新潮文庫メールマガジン アーカイブス
ひとが多すぎる国

 世界で人口の一番多い国はどこでしょうか? もちろん人口13億の中国です。もしかしたら、 統計に入っていない人数があって、もう少し多いかもしれません。いずれにせよ、日本のだいたい10倍です。
 感覚的に、この10倍という数字が日本人にはピンとこないと思います。
 その規模を、一目瞭然で理解できるのが、橘玲さんの新刊 『言ってはいけない中国の真実』に掲載されているこのグラフです。

 東アジア、東南アジア諸国の国別に上から人口の多い順に並んでいますが、すこし手を加えていて、中国だけ直轄市と各省別にわけています。
 まず1番がインドネシアで東南アジア最大の人口を誇り、2億5000万近くが住んでいます。
 2番が日本で、人口が減少しつつあるとはいえ、1億2000万。
 注目すべきはその次です。広州を省都とし、ここ40年で数十万から1000万都市となった深センもある広東省が1億人を超えていて、3番目です。中国の22ある省のうちの一つなのに、日本と肩を並べるほどの人口があるわけです。
 4番目は人口増加が著しいフィリピンで、2015年に1億を超えました。
 そして、5番目には山東省、6番目には河南省と、またしても中国の省がランキング。
 山東省の省都が済南、河南省の省都が鄭州ですが、山東省はビールで有名な青島のある場所とご存じの方もいるかもしれませんが、河南省のほうは、それがどこにあるのか、ふつうの日本人にはイメージできないのではないでしょうか?
 
言ってはいけない中国の真実 橘玲言ってはいけない中国の真実
 次がベトナムで9000万弱。
 そして、8、9、10番目は四川省(8000万)、江蘇省(8000万弱)、河北省(7000万強)と中国の省が続きます。つまり、中国の人口を省でわけると、上位10位の中で、6つが中国の省なのです。

 驚くべきは、27位の重慶市でしょう。中国の直轄市は日本の市域に比べて広く、重慶も北海道くらいの面積がありますが、それでも3000万の人口があります。東南アジアのマレーシアよりも人口が多い。
 ほかの直轄市、上海市が1900万強、北京市が1800万弱、やはりカンボジアの全人口(1400万)よりも大きい(もうひとつの直轄市、天津も1200万でカンボジアよりもすこし少ないくらい)。
 このグラフを見ると、中国はほかの国と比較する場合、ひとつの国としてではなく、いくつかの国がまとまって構成されている「世界」と見たほうがよさそうです。

 満洲からチベット、内モンゴルまで中国の隅々を旅した橘さんは、中国を「ひとが多すぎる国」であることを出発点に、次第に完成しつつある「民主主義なしの『超未来国家』」の姿を明らかにしています。本書は、日本の隣国でありながら、われわれの尺度では計りえぬ巨大国家・中国が今後どうなるのか、それを理解するために必読の書と言えましょう。

満点レシピ――新総高校食物調理科
 勉強は100点が限界だけど、料理は200点だってとれる! 普通科とか工業科とか商業科はよく聞きますが、食物調理科っていったい――。
 著者の須藤靖貴さんは現実にある某県某市の県立高校の食物調理科に何度も通い、実習を観察し、生徒さん・先生を取材し、本書を書き上げました。リアルな食物調理科の高校生達の熱い日々を描いた感動の小説です!!

 新居山総合高校食物調理科。県立の高校なのに3年間の課程をちゃんと修めると調理師の免許が与えられる。日々美味しいものの作り方を習って、作って、食べていれば、高校卒業資格&調理師免許が貰える! 就職だってばっちり! 調理師の金の卵として引く手あまた。

満点レシピ 新総高校食物調理科 須藤靖貴満点レシピ 新総高校食物調理科

 みんな、夢のような高校に入学したはずでした。
 が、しかし、小梅先生の憤怒の声の止む日はありません。人の食べるものを扱うのです。準備、下ごしらえ、調理、盛りつけ、後片付け......。
 一連の流れに万に一つの油断もあってはなりません。手洗いも、器具の消毒も、食材の扱いも、おもてなしの気配りにも、めちゃくちゃ厳しいです。

 中学時代は勝率十割の天才少年剣士だったケイシは竹刀を包丁に持ちかえて、悪戦苦闘の毎日です。ホテルの料理長志望、百貫デブながら手先の器用な隆太、きまじめなクラス委員の伶奈、ぽっちゃり色白の希美、優しい慰め役の遙、4人の班の仲間に支えられて、レシピを工夫し、下ごしらえし、調理し、配膳し、給仕し、片付ける日々。もちろん、英語とか数学とか、普通の授業もこなしています。

 3年も秋になり、いよいよ保護者試食会が近づいてきました。
 ケイシは経験のある料理ではなく、まったく新しい、オリジナルレシピを考えてもてなしたいと張り切るのですが......。

 高校生たちの努力と工夫と友情に、まじ感動します。青春調理小説の傑作です。『3年7組食物調理科』(講談社単行本版)改題。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年05月15日   お知らせ / 今月の1冊
  •    
  •