年明け早々の重版となり、話題となった新潮文庫刊・原田ひ香著『財布は踊る』。
物価高、上がらない賃金など、「自分のお金をどう守るか」「どう増やしていくか」という問題はどんな人でもいまや無関係ではいられない話題となっているかと思います。
けれど、そうはいっても、例えば「クレジットカードの利用明細を毎月確認しない」「どんなサブスクに入っているか忘れている」「電子マネーで何を買ったか覚えていない」等々、家計の実は危ないサインをなんとなく見逃してしまう人は多いのではないでしょうか。
この小説の登場人物たちもまたそうです。
原田さんの巧みなストーリーテリングの中で、彼らは皆お金にまつわる大きな失敗や挫折、どうしようもない苦しみを経験しますが、その最初の躓きは、本当に些細なことからだったのです。
皆真剣に人生を生き、それなりの用心深さや考えがあってお金と向き合う人たちが、けれど様々な困難に直面していき、思いもよらぬ沼へとはまり込んでいく。
そのリアリティには「はっ」とさせられたり、「ゾッ」とさせられたりすること間違いなしです。
そうして登場人物達に共感したり、時には「こんなことしたらダメに決まってるのに」とハラハラさせられたりしながら読み終わると、「ところで今、私の財布の中にいくら入っているかな?」と気になってくることでしょう。
小さくとも大きな「お金の貯まる人生」の一歩を、もっといえば、お金に苦しまない人生のためにはどうすればよいかを考えるきっかけになる、そんな希有な小説体験を是非。
虚空に詩を捧げる/形ないものにひそむ/原初よりの力を信じて(「詩の捧げ物」)。
2024年11月13日、詩人・谷川俊太郎さんが逝去されました。最新文庫『ベージュ』は、谷川さんがさいごに編んだ文庫詩集であり、単行本刊行時に未収録の作品から谷川さんが自ら掲載する詩を選び書き下ろしを加えた作品でもあります。
日本人の想いを代弁し、寄り添い、共にうたい、声を上げつづけた詩人、谷川俊太郎。本作には声優の斉藤壮馬さんの解説が収録されています。
「かつて子供だったあのころ、言葉以前の感覚で確かに感じていたあの世界のきらめきを、ぼくはこの詩たちから間違いなく感じとったのだ。それは誰にも譲れないぼくだけの宝物であり、ぼくだけの詩なのだ」(「解説」より一部抜粋)
生前、斉藤さんの解説をお読みになった谷川さんは「とても面白かったです、ありがとう」という言葉をのこされています。
また、装幀のウサギのモデルは、谷川さんが晩年傍に置かれていたぬいぐるみです。「アバターとかあるでしょ。これ、そういう感じで。こういうものがあるほうがいいんですよ、年寄りは」。そうおっしゃっていた谷川さんについて、尾崎真理子さんは『詩人なんて呼ばれて』(新潮文庫)の中でこう書かれています。「そうか、子ウサギにこころを乗せれば、いつでも、どこまでも、バーチャルな旅に出られる。それが詩人。......凄い」。
谷川さんがこころを乗せた子ウサギは、いま谷川さんの遺した詩集のうえで、谷川さんが「顔は割といいんですよね」と言っていた印象的な黒い瞳で、まっすぐに前を見つめています。
その詩は、いまも私たちのとなりに――。谷川さんが遺したことばのおくりものを、新潮文庫よりお届けいたします。
衣装だんすを抜けた先は、別世界が広がっていた――。あまりに有名な、そしてその後の名だたるファンタジーに影響を与えた「ナルニア国物語」のワンシーン。読んだことはなくても、タイトルとそのシーンだけは知っているという方も多いのではないでしょうか。
「ナルニア国物語」は、「指輪物語」「ゲド戦記」と共に、世界三大ファンタジーの一角を担います。世界47ヵ国以上で翻訳され、売上は1億2千万部超。英国カーネギー賞を受賞し、長い間「児童文学の金字塔」として存在してきました。
たしかに、衣装だんすを抜けた先に現れるナルニア国は、子ども時代に一度は夢をみて想像した世界そのもの。しかし、魔法の国は子どもたちだけのものではありません。かつて子どもだった大人にもまた、その扉をもういちど開ける機会があってもいいはずです。
新潮文庫はそんな想いで、大人が読んでも楽しめる「ナルニア国物語」の新訳刊行を目指しました。全7巻を揃えたくなるかわいらしいカバーに、詳細な地図やところどころに入る挿画も物語を彩ります。また、往年のナルニアファンから新たな読者まで楽しんでいただけるよう1巻『ライオンと魔女』の付録として「ナルニア国物語」ビギナーズガイドをご用意しました。「登場人物紹介」に「ナルニア国年表」、「キーワード紹介」など盛りだくさん。ナルニアへの理解がより深まります。
更に、シリーズ刊行開始を記念し、プレゼント企画を実施中。1巻『ライオンと魔女』から4巻『銀のいすと地底の国』までの4冊をご購入いただき、帯に印刷されている応募マークを切り取ってご応募された方の中から抽選で100名様に、〈「ナルニア国物語」特製ポストカードセット〉をプレゼントいたします。
この機会に、ぜひ新潮文庫版「ナルニア国物語」をお楽しみください!
