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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

グルメの変遷をたどる

「不適切にもほどがある」「おいしい給食」など、舞台を昭和の1980年代に設定したドラマが人気を集めています。背景には、行き過ぎたコンプライアンス社会への反動もあるのでしょうが、バブルを挟んで、よくもわるくも世間が活気と変化にあふれていた時代の空気は、中高年世代にとってはある種のノスタルジーでもあるようです。
『東京いい店はやる店―バブル前夜からコロナ後まで―』(柏原光太郎・著)は、1980年代から現在まで半世紀にわたるグルメの現代史。『東京いい店うまい店』元編集長で、食のオンライン「文春マルシェ」を立ち上げた当代きっての美食家が、外食グルメの歴史を自身の体験とともにたどります。フランス料理やイタ飯ブームから、フーディーの登場や活況を呈するイノベーティブレストランまで、一度は行きたいお店の名前もたくさん登場します。
『不倫の心理学』(アンジェラ・アオラ・著、安達七佳・訳)は、スウェーデン発の異色の心理学研究。人はなぜ不倫するのか、不倫されるのか――今や日本でも3組に1組が離婚する時代ですが、夫の不倫から離婚にいたった女性心理学者が、当事者の男女に徹底ヒアリング、渦中にある人に特有の思考と行動をひもときます。不倫をしたことがある人、したいと思っている人、ゆるしがたいという人にも、様々な示唆と教訓があふれています。
『間違い学―「ゼロリスク」と「レジリエンス」―』(松尾太加志・著)は、どれだけDXが進んでも人間が関与する限りは決してなくならない、ヒューマンエラーをめぐる最新研究。医療や交通など生命に関わる社会分野から、IT化が進む現代だからこそ起こりがちなミスまで多くの事例をとり上げながら、ふとした間違いが重大事故につながるメカニズムを分析。少しでもリスクを減らすために何が必要なのかを考え抜きます。
『国家の総力』(兼原信克・著、高見澤將林・編)は、台湾有事を見据えて日本には備えがあるか、そして今後何をすべきなのか、「軍事面以外」から考える一冊。中国との戦いは、認知戦やサイバー戦というグレーゾーンからすでに始まっているともいえますが、そんな時代に、国家の総力をあげて国民の生活を守り抜くにはどうすればいいのか、4つの重要分野――エネルギーと食料安保、シーレーンの防衛、特定公共施設と通信、貿易と金融――をめぐり、霞が関の最高幹部たちが縦横に語り合います。
2024/06