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著者の深町秋生さんは、 「このミステリーがすごい!」大賞を受賞して、2005年作家デビュー。 2011年スタートの「組織犯罪対策課八神瑛子」シリーズは40万部超のベストセラーとなっています。 キャラクター造形とアクション・シーンに定評のある、いま最も注目されている、ミステリ作家です。
今作の主人公は、事件関係者の首に縄をつけ情報収集を行わせるという強引な手法から、 ドッグ・メーカーと呼ばれる男、黒滝誠治。刑事ではなく、「警察の中の警察」として警察官の犯罪に目を光らせる、 監察です。希代の"寝業師"白幡警務部長、美しくも根性のすわったキャリア相馬美貴警視と共に、 黒滝は警視庁内に巣食う凶悪な人物と対決します。600頁を超える大作ながら、 一気読み必至。ダーク・ヒーロー・黒滝誠治が巻き起こす物語の激流に身を任せてください。
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本書は出版から160年後に不死鳥のように蘇った、まさに奇跡の一冊です。
執筆当時、存命だった関係者の安全のため「リンダ・ブレント」なる偽名で執筆された本書は、読み書きを禁じられていた奴隷のそれとは思えないほど知的な文体で綴られていること、また主人による強姦の横行という非常にショッキングな内容から、「フィクション」とみなされ、忘れ去られてしまいました。
それから約100年後、アメリカの歴史学者イエリン教授が一通の書簡を見つけたことが、この本にとって第一の奇跡でした。
その文体に強い既視感を感じたイエリン教授は本書の著者「リンダ」という女性について歴史公証を重ね、彼女が「ジェイコブズ」という実在の奴隷であったことを証明したのです。出版から160年後、1987年のことでした。以後、本書は大きな話題をよび、アメリカで大ベストセラーとなりました。
2、二度目の奇跡
しかし小さな少女の快進撃はとどまることを知らず、2011年の夏、二度目の奇跡が起きました。サラリーマンである訳者・堀越ゆき氏が偶然、amazonランキングで本書を発見し「これは誰かが翻訳しなくてはいけない、私たちのための本である」そう感じたそうです。
強い使命感にかられた堀越氏は、翻訳のプロでない自身が訳すことの正統性に悩みながらも、仕事の傍ら夢中で翻訳を続けました。そして2013年、ついに日本でに単行本が刊行されて以降、翻訳ノンフィクションでは異例の売れ行きを記録し、啓文堂大賞を受賞する快挙を成し遂げました。
黒柳徹子さん推薦、解説は佐藤優さん。全くバックグラウンドの異なるお二方にも共鳴する強い普遍性、そして出会った人すべてに感動を起こさせる強い熱量をもつ本書をぜひご一読ください。
2017年07月14日 今月の1冊
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江上剛さん。『怪物商人』『家電の神様』『庶務行員 多加賀主水が許さない』などなど、ビジネスマンの胸を熱くする小説でヒットを連発しています。
新潮文庫6月の新刊『特命金融捜査官』も絶好調で、発売後すぐに増刷となりました。
江上さんは、早稲田大学政治経済学部を卒業した後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行しました。広報部次長だった1997年、第一勧銀の総会屋への利益供与が発覚します。逮捕者は11人に及び、元会長が自殺するという、衝撃的な金融事件を覚えている方も多いでしょう。このとき混乱収拾の最前線に立ち、行内改革を訴えた「改革4人組」のひとりが江上さんでした。未曾有の経済疑獄の真っ只中にいたのです。
事件後、支店長に昇進した江上さんは『非情銀行』で作家デビュー。作家と支店長の「二足の草鞋」を経て、2003年に作家専業になりました。数多くの作品を世に送り出し、最近はフジテレビ「みんなのニュース」のレギュラーコメンテーターとしてもお馴染みです。
江上さんの文庫最新長編『特命金融捜査官』は、ひとりの男が失踪するところから始まります。その男は、主人公の伊地知耕介がマークしているベンチャー銀行の専務でした。不正の証拠を握って消えた男を追って、銀行幹部、闇の暴力組織、そして伊地知は沖縄の離島に飛びます。
伊地知耕介は、金融庁長官の特命を受けて、金融事件の捜査権限を持ち、拳銃の所持も認められた「特命金融捜査官」。現実には存在しない架空の役職です。このキャラクターを作り出した意図を江上さんはこう説明しています。
「これだけ金融にまつわる事件が多発している今、麻薬取締官のように潜入捜査をしたり、大きな事件の発生を未然に防ぐために、組織の枠を超えて動くスーパーパワーを持った人がいてもいいんじゃないか。そんな思いで描いてみました」
[江上 剛/人を再生させる島 「波」2015年6月号より →全文へ]
金融の世界の裏も表も知り尽くした経済小説の名手、江上剛が生み出したニューヒーロー伊地知耕介が活躍するエンターテインメント小説『特命金融捜査官』をお楽しみください。
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直木賞作家・青山文平さんは、 そんな時代を「型通りの生き方が通用しなくなった時代」と捉えています。 「侍らしさ」など全く頼りにならない時代に、侍たちはいかに、自身の人生を掴み取ったか。 青山さんは、「正解」などない人生の岐路と、それぞれの決断を描いていきます。
友を斬れという重い藩命を受けた男を描く表題作をはじめ、 行き倒れの侍を介抱したことから劇的な結末を迎える「三筋界隈」や、 城内の苛めで出仕できなくなった若侍が再生する「夏の日」など、いまの私たちの隣にいても 不思議でない侍たちの息づかいが伝わる傑作六篇です。
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出口さんのかねてからの主張は、仕事は人生の3割にすぎないというもの。人間が与えられた時間は1年間=8760時間ですが、日本人の労働時間の平均は約2000時間と言われています。自宅に仕事を持ち帰ったり、休んでいるように見えて仕事のことを考えている時間を入れても3割を超えることはないのです。そして仕事よりもずっと大事なのが、パートナーや友人たちと過ごす残りの時間。出口さんはこう書きます。「『デートと残業とどちらが大事なんだ』そんな言葉で上司に怒られたことのある人もいるでしょう。僕に言わせれば100パーセント、デートに決まっています。比較するのもおこがましい。」
ちょっと目から鱗が落ちるような気がしませんか。たしかに一人の長時間労働が消費を冷え込ませ、一緒に子育てをするパートナーの時間を縛るのです。みなが法定時間の8時間を集中して働き、そのあとは家族や友人と思い切り遊べば、もっと経済効率も高まるのです。本書にはこんな「当たり前だけど気がつかなかった大事なこと」がたくさん書かれています。
また、巻末には就職活動中の学生たちの葛藤を描いた『何者』で直木賞を受けた朝井リョウさんとの対談も文庫版だけの特別附録として収録されています。こちらも読み応えたっぷり。ぜひ手にとってみて下さい。(編集担当K)