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今月の1冊



 わずか半年の間に60万部が増刷され、本年度の文庫売上ランキングの上位を席巻している小説があります。タイトルは『九月が永遠に続けば』。その作者である沼田まほかるさんの長編小説『アミダサマ』が、このたび新潮文庫より刊行されました。

『九月が永遠に続けば』が第5回ホラーサスペンス大賞を受賞したとき、選考委員はこう評しました。「圧倒された」(桐野夏生)。「文章力で大賞を勝ち取った作品」(唯川恵)。「図抜けた才能を感じた」(綾辻行人)。
 実際に読んだ皆さんからも、沼田さんの文章力や作品の臨場感を讃える声が数多く届けられています。しかしそれ以上に多かったのは「これみよがしでない怖さ」や「リアルで後を引く怖さ」といった実感。

 昨今、さまざまな事件報道で目にする言葉に「心の闇」があります。この決まり文句は言わばジャーナリストにとっての白旗で、「本当のことは当事者以外知りようがない」と読み手を突き放すフレーズです。

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2011年12月10日   今月の1冊