新潮新書
現代の風景、人生の断面
先日、新宿の某百貨店の前に朝から長蛇の列ができており、その先にあったのは有名な時計のブランドショップでした。いささか奇妙なのは、並んでいるのはどちらかと言うと風采のあがらない、とても高級腕時計を着けそうには見えない若者が多かったこと。そこで思い浮かんだのが11月新刊『転売ヤー 闇の経済学』(奥窪優木・著)。なるほど、行列は人気のモデルを入手して転売するのが目的かと推測されました。
もちろん、差額でもうけるだけの売却から明らかな犯罪まで、その態様と違法性は一様ではありませんが、人々の「欲しい」という欲求が渦巻く場所にはきまって現れる、それが転売ヤーです。いかに商品を"仕入れ"、売り捌き、どのくらい利益を得ているのか? 自分たちの行為をどう思っているのか......ポケモンカードから高級ブランドまで、「旬」がカネに化けるカラクリを徹底取材で明らかにする、前代未聞のルポルタージュです。
テレビが家庭に浸透し始めた1960年代、評論家の大宅壮一氏が「一億総白痴化」を警告してから60年以上になりますが、にわかに大衆の注目を集めて見る者を熱狂させ、時に炎上の的にもなる"メディアの寵児"はいつの時代にもいるものです。昨今で言うなら玉川徹、ガーシー、西野亮廣、山本太郎、吉村洋文......などが思い当たります。メディアの渦中でとかく毀誉褒貶つきまとう彼らとはいったい何者なのか。『「嫌われ者」の正体―日本のトリックスター―』(石戸諭・著)は本人や周辺への取材を重ねた人物ルポにして、現代社会への鋭い批評です。
『母を葬(おく)る』(秋吉久美子・著、下重暁子・著)は、それぞれ古希と米寿を迎えた二人が、「今は亡き母」に対して長年抱く複雑な感情について、存分に語り合います。共通する想いは、「理想の娘にはなれなかった」こと。慎ましく愛情深い母親のもとで育ったものの、果たしてそれに応えることができたのか......芸能界とメディアの世界に生きることで、ある種の後ろめたさを負い続けた人生は、昭和史の貴重な証言でもあります。
生きていくうえで壁にぶつからない人はいませんが、大切なのはそれをどう乗り越えるか、あるいはどう上手に避けるのか――「子どもは大人の予備軍ではない」「嫌なことをやってわかることがある」「人の気持ちは論理だけでは変わらない」「社会問題について感情的にならない」「生きる意味を過剰に考えすぎない」――など、『人生の壁』(養老孟司・著)は、自らの生涯を振り返りつつ、誰にとっても厄介な「人生の壁」を超える知恵をやさしく語ります。『バカの壁』から7作目でシリーズは累計700万部(電子含む)を突破、最新作にして最終章です。
もちろん、差額でもうけるだけの売却から明らかな犯罪まで、その態様と違法性は一様ではありませんが、人々の「欲しい」という欲求が渦巻く場所にはきまって現れる、それが転売ヤーです。いかに商品を"仕入れ"、売り捌き、どのくらい利益を得ているのか? 自分たちの行為をどう思っているのか......ポケモンカードから高級ブランドまで、「旬」がカネに化けるカラクリを徹底取材で明らかにする、前代未聞のルポルタージュです。
テレビが家庭に浸透し始めた1960年代、評論家の大宅壮一氏が「一億総白痴化」を警告してから60年以上になりますが、にわかに大衆の注目を集めて見る者を熱狂させ、時に炎上の的にもなる"メディアの寵児"はいつの時代にもいるものです。昨今で言うなら玉川徹、ガーシー、西野亮廣、山本太郎、吉村洋文......などが思い当たります。メディアの渦中でとかく毀誉褒貶つきまとう彼らとはいったい何者なのか。『「嫌われ者」の正体―日本のトリックスター―』(石戸諭・著)は本人や周辺への取材を重ねた人物ルポにして、現代社会への鋭い批評です。
『母を葬(おく)る』(秋吉久美子・著、下重暁子・著)は、それぞれ古希と米寿を迎えた二人が、「今は亡き母」に対して長年抱く複雑な感情について、存分に語り合います。共通する想いは、「理想の娘にはなれなかった」こと。慎ましく愛情深い母親のもとで育ったものの、果たしてそれに応えることができたのか......芸能界とメディアの世界に生きることで、ある種の後ろめたさを負い続けた人生は、昭和史の貴重な証言でもあります。
生きていくうえで壁にぶつからない人はいませんが、大切なのはそれをどう乗り越えるか、あるいはどう上手に避けるのか――「子どもは大人の予備軍ではない」「嫌なことをやってわかることがある」「人の気持ちは論理だけでは変わらない」「社会問題について感情的にならない」「生きる意味を過剰に考えすぎない」――など、『人生の壁』(養老孟司・著)は、自らの生涯を振り返りつつ、誰にとっても厄介な「人生の壁」を超える知恵をやさしく語ります。『バカの壁』から7作目でシリーズは累計700万部(電子含む)を突破、最新作にして最終章です。
2024/11