新潮新書

「身につまされる」ということ

世の中、その立場や環境に身を置いてみないとわからないことは多々あるものです。まだまだ先だと思っていた親の介護がにわかに身に迫ってくるのは、40代後半ぐらい、得てして働き盛りの時分が多いようです。『介護未満の父に起きたこと』(ジェーン・スー・著)では、ペットボトルのキャップが開けられない、など「要介護」の前触れとして着実に起こる大小様々な日常トラブルにその都度どう対処してきたか、実用的な情報を交えて細かにつづります。コロナ禍を挟んだ5年間、多忙な自身の仕事をまっとうしながらサポートし続ける80代父親の一人暮らしとは──『生きるとか死ぬとか父親とか』同様、絶妙の距離感で描く、「老人以上、介護未満」の渦中にある父娘の異色ドキュメントです。
埼玉県川口市の「クルド人問題」がにわかに注目されています。不法滞在者が治安を悪化させ、住民を恐怖に陥れていると訴える人もいれば、「それは差別だ。ヘイトだ」と反論する人も。では、実際に住んでみたらどうなるか──『おどろきの「クルド人問題」』(石神賢介・著)はシリアスにしてどこかおかしい体験型ルポルタージュ。現地に拠点を構えて取材を進めるなか、ある時はクルドカーに追跡され、またある時は不審者扱いされ、というアップダウンの激しい日々ですが、市長、市議会議員、解体業者、住民、子どもたちのそれぞれに切実な話から、平穏と不穏の狭間で暮らす人たちならではの苦悩が見えてきます。
毎年、日本では2万人以上、世界では80万人近くが自殺しているといわれます。死因としては病気や戦争、殺人よりも多く、今やWHO(世界保健機関)が警告する深刻な公衆衛生問題なのです。『人はなぜ自分を殺すのか』(クリスティアン・リュック・著、久山葉子・訳)は、世界有数の医学大学でノーベル生理学・医学賞の選定機関でもあるスウェーデン・カロリンスカ研究所の精神科教授による最新の「自殺学」講義。幸福度ランキングで世界4位、〈自殺ゼロ〉政策を掲げる同国の第一人者が、歴史や宗教、社会文化など様々な角度から徹底分析します。自らの手で命を絶ってしまう人の内面とはどういうものなのか──考えさせられる一冊です。
埼玉県川口市の「クルド人問題」がにわかに注目されています。不法滞在者が治安を悪化させ、住民を恐怖に陥れていると訴える人もいれば、「それは差別だ。ヘイトだ」と反論する人も。では、実際に住んでみたらどうなるか──『おどろきの「クルド人問題」』(石神賢介・著)はシリアスにしてどこかおかしい体験型ルポルタージュ。現地に拠点を構えて取材を進めるなか、ある時はクルドカーに追跡され、またある時は不審者扱いされ、というアップダウンの激しい日々ですが、市長、市議会議員、解体業者、住民、子どもたちのそれぞれに切実な話から、平穏と不穏の狭間で暮らす人たちならではの苦悩が見えてきます。
毎年、日本では2万人以上、世界では80万人近くが自殺しているといわれます。死因としては病気や戦争、殺人よりも多く、今やWHO(世界保健機関)が警告する深刻な公衆衛生問題なのです。『人はなぜ自分を殺すのか』(クリスティアン・リュック・著、久山葉子・訳)は、世界有数の医学大学でノーベル生理学・医学賞の選定機関でもあるスウェーデン・カロリンスカ研究所の精神科教授による最新の「自殺学」講義。幸福度ランキングで世界4位、〈自殺ゼロ〉政策を掲げる同国の第一人者が、歴史や宗教、社会文化など様々な角度から徹底分析します。自らの手で命を絶ってしまう人の内面とはどういうものなのか──考えさせられる一冊です。
2025/08