歳末が近づき、今年も「しゃばけ」シリーズの文庫最新刊が店頭に並ぶ季節となりました。帰省のお供やクリスマスプレゼントとして、毎年楽しみにしてくださっている方も多いのではないでしょうか。
「しゃばけ」シリーズは、病弱な若だんなと妖たちがお江戸の難事件を解決していく物語で、本作『こいごころ』は第21弾となる作品です。累計1000万部突破の超大人気シリーズですが、じつは各巻読み切りの構成となっているため、最新刊から読んでも楽しめます。
本作『こいごころ』では、寝込んでいる若だんなのもとに、2匹の妖狐が訪ねてきます。妖狐から頼みごとをされた若だんなは、名僧の力を借りようと寺に向いますが、そこには化け狸にまつわる思いもかけぬ事件が待っていました。そして、妖狐に隠された秘密とは!? 表題作の「こいごころ」に加え、若だんなの生まれた日を祝おうとしてとんでもない騒動が巻き起こる「せいぞろい」など、優しさと切なさにあふれる5編が収録されています。
「しゃばけ」は、小学生から100歳以上の方まで幅広い世代から愛されているシリーズで、親子や三世代でファンという方もたくさんいます。文庫解説を執筆してくれた俳優の南沢奈央さんも親子でファンだといい、解説では"「しゃばけ」シリーズにまた新たな名作の誕生である"とも書いています。
ちなみに、今回はシリーズ累計1000万部突破を記念して特製の金太郎飴を作りました。しゃばけシリーズでおなじみの妖怪・
鳴家
をモチーフにしており、東京・三ノ輪の老舗である金太郎飴本店とのコラボによって実現した特製飴です。今回は、ここでしか手に入らないこの限定飴を抽選で読者300名にプレゼント。応募締切は来年2025年1月15日(当日消印有効)なので、お見逃しなく。
そして、今回の文庫発売と同時に「しゃばけ」シリーズのアニメ化も発表されました。放送は来年2025年の予定です。読んでから観るか、観てから読むか――話題のシリーズを、この機会にぜひご一読ください!
未だくすぶり続けている自民党裏金問題ですが、この問題が発覚したとき「令和のリクルート事件」と盛んに報道されました。
「元祖」リクルート事件を引き起こしたのは、リクルートの創業者である江副浩正。35年前の1989年、東京地検特捜部に逮捕されました。江副は政財界の重要人物に、未公開となっていた関連会社のリクルートコスモス株をばらまき、公開後に高値で売り抜けさせるという贈収賄事件を引き起こしました。
ところがリクルート社の勢いは止まりませんでした。事件の大打撃を乗り越え1兆8000億円の負債を自力で完済、現在は時価総額17兆円と日本を代表する企業であり続けています。この礎を築いたのが、江副浩正その人なのです。
江副が描いていたのはインターネット社会です。パソコンなどない時代に「情報と人を直接結ぶ」世界が来ることを予見し、「紙のグーグル」を作ろうとしたのです。その一環でファイテルという株取引の会社を買収しました。ファイテルに新入社員として働いていたのが後にアマゾンを創業するジェフ・ベソスです。江副とベソスは同じ会社で、同じ未来を描いていたことになります。
ピーター・ドラッカーを「書中の師」と仰ぎ、「紙のグーグル」を創った男はなぜ日本経済からその存在を消されたか。ダークサイドに墜ちた天才を追う傑作評伝です。