を抜きには語れませんが、共産党が支配する中国では文化大革命や天安門事件など、中華人民共和国の歴史を画す大事件はほとんど漂白されてしまっています。プロの実務家ならではの幅広い知見には、ジャーナリズムとは次元の違う説得力があります。
2026/01

2025年の締めくくり

 お笑いの面白さを、他人に面白く伝える──これはなかなか難問です。日常の感覚のなかに不意に飛び込んでくる驚きや不条理、「もはや笑うしかない何か」とは、得てして言葉にならないからです。12月新刊『現代お笑い論』(立川志らく・著)は、「M-1グランプリ」決勝の審査を5年間務め、トム・ブラウンやランジャタイなど異才を次々に見出した著者ならではの考察。毒舌をまじえた縦横無尽の語り口、ツボを押さえた指摘の数々は、あたかも一席の落語を聞いたかような読後感が。さすがは"全身落語家"です。
2025/12

自らを知るということ

 人生のピークは何歳か、個人差もあれば様々な要因のめぐり合わせもありますが、わが身を振り返るなら40歳過ぎぐらい?、というのがざっくりした印象です。勤め人なら社会に出て約20年で定年までほぼ同じぐらい、気力・体力的にも無理が効く、いわばマラソンの「折り返し」にあたります。そういえば以前、著名な生物学者から、40歳過ぎぐらいがヒトという生物本来の寿命で、その先は恵まれた生存環境や医療技術の進歩のおかげだと聞いたことがありました。
2025/11

変わるものと変わらないもの

 40年近く前、高田馬場駅から大学までのびる早稲田通りの両側には、たくさんの古本屋が軒を連ねていました。ある日、店前のワゴンに積まれた古いベストセラーの中から五木寛之さんの大河シリーズ『青春の門』の文庫本を数十円で購入。以来、次々続編を探しては読んだものです。その古本屋街も今は多くがラーメン屋などに姿を変えましたが、戦前、戦中、戦後80年を生き抜いてきた五木さんは、数多のベストセラーを生み出しながら、93歳の今なお日刊紙や週刊誌で連載を続けています。10月新刊『昭和の夢は夜ひらく』は、そんな五木さんならではのエッセイ集。時とともにきれいに整理され、歴史からは消えてゆく昭和という時代の空気、人々の息づかいが感じられる36話です。
2025/